コラム

サクセスフル・エイジングへの道⑤

サクセスフル・エイジング

❺「想い出」が心の中の灯りになる

「老いてこそ」できることがいっぱいあります。想い出も、老いてこそ多く豊かになります。これからもたくさんの「想い出」、たくさんの「楽しい」「懐かしい」を経験していきましょう。

イチョウ葉のいまむかし

 中学1年生の頃、寄宿舎生活をしました。
 樹木の多い学校の一角に古い西洋風の宿舎が2棟あり、中学・高校生が入寮していました。 
 中学1年生と言えば、いたずら盛りで食べ盛り。校内で暮らす生徒たちは放課後、校庭の木に登ったり、いろいろないたずらをしたりしました。
 秋にイチョウの実が地面を埋めるように落ちると、「この実は食べられる」と洗面器いっぱいに拾って寄宿舎の洗濯場に持ち込み、オレンジ色の果肉を洗濯板でこすってこそげ落としましたが、猛烈な悪臭がしました。あげくの果てに舎監に見つかって、ギンナンは捨てさせられました。
 次の朝、起きてみると、顔中が腫は れ上がり、目も開けづらい状態になっています。手もぱんぱんに腫れて痛がゆいのです。
 ギンナンの果肉には、ウルシと似た成分があって、それで皮膚炎を起こしたのでした。その後はギンナンを見るとかゆいような気がするので、あまり食べなくなりました。
 あれから五十余年。イチョウの葉(エキス)が、もの忘れに効くと聞きました。煎じて飲むのかと思ったら、ちゃんと錠剤になっています。飲んでみると、なんとなく調子がいいようです。
 イチョウ葉の認知症予防効果は、米国のフィールドワークでは否定的ですが、ヨーロッパでは認められているそうです。藁(わら)ではなく葉にすがる思いで飲んでいます。

「老いてこそなほ なつかしや 雛(ひな)飾る」

 この句は、及川貞(おいかわてい)さんという女流俳人の雛祭りの句です。
 1899(明治32)年に生まれ、1993(平成5)年に94歳で亡くなられた方です。
 活き活きとした女性らしい俳句の中でも、特にこの句は好評です。
「老いてこそ」という上句が素晴らしいのです。
「老いてこそ」できることがいっぱいあると思います。想い出も、老いてこそ多く豊かになります。
 お雛さまを飾ったり見たりすると、幼かった時や子育ての頃のあれやこれやが沸々(ふつふつ)と思い出されて、「楽しかったな、懐かしいな」と感じますね。
 そういう想いは、私たちの心の中の灯りになると思います。このような灯りをいっぱい持つことによって、毎日がさらに明るくなるよう、たくさんの「楽しい」「懐かしい」を経験して、たくさんの「想い出」をつくっていきましょう。
       * * *
 陰暦名称を諳(そら)んじながら、季節や行事を思い出してみましょう。回想することは認知症予防にもなります。
睦月(むつき) 如月(きさらぎ)
弥生(やよい) 卯月(うづき)
皐月(さつき) 水無月(みなづき)
文月(ふづき、ふみづき) 葉月(はづき)
長月(ながつき) 神無月(かんなづき※)
霜月(しもつき) 師走(しわす)
※出雲地方では「神在月(かみありづき)」

梶川 咸子(かじかわみなこ)
医師、医学博士。
医療法人翠清会介護老人保健施設ひばり施設長。
日本臨床内科学会、日本老年医学会会員。

サクセスフルエイジングへと導く50の答え

 

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