気楽な一人住まいの落とし穴 介護が必要になっても自覚できないことがある

暮らし

年々、独居のシニアが増えています。
自立した方の一人住まいは良いのですが、認知症や筋力の低下などで介護が必要にもかかわらず一人暮らしにこだわる方の対応は、一体どうすれば良いのでしょうか。

夫がなくなってから認知症が進んだ85歳女性

「長年住み慣れた自宅で生活し続けたい」これは誰しもが思っていることでしょう。
特に独居で誰にも気兼ねなく、ある意味、気楽に暮らす生活に慣れてしまった方は、なおさらそのお気持ちが強いようです。
そのような方は、筋力が低下してADL(日常生活動作)に支障があっても、認知症が進行して時間や曜日がわからなくなっても、大きな不便や不安を感じることが少ないようです。
しかし、特に寒いこの時期、ストーブやガスの火の始末などで周囲がハラハラとするようなことがあっても、本人は全く気にしていない、という話をよく耳にします。
在宅生活を続けたいご本人の気持ちと、普段の生活の様子を知ることができないご家族(特に別居のお子さま方)の意向には、時として大きなズレが生じてしまうことがあるようです。
今月は、5年前にご主人を亡くされ、一人暮らしになってから認知症の症状が進んできた85歳の女性のお話をしたいと思います。

石油ストーブ近くで洗濯物を干しハラハラ

人ごとではない認知症 この女性、足腰が少し弱り、脊椎が湾曲する円背(えんばい)も進み、長い距離を歩くことはできませんが、近所の整形外科まで一人で通院できる程度に体はお元気です。ただし認知症があり、5分前のことも覚えていられません。見かねた近くに住むお子さまたちは、自分たちの家に呼んで一緒に暮らそうとしますが、なかなか同居してくれません。1週間も経たないうちに「自分の家に帰りたい、一人でも生活できる」と訴え始めるのです。
認知症は、「自分は認知症」という「病識」がない方がほとんどですから、いくら説明してもわかってもらえません。
仕方なく自宅に戻ってもらい、可能な限りデイサービスやヘルパーさんが来てくれる訪問介護の回数を増やして対応していますが、石油ストーブの近くで洗濯物を干していたり、電気器具もつけっぱなしになっていたりと、毎日様子を見に来るお子さまたちはハラハラドキドキすることがよくあります。注意しても反発されてばかりで、心配は大きくなるばかりです。

人ごとではない認知症65歳以上の5人に1人

家族に伝える お子さま達だけではなく、ケアマネジャーや私たち介護サービスの提供をしている者も、一人暮らしの限界はすでに超えていると感じています。それでもご本人は、お子さま達と一緒に住むのもイヤ、施設に入所するのもイヤ、このまま一人暮らしを続けたい、と思っていらっしゃいます。しかし今のままではハラハラドキドキどころか、実際に周りに迷惑を掛けてしまう取り返しのつかない大きな事故につながりかねません。
ガスの調理器具をIHタイプに変えるなど、可能な限りの安全優先環境にはしていますが、ハード面の整備だけでは限界があります。
お子さま達は、ご本人の生活状況に合わせてサービス付き高齢者向け住宅などへの入居をお考えのようですが、こんな時、どのようにご本
人に接し納得してもらえば良いのか、関係者全員で頭を悩ませています。
こういった場合、主治医から説得してもらうと本人は納得しやすい、とよく聞きますが、この方の場合、5分前のことも覚えていられない状態ですから、それも難しいでしょう。
認知症の人は、2025年には700万人を超えるといわれています。これは65歳以上の5人に1人の割合で、決して人ごとではありません。「自分だけは大丈夫」と思わず、認知機能がしっかりとしているうちに自分の将来についてきちんと考え、家族にも伝えておきたいものです。

斉藤豊男さん斎藤 豊男(さいとうとよお)
株式会社けんこうぷらん 代表取締役
福祉用具専門相談員 
福祉住環境コーディネーター

 

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