輝く人138 林家たい平さん

インタビュー

落語は、聞き手の心の中に絵を描いて人を幸せな気持ちにさせるもの
『笑点』大喜利のレギュラーメンバーとして、お茶の間で大人気の落語家・林家たい平師匠。
落語家を目指したきっかけからプライベートまで、師匠の素顔に迫ります。

ラジオで聞いた落語に大きな衝撃

子どものころから落語家になりたいと思っていたのですか?

いいえ。もともとは学校の先生になりたかったんですよ。でも、主要5教科があまり得意ではなくてね。代わりに、人より少し絵が上手だといわれていたので、その特技を生かして美術の先生になろうと美大に入学しました。そこでサークル見学をしていたときに、たまたま立ち寄ったのが廃部寸前の落語研究会。それまで落語なんて一度も見たことはなかったし、まったく興味もありませんでした。でも、そこにいた先輩方がとても楽しくていい人たちだったので、一緒にサークルを守り、盛り上げていきたいって思って入部しちゃったんです。

美術の先生から落語家へ、進路を変えたきっかけは?

大学3年生のある夜、必死に学科の課題に取り組んでいたとき、ラジオから5代目柳家小さん師匠の落語が聞こえてきたんです。それがすごく面白くてね。思わず聞き入っていると、自然と笑顔がこぼれ心が穏やかになっていく自分にハッと気付かされました。まさに雷に打たれたような衝撃でしたね。当時の僕は、ある教授の教えに従って「デザインで人を幸せにする」ことを志していましたが、このとき「落語もまた、人を幸せにできる」と確信しました。落語は、聞き手の心の中に絵を描いて人を幸せな気持ちにさせるもの。それは、デザインが人の心に作用するのと同じことだと思ったんです。だからこそ、一人でも多くの人に落語のすばらしさを知ってほしい。そのためには、僕自身が落語家になって、それを伝えていくことが一番の近道だと考えるようになりました。そこから、いわゆる落語家に向けての就活がスタート。師匠・林家こん平のもとに弟子入りするに至ったわけです。

落語家になって一番つらかったことはなんですか?

入門から約6年半の下積み時代は苦しかったかな。24時間365日休みがなくて、友達にもまったく会えない。掃除や洗濯、おつかいなどの下働きの毎日で、肉体的にヘトヘトでした。しかも、デザイン事務所や広告代理店などに就職した美大の仲間が責任ある仕事を任されるようになっていく姿を見ていると、「僕はこのままでいいのか?」と気持ちばかりが焦って、精神的にもキツい日々だったと思います。

一人でできることを見つけて楽しみたい

健康のために取り組んでいることはありますか?

 5年前、TV番組の企画でマラソンに挑戦したのをきっかけに、走ることを習慣にしています。僕、ジムは苦手なんですよ。やっぱり、体を動かすなら外がいい。風に当たり、空気のにおいや季節を感じながら走るのは本当に楽しいですね。すれ違いざまに、知らない人と「こんにちは」とあいさつを交わす、そんな些細なことも新鮮で心地いいんです。走るのは一人でできるので気楽だし、その日の体調によって距離やペースを変えていけば、これからも無理なく続けられるんじゃないかと思っています。一方、食事面ではとにかく食べ過ぎを防ぐための「腹五分目」を心掛けていますね。腹五分目は少ないと思うかもしれませんが、続けているとそれが腹八分目くらいの感覚になります。だから、仕事先などでお弁当が出たときは、先にお弟子さんたちに好きなものを取ってもらって、半分くらいを食べるようにしています。

趣味など、夢中になっていることはありますか?

メダカを育てることですね。最初は、道の駅で買ってきたメダカ6匹を小さなメダカ鉢で育てていたんですが、その子たちが子どもを産んで、どんどん数が増えてきたので、45㎝水槽や60㎝水槽も買い足しました。彼らにエサをやりながら水槽を眺めるのが日課で、たまに卵が産まれているのを見つけるとうれしくなります。いまは40匹くらいいるので、一人暮らしでさみしそうにしているスタッフさんなどにおすそ分けしているんですよ。

読者に向けてメッセージをお願いします。

第2の人生を豊かにするには、自分らしく、自分のペースで生活することが一番じゃないかと思います。いまの世の中、サークルのようなものに参加をしたり、地域のボランティア活動を行ったりして、積極的に社会と関わっていくのがいいという風潮がありますよね。でも、人には得手不得手があるので、そうあるべきと思って無理をしている人もたくさんいるのではないでしょうか。実際、僕はみんなで一緒に何かをすることが苦手で、そういう集まりには極力行きたくないと思ってしまうタイプです。だから、一人でできることをいろいろやっていますが、それでも十分に社会とつながっていけることを実感していますよ。身近なことでいえば、庭でジュンベリーという木の実を育てているだけでも、出会いはある。「これって何の実ですか?」「どうやって食べるんですか?」といった些細な会話から、少しずつ顔見知りも増えていくものです。だから、皆さんも頑張りすぎず、自分ができることを見つけて人生を楽しんでください。

林家たい平(はやしやたいへい)
1964年12月生まれ。埼玉県出身。1988年林家こん平に入門し、1992年二ツ目に昇進。その後、新人演芸コンクール優秀賞をはじめとする数々の賞を受賞し、2000年に真打へと昇進。2006年、日本テレビの人気番組『笑点』の大喜利メンバーとなって以降、バラエティやドラマ、CMなどにも数多く出演するようになり、落語家以外にも活躍の場を広げていく。2010年には武蔵野美術大学芸術文化学科客員教授に就任。2014年より、落語協会の理事も務めている。

 

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