12カ月で身につける健康リテラシー②人の「寿命」はどのくらいですか?

健康と美容

「健康リテラシー」は人生100年時代をより良く生き抜くためには欠かせないスキルです。
知っているようで知らない病気や医療の疑問に、3人の先生が月替わりで易しく回答してくれます。

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森惟明先生

人類の「最大寿命」は約120年といわれており、人類史上もっとも長寿とされるフランス人の女性は、122歳まで生きました。現在存命している世界最高齢者は日本の田中カ子(かね)さんで、今年、119歳になりました。
厚生労働省が昨年発表した2020年時点の日本人の平均寿命は、女性は世界1位の87.74歳、男性は2位の81.64歳でした。いずれも過去最高を更新しました。
人の寿命(健康寿命+非自立期間)には当然、個体差があります。

●今月教えてくれる先生
森惟明(もりこれあき)先生
高知大学名誉教授

最大寿命と平均寿命

「寿命」とは、生物の一生の時間のことをいい、もっとも長く生きた個体の寿命を意味する「最大寿命」と、多くの個体の平均を意味する「平均寿命」とがあります。
人類の最大寿命は120歳とされていますが、これは理論的に導かれた数字ではなく、あくまでこれまでのデータによるものです。とはいえ、この辺りに人類の生物的限界があると言えます。
人は20歳ごろから生理的な衰えが始まります。加齢の確かな原因はまだわかっていませんが、これまでのところ「プログラム説」と「エラー蓄積説」という2つの説が有力視されています。

プログラム説とは?

プログラム説は、加齢スケジュールや寿命は、あらかじめDNA(※1)の中に遺伝情報として組み込まれており、時間経過とともに加齢が進行するという説を根拠にしています。ちなみに、体を構成する各細胞は、生まれたときから分裂できる回数の限界が決まっており、染色体の末端部にある「テロメア」(いのちの回数券)が細胞分裂のたびに少しずつ短くなり、限界を超えると細胞が再生されなくなります。分裂できなくなると、やがてその細胞は死を迎えます。この「細胞死」がすなわち私たちの寿命になる、というのがプログラム説です。
人の細胞の「分裂限界」(ヘイフリック限界)は約50回で最大寿命は約120年、ウサギは約20回で最大寿命は約10年、ラットは約15回で最大寿命は約3年と、細胞の分裂限界と種の最大寿命とは直線的相関関係にあります。

エラー蓄積説とは?

エラー蓄積説とは、細胞分裂の際にDNAを複製する過程で起こるエラー(間違い)の積み重ねが
加齢を招くという説です。
エラーが起こる原因は、放射線・紫外線・化学物質などによるDNAの損傷、活性酸素による細胞損傷などさまざまあり、細胞分裂の際に生じるわずかな突然変異が徐々に蓄積されていくと考えられています。そして、修復できないほどの損傷が蓄積した細胞では、「アポトーシス」(個体を良い状態に保つために積極的におこる細胞自殺が生じます。アポトーシスが生じることで、体内の細胞が「がん化」して体全体が生命の危険にさらされるのを防いでいます。こうした体内の仕組みを加齢の原因だと考えるのがエラー蓄積説です。

テロメアが老化防止のカギ

近年、テロメアが老化防止のカギを握っていることがわかりました。細胞に酸化ストレスや有害物質が作用すると、テロメアが早く短くなり、がんや動脈硬化、認知症といった病気にかかりやすくなるといわれています。例えば、喫煙による有害物質の影響で細胞に傷がつくと、細胞は新しくなるために細胞分裂が活発化します。そのため、いのちの回数券を早く使いきり、細胞の分裂限界も早く訪れます。喫煙だけでなく、食事や運動、睡眠などの生活習慣の良し悪しも、テロメアの寿命に影響します。
最大寿命近くまで生きている「百寿者」の特徴として、生活習慣病(とくに糖尿病)と、フレイル(※2)が少ないことがわかっています。このことから、人生100時代を迎え、生活習慣の改善とフレイル予防が注目されています。
百寿者には長寿家系の方もいれば、非長寿家系の方もいることから、寿命は遺伝子だけで決まるのではありません。
人は最大寿命に達すると、健康なまま眠るように死に至ります。それは理想的な生命の終え方といえるのかもしれません。

※1 デオキシリボ核酸のこと。細胞の核の中にある「生命の設計図」で、親から次の世代へと同じ性質を伝えていく役割を持っている。
※2 健康と要介護の中間の段階であり、身体的・精神心理的・社会的な虚弱といった問題を抱えている状態。

 

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