住み慣れた家で安心して暮らす 介護保険を使った 住宅リフォーム

暮らし

60歳以上の約半数の人が現在の家に住み続けたい

内閣府が、60歳以上の男女3000人に行った調査では、「身体が虚弱化した時に住みたい住宅」として、約56%の人が「現在の住居」と回答しました(※1)。ただし、その内の約半数は「住みやすくするための住宅改修が必要」と答え、また金銭的な理由などで「改修しない」という回答もみられました。
自身や同居する家族に介護が必要になった際、「手すりを付けたい」「段差を解消したい」といったリフォームを考える人は多いでしょう。それでも、「何から手を付ければ良いかわからない」「金額は?」「どこに頼めば良いの?」といった不安があるはずです。
そこで今回は、「介護保険制度」を利用した住宅改修の基本についてわかりやすく解説します。専門家による失敗しないための知恵や、リフォーム事例も紹介します。いまのうちから考えてみませんか?

まずは知っておきたい
「高齢者住宅改修費用助成制度」

国や自治体の補助金を活用すれば、少ない負担で介護に適した住宅改修が可能です。制度を上手く利用するために、仕組みや利用条件を知ることから始めましょう。

自己負担1割から住宅改修

介護の予防や負担の軽減、自立した生活支援を目的に、国が住宅設備の改修費を補助する制度が、「高齢者住宅改修費用助成制度」です。介護保険制度による支援のため、補助を受けるには、対象者が要介護(要支援)認定を受けている必要があります。
最大20万円までの工事費に適用され、所得に応じてそのうちの7〜9割が補助される制度です。限度基準額が一人につき20万円までと定められているため、助成額は最大で18万円までとなります。つまり、2万円からの自己負担のみで住宅改修が行えるのです。
一方、どんな住宅でも改修できるわけではありません。①被保険者が現在住んでいる住居であること、②住居と被保険者の住所が一致していること、が条件です。さらに、すべてのリフォームが該当するわけではなく、対象となる主な住宅改修は以下の6例です。
手すりの設置
移動の補助や転倒防止を目的に、廊下・階段・トイレ・浴室などに設置。
段差の解消
歩行や車いすでの移動がしやすいように、床をバリアフリー化。
床や通路面の材料の変更
滑り防止や移動の円滑化を目的に、床材を滑りにくい素材へ変更。
引き戸などへの扉の取り換え
最小限の力で開閉できる引き戸や、アコーディオンカーテンに変更。
洋式便器などへの取り換え
足腰に負担がかからない洋式便器への変更や、スペースの拡張など。

助成を受けるまでの流れ

まずは、要介護(要支援)認定を受けていない人は、住んでいる市区町村の窓口で介護認定の申請を行います。それから、ケアマネジャーなどにリフォームの内容について相談をし、工事業者を決めます。詳しい流れは表を参照してください。それでも、限られた支給額でどこをリフォームすれば良いか迷う人も多いでしょう。まずは要介護(要支援)者の体の状態と生活スタイルに合わせ、優先順位を付けていく必要があるかもしれません。

「福祉住環境コーディネーター」に聞く
失敗しない「介護リフォーム」のコツとは?

体にも心にもやさしい、介護仕様の住居にするためのポイントを、専門家に伺いました。

「転ばぬ先の杖」として

介護を必要とする人にとって暮らしやすい家であり、介護する人にとっても介護しやすい家にするための住宅改修が、「介護リフォーム」です。「住み慣れた家=暮らしやすい家」ではないと、斎藤さんは注意を呼びかけます。
「シニア世代の方たちにとっての住み慣れた家とは、築30~40年以上経過している家が多いと予想します。バリアフリー化されていない昔ながらの日本家屋には、転倒や転落の危険がある場所がたくさんあります。たとえいまは問題なくても、「転ばぬ先の杖」として、早め早めの対策をお勧めします」

失敗しないために

まずは、介護を必要とする人のADL(日常生活動作)と進行性の病気の有無。そして本人と家族の希望に合わせて施行を行うのが大事だと、斎藤さんは言います。
「手すりにしても、スロープにしても、高さ設定や付け方に基本があります。知り合いの大工さんなどに任せる方もいますが、専門的な知識や実績を持つ施工業者に相談すべきです。役所の窓口やケアマネジャーに相談すれば、紹介してもらえるはずです」
住宅改修により、本人の活動範囲が広がった事例もあるそうです。
「新潟に住む要支援2の90代女性の自宅前には10数段におよぶ段差があり、この方の活動意欲を妨(さまた)げていました。介護保険を利用して段差をバリアフリー化し、手すりも付けることで、女性は買い物や通院など自力でできるようになりました。大切なのは、ケアマネジャーや信頼できる施工業者に相談し、専門家の意見を取り入れることです。自治体によっては、高齢者向け住宅リフォーム助成障がい者向け住宅リフォーム助成など、介護保険と併用できる制度もあります。いずれにしても、必要書類が多く、手続きも複雑なので、専門家の助けは必要不可欠と言えるでしょう」

斎藤 豊男(さいとうとよお)
株式会社けんこうぷらん代表取締役
福祉用具専門相談員
福祉住環境コーディネーター

 

関連記事

TOP