シニアライフ・コンシェルジュが案内する都内の名処

旅・生き方

CHAPTER25 没後100年の年に想いを馳せたい文京区立森鷗外記念館

東京に観光名所は数あれどあまり知られていない穴場スポットは数多く存在します。
そんな「」を、隔月でシニアライフ・コンシェルジュ藤野政史がご案内します。
今月は、千代田線「千駄木駅」より徒歩5分、JR山手線「日暮里駅」より徒歩15分の場所にある「文京区立森鷗外記念館」に出掛けてみましょう。

30年暮らしたゆかりの地で

優秀な軍医でありながら、『舞姫』をはじめとする数々の小説を世に送り出した森鷗外は、30歳で文京区千駄木に居を構え、1922年に60歳で亡くなるまで、30年にわたって家族とともに暮らしました。鷗外によって「観かん潮ちょうろう楼」と名付けられたその建物は現存しませんが、跡地は1962年に「文京区立鷗外記念本郷図書館」となり、2012年には「文京区立森鷗外記念館」として生まれ変わりました。モダンで目を引くその建物を設計した建築家の陶器二三雄(とうきふみお)は「建物を印象づける外壁は、若き鷗外が学んだドイツの歴史的街並を彷彿とさせるような、また現代性を感じさせる表現を目指した」と述べています。原稿や書簡、遺品など、約2万点の貴重な資料が所蔵された記念館の中を、館長の高橋さんに案内していただきました。
「森鷗外が亡くなり、今年でちょうど没後100年を迎えます。鷗外は教科書に出てくる昔の人のように思われるかもしれませんが、それほど昔の方ではありません。実際、ここ千駄木の地には、「森先生」と親しみを込めて呼ぶご近所の方がたくさんいらっしゃいます。偉大な方ではありますが、その足跡を辿るとそれほど距離の遠い方ではないということがよくわかるのではないでしょうか。鷗外は「天才」とひと言で片づけられがちですが、生涯努力を惜しまない人でした。来館者の皆さんには、勉学はもちろん、人との交流も大切にした鷗外の人間味あふれる一面にぜひ触れていただければと思います。当時の建物は火災や戦災によって残念ながら失くなってしまいましたが、鷗外が生前記念撮影をしていた庭石「三人冗語の石」やイチョウの木は当時のまま残っています。この地に来ていただければ、同じ息吹を感じられるのではないでしょうか」

鷗外が生前住んでいた観潮楼の復元模型。鷗外の子どもたちから聞き取りを行い、製作された。敷地面積は約320坪ほど。

夏目漱石、石川啄木、樋口一葉、北原白秋、芥川龍之介、与謝野晶子など、錚々たる文学者たちから慕われていた鷗外。館内には、彼らから送られた葉書のデジタル展示も。

7月9日は鷗外忌。鷗外が亡くなったあと、鷗外を偲んで書かれた「哀悼寄書」。

趣向を凝らした展示の数々

 地下1階、地上2階から成る記念館は、図書室と講座室がある2階、ミュージアムショップとカフェのある1階、2つの展示室がある地下1階の3フロアで構成されています。展示室は写真と資料で鷗外の生涯を辿る常設展と、年に2回ずつの特別展とコレクション展が開催されるスペースに分かれていて、毎回趣向を凝らした展示が行われています(7月末まで没後100年を記念した特別展「読み継がれる鷗外」が開催中)。
小説家、戯曲家、翻訳家とさまざまな顔を持つ鷗外は、あらゆることに先見の明がある人でした。主宰するサロンには後世に名を残す多くの文人が集い、女性の自立にも力を注いでいたといいます。また、若き日のドイツ留学の経験から、子や孫たちには世界に通用する名前を、とドイツ風の名を付けたというエピソードも残されています。35年勤めた陸軍省を去った後は、帝室博物館(現在の東京国立博物館)の2代目総長として、上野公園や動物園の管理まで任されていました。ここを訪れ、多才な功績に触れると、彼の残した小説の読み方がまた変わってくるかもしれません。

記念品のジョッキ

ドイツ留学中、ザクセン軍の軍医監ヴィルヘルム・ロートによって鷗外の誕生日会が開かれた。鷗外は、その際に贈られたビールジョッキを終生大事にし、帰国後も書斎に飾っていたという。

鷗外の胸像

鷗外の生前、観潮楼の庭に設置されていた胸像。現在は地下1階の導入展示室で来館者を迎える。親交のあった彫刻家・武石弘三郎によって作られた。

モリキネカフェ

館内1階に設けられた喫茶室。「沙羅の木」や「三人冗語の石」など、鷗外ゆかりの庭園を眺めながらお茶を楽しむことができる。

文京区立森鷗外記念館

■所在地/東京都文京区千駄木1-23-4
■最寄駅/千代田線「千駄木駅」より徒歩5分、JR山手線「日暮里駅」より徒歩15分
■開館時間/午前10時~午後6時(最終入館は午後5時半まで)
■休館日/毎月第4火曜日(祝日の場合は開館し翌日休館)その他例外あり、年末年始(12月29日~1月3日)、および展示替期間、燻蒸期間等
■観覧料/通常展は一般300円、20名以上の団体は240円、中学生以下無料
※特別展は展示により料金が異なり、20名以上の団体は一般観覧料の2割引
※身体障害者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と、その介護の方(1名)は無料です。

藤野 政史さん藤野政史(ふじのまさふみ)
グローバルライフ株式会社 代表取締役
シニアライフ・コンシェルジュ
シニア世代の皆さまが楽しく、笑顔で、遊び、学ぶ、集う会
「グローバルライフクラブ」を運営。
 

 

関連記事

TOP