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貧困が心身の機能低下を招く 健康長寿のカギは「フレイル」予防⑨

あなたは「フレイル」という言葉をご存じでしょうか?
体重が減ってきた、疲れて何もやる気が出ない、歩くのが遅くなった……などを感じたら、それはフレイルかもしれません。
介護予防のために知っておきたいフレイルの話、第9回です。

「フレイル」は要介護になる前の虚弱

 健常なときから介護が必要となるまでの中間段階として、人によってその期間に長短の差はありますが、「フレイル」(虚弱)とよばれる状態があります。
 フレイルでは、加齢に伴い食欲が落ちるなどの理由から食べる量が減り体重が減少、低栄養を招きます。低栄養状態では疲れやすく活動量が減り、動かないことで筋力が低下してますます身体機能が衰えていく、このような一連の負の連鎖を「フレイル・サイクル」といいます。ただし、フレイルは身体的な側面だけではなく、精神・心理的フレイル(初期の認知症や老人性うつなど)と、社会的フレイル(社会的つながりの減少に基づく孤立や貧困)もあります。今月は社会的フレイルの、特に「貧困」についてお話しします。

貧困が招くフレイル

 近年、シニアの貧困や住居問題の深刻化が問題視されていますが、これも社会的フレイルのひとつです。
 シニア世代では、一般社会全体に比べると収入が少ない人の割合が高くなります。医療費の支払いができないために治療可能な病気を放置したり、病気が末期になってからようやく治療を始めたりするケースも少なくありません。このような場合、身体的フレイルも関連して起こってくると考えられます。
 浜松医科大学や日本福祉大学などの研究グループは、65歳以上で要介護認定を受けていないおよそ7万9000人について、所得と栄養状態の関係を調査しました。
 1人当たりの所得を「103万円未満」から「318万円以上」まで5つのグループに分けて、食生活の状況を比較した結果、「肉や魚を食べる頻度が平均1日1回未満」という男性は、所得が318万円以上では56・5%でしたが、103万円未満では68・6%でした。女性も所得が低いほど食べる頻度が低くなっていることがわかりました。この調査結果からも、所得の低いシニアほど低栄養に陥っている危険性があることが考えられます。

生活保護の半数がシニア世帯

 厚生労働省が昨年発表したデータによれば、生活保護を受給する世帯のうち50・8%が65歳以上のシニアを中心とする世帯で、過去最多の82万6656世帯でした。そのうち約9割が単身世帯です。
 高齢化が進む中、頼りの年金受給額が低かったり、シニアの就労が難しく、たとえ働いても十分な収入を得られなかったりと、困窮する人は少なくありません。
 評論家の樋口恵子さんは、年金で暮らせず70代になっても働かざるを得なかったり、生活保護を受けたりする女性たちを「貧乏ばあさん(BB)」と名付け、「おひとりさま高齢女性」が困窮状態に陥る可能性を、10年ほど前から警告しています。
「女性の場合、そもそも就労できなかったり、働いても男女の賃金格差が激しく賃金が少なかったり、子育てや介護で仕事の中断を余儀なくされたことも多い。そのため年金が足りず悲惨な老後をおくるBBが大量発生するのです」と言います。
 シニアの貧困問題を解消するためには、年金や福祉制度だけを改善すれば十分というわけではなく、さまざまな分野にまたがる政策を考えていくことが必要です。

老後は、思わぬ出費はあっても予定外の収入はない

 私たちは、定年後の人生がどれほど長く、どれくらいのお金が必要になるのかをしっかりと把握しておかなければなりません。年金だけで暮らしていけるという考えは過去の産物で、今後は長生きすることが、人生最大のリスクになります。
 日本は世界でも有数の格差大国で、とりわけシニアの間で所得格差が開く一方といわれています。
 経済のグローバル化により儲ける人はさらに儲け、貧困層はさらなる貧困のスパイラルに陥るということになります。
 また経済が右肩上がりだった時代とは違い、子どもたちも非正規雇用が増えた今は、生活に余裕がありません。長生きする親と、不安定な生活の子どもたち、さらに老老介護となれば、親子共倒れする恐れもあります。
 政府には、資産形成が困難な若・中年層の非正規労働者に対して、雇用の安定や処遇の改善に向けて省庁間の管轄を超えた横断的な取り組みや対策が求められます。
 個人の責任や努力だけでは対応できない困窮に対して必要な公的扶助を行い、最低限度の生活を保障し、自立を助けようとするのが社会保障制度で、私たちの生活を守るセーフティネットです。
 しかし社会保障給付費のうち、高齢者関係給付費は2011年度で72兆1940億円となり、社会保障給付費に占める割合は67・2%に達しました。国の財政赤字削減が急務な中、社会保障関連費が膨らむ状況が続いています。
 今後はますます、人生の就労期に実物資産や金融資産などのストックを適正に積み上げ、引退後はそれらの資産を活用して最後まで安心して生活できる人生の経済設計が求められます。

知っておきたい高齢者のフレイル

 

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