輝く人139 近藤サトさん

インタビュー

多様性を柔軟に受け入れて、時代に即した表現者であり続けたい
グレイヘアが印象的なフリーアナウンサーでナレーターの近藤サトさん。
原点ともいうべき子ども時代を振り返りながら、多様化した現代の生き方についても伺いました。

本の中に出てくる東京に憧れて上京

どんなお子さまでしたか?

どちらかといえばインドア派。運動オンチなので、友達と外で走り回って遊ぶより、家の中で本を読んでいることのほうが好きな子どもでした。そもそも本を読む環境にも恵まれていましたね。家の目の前が図書館だったので、小学生のころは毎日通い、シリーズ化されている伝記などを端から端まで読みました。また、読書好きな父の影響で、家にも本がたくさんあったんです。本棚に並んでいた日本と海外の名作全集もほぼ読破しましたね。当時は、インターネットなんてありませんし、テレビ番組のチャンネルも少なかったじゃないですか。そんな中で、本は私にとっての大切な情報源で、憧れの世界そのもの。とくに、物語の描写によく登場する東京の景色や話題のお店にすごく惹かれたのを覚えています。よく読んでいたのは、三島由紀夫や谷崎潤一郎、夏目漱石などの作品。そこに出てくる東京と1980年代の東京を重ね合わせて、「銀座ってどんなところなんだろう?」と想像を膨らませていました。そうした東京へのあこがれは中学、高校と進んでも変わらず、むしろ強くなる一方。いま思えば、東京の大学に進んだのは「東京に行きたい!」という夢を叶える手段だったような気がします。

アナウンサーを目指したきっかけは?

 大学時代は、放送学科でメディアについて勉強をしながら、テレビ局でアルバイトをしていました。そこで、実際の現場を見ていろいろと知っていくなかで、テレビと関わる仕事をしたいと思うようになりました。そこで興味を持ったのがアナウンサー。テレビの中の憧れの存在でもありましたし、ずっと自己表現できる場所を模索してきた私にとって最適な職業だと考えたからです。そうはいっても、就活の一番の優先事項は「東京で働くこと」でしたからね。運よく、フジテレビのアナウンサー採用が決まってよかったのですが、もし東京の局での選考に落ちていたら、アナウンサーを諦めてTVにまつわる別の仕事をしていたと思います。

これまでのアナウンサー人生で印象に残っていることは?

あざなえる縄のごとしで、いいこと悪いことたくさんありましたから、このときのこんな出来事、という風にどれか一つを取り上げるのは難しいですね。ただ、どんな仕事にしろ、自分が表現したことに対して他人からいい評価をいただき、自分なりにもよくできたと納得したときに生きがいを感じています。この年になっても、自分はまだまだと思うことばかりなので、たまに満足できるとすごくうれしいですね。

インターネットを活用してより豊かに

今後やってみたいお仕事はありますか?

 近年、インターネットの発達で表現の場が多様化していて、映像もテレビだけではなくなってきていますよね。だからこそ、それを柔軟に受け入れて、時代に即した表現者であり続けたいと思っています。最近YouTubeを始めたのも、表現者としての幅を広げるための選択肢の一つ。一緒にやっているメンバーの平均年齢はかなり高いですが、皆、テレビの世界で映像のノウハウを培ってきた精鋭ばかりです。YouTubeでは何が求められているのか試行錯誤の毎日ですが、見る人に楽しんでもらえるよう一生懸命考えて、それを形にしていくのはすごく楽しいですね。表現のツールは変わっても、制作に全力を注ぐ、そのマインドは今も昔も変わらないなと感じています。

お仕事以外でやってみたいことはありますか?

やってみたいというよりは、やらないといけないと思っているのが健康管理。よく、何歳か年上の先輩方から「後戻りできなくなる前に考えた方がいい」といわれるんですよ。それは、体型のことも病気のことも含めて、いろいろな意味でアドバイスしてくださっていると思うので、肝に銘じて、「糖質を控えて食生活を整えること」「怠けず頑張ってジムに通うこと」の2つを、私の生活目標にしています。

読者に向けてメッセージをお願いします。

先日、90歳の方に会ってお話をする機会があったんですが、「友達はみんな亡くなっていて誰もいないわよ」とおっしゃっていたのが印象的でした。年をとると、身近な人がだんだんいなくなっていき、やがて孤立してしまう人が多いのでしょうか。でも、長生きできることはすばらしいことなので、存分に謳歌してほしい。そのためには、自分でステージを切り開いていくこと、とくに、兄弟や子ども、孫といった身内ではない誰かと関わることも大切じゃないかと思っています。幸いなことに、いまの時代は人との出会いの場も多様化しています。たとえば、インターネット上にもさまざまなコミュニティサイトがあって、外に出て行かなくてもいろいろな人たちと知り合うことができるんです。SNSを使って、自分の得意なこと好きなことなどを自由に発信してみてください。すると、同じ嗜好(しこう)の人たちが反応してくれて、そこにコミュニケーションの機会が生まれますよ。ネット上では性別、年齢、価値観の違ういろいろな人と関わることができるので、すごくいい刺激になります。年を重ねれば見た目や体は衰えていきますが、気持ちまで老いてしまう人はいないと思います。だから自分の思いに素直になって、やりたいこと、楽しいことにどんどんチャレンジしてほしいと思います。

近藤サト(こんどうさと)
1968年岐阜県生まれ。91年、フジテレビにアナウンサーとして入社。8年間の勤務を経て退社し、フリーに。テレビ番組のコメンテーターをはじめ、ナレーション、朗読など幅広く活躍。日本大学芸術学部特任教授も務める。著書『グレイヘアと生きる』(SBクリエイティブ)が発売中

 

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