健康・お金・生活

ご利用者の気持ちや 立場を想うことが出発点

私たち事業者は多くの事例に触れて経験が増えてくると、つい自分のストーリーで動いてしまいがちです。
しかし、ほとんどのご利用者は初めて経験する事態に不安を抱えています。
私たち事業者は、そんなご利用者の気持ちを忘れないようにしたいものです。

負担や不安を軽減するのが仕事

在宅での自立支援をサポートしている私たちのようなサービス事業者は、ご本人の生活はもちろん介護するご家族の不安や負担を少しでも軽減し、安心して生活できるよう支援させていただくのが仕事です。
 介護保険を初めて使うという方は、介護保険制度のことやサービスの内容、かかる費用などの知識がほとんどない方が多いため、介護保険を使うにはどんな手続きが必要で、どんな人や業者が関わってくるのかを知りません。「介護が必要になったときは介護保険を上手に使おう」と考える方もいれば、ご家族の中には「自分で全部やるのが当たり前」と考えている方もいます。ご本人の介護度や介護する方の健康状態、夫婦関係や親子関係、価値観から住環境など人それぞれですから、しっかりヒアリングをして何が問題か、どうなさりたいのかを見極めた上でサービスの提案をしないと、トラブルになってしまうこともあります。
 例えば、突然ご主人が脳梗塞を発症し緊急入院されたようなケースの場合、何ヵ月かして退院が近づくと、奥様は自宅に戻って生活できるのかと不安で一杯になったりします。そんなときに手の差し伸べ方を間違えると、その後の話がスムーズに進まなくなってしまうこともあります。今回は、私自身も気を付けなければいけないと感じた事例がありましたので、お話ししたいと思います。

多くの人は初めて経験する事態

老夫婦と長男夫婦の4人家族。5ヵ月前に88歳のご主人が脳梗塞で倒れ緊急入院。命に別状はなかったのですが、半身マヒが後遺症として残りました。リハビリを開始したころに病院の勧めで介護保険の申請をし、要介護2の認定を受けました。ケアマネジャーを紹介してもらっており、奥様は退院前から色々と相談したかったようなのですが、このケアマネジャーは退院まで1ヵ月以上もあると思い、すぐには挨拶に行かなかったらしいのです。ここからボタンのかけ違いが始まりました。奥様は大変お元気なのですが80歳を超えていましたので、ケアマネジャーは同居している長男夫婦と相談しながら退院に向けた話をしていました。これはごく当たり前の対応だったと思いますが、実は長男夫婦との折り合いが以前から悪かったらしい奥様は、「何で関係のない長男と話をするんだ!」と怒り出してしまいました。ご主人は体の動きが悪くなり、今までできていたことができなくなり、認知症の症状も出始めて、大きな不安にかられていたようです。ケアマネジャーが決まってすぐの時に相談に乗ってもらいたかったのですね。「大事な時にすぐに来てもらえなかった」という思いもあり、怒りをぶつけてしまったのでした。
 ケアマネジャーも私たちもたくさんの事例に触れて経験が増えてくると、つい自分でストーリーを決めて動いてしまいがちになります。しかし、ほとんどの方は初めて経験する事態なわけですから、どうやって家へ帰ればいいのかさえもわかりません。家に帰って寝起きや食事、トイレやお風呂などの当たり前の生活が想像できないでおられるのです。そんなご利用者の気持ちや立場を思いやり、寄り添う気持ちが私たち事業者の出発点なんだと、改めて思い知らされた事例でした。

斎藤豊男斎藤豊男(さいとうとよお)
HARS(ハーズ)にいがた株式会社
福祉用具専門相談員 福祉住環境コーディネーター

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