ボケないために、いまできる方法②高齢者ほど、肉を食べたほうがよい

健康と美容

認知症予防のカギは食事と生活のなかにあった

「健康のため」と肉を控えるのは逆効果

糖質制限を始めてよかったことが、もう一つあります。大好きなステーキをなんの心配もなく食べられるようになったことです。
肉のエネルギー量は多く、カロリーの値で食事を考えてしまうと、ステーキは不安の大きな料理になります。しかし、高齢者ほど肉を食べたほうがよいのです。
私の講演に、ときどき100歳を超えてなお元気な百寿者の方々が来てくださることがあります。そんなときには、どのような食生活を送っているのか、私のほうから取材させていただきます。するとみなさん、「肉が好き。よく食べる」と答えるのです。
1963年には全国で153人だった百寿者の数が、現在では7万人を超えています。
この急増の背景に、タンパク質の摂取量の増加があることは、たしかです。「肉は健康に悪い」と考えている人たちがいます。しかし、健康長寿に肉が必要であることは、1972年の疫学調査ですでに確認されています。
 当時の日本の百寿者は405人でした。東京都老人総合研究所が、そのうちの100人の食生活を調べたところ、全員が肉や卵、魚、乳製品などの動物性食品を、高齢者の食べている平均以上に食べていました。反対に、菜食主義者は一人もいませんでした。肉を食べなければ健康長寿を実現できないことは、50年前からわかっている事実です。
ですから、「健康のため」と肉を控えることは、逆効果なのです。

70歳以上の5人に1人がタンパク質不足

 2020年、日本は「新型コロナウイルス」で大変な騒ぎになりました。ですが、その一方で、もう一つの「新型」の病が深刻化していることをご存じでしょうか。それを「新型栄養失調」といいます。
新型栄養失調の正式名は、「タンパク質エネルギー栄養障害」。食べものがあふれている日本社会にあって、栄養失調と聞いてもピンとこない人が多いと思います。けれども、70歳以上の5人に1人がなっているという報告もあるのです。
新型栄養失調は、タンパク質というたった一つの栄養素が不足するだけで起こります。では、親が新型栄養失調になっていないかどうかは、どうすると確認できるでしょうか。血液検査の結果を見てください。そこに、「血清アルブミン」という項目があるでしょう。血清中にはいくつかのタンパク質が含まれますが、そのなかで、もっとも含有量が多く、約6割を占めるのが血清アルブミンです。
このタンパク質は、食事によるタンパク質の摂取量に敏感に反応します。そのため、タンパク質の栄養状態を表す基準とされています。
新型栄養失調とは、血清アルブミン3.5g/㎗以下の場合に診断されます。3.4g/㎗を下回ると、1年後になんと約半数の人が亡くなるとされています。しかも、血清アルブミン値が減ると、認知症や寝たきりになりやすくもなるのです。
これに対して、4.2g/㎗以上ならば、1年後に亡くなる人はいないともされます。
 ではなぜ、70歳以上の高齢世代に新型栄養失調が多いのでしょうか。「健康には粗食がよい」「昔ながらの和食がよい」「肉や卵は健康に悪い」と信じ、肉を控えてしまう人が多いからです。しかし、健康長寿を願うならばなおのこと、肉や卵が必要です。ただし、それに加えて糖質も大量にとってしまうと、エネルギー過多で肥満になります。肥満は認知症のリスクファクターの一つです。ですから、肉や卵を安心して親に食べてもらうためにも、糖質を控えることが必要なのです。

藤田紘一郎(ふじた こういちろう)
1939年、旧満州に生まれる。東京大学医学系大学院修了。医学博士。東京医科歯科大学名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。1983年、日本寄生虫学会小泉賞を受賞。2000年、日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉賞を受賞。2021年5月逝去。

『親をボケさせないために、今できる方法』(扶桑社)より一部ご紹介  ※次回は6月号に掲載予定です。
 

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