シニアライフ・コンシェルジュが案内する都内の名処⑳「朝倉彫塑館」

旅・生き方

CHAPTER20 日本彫刻の巨匠・朝倉文夫(あさくらふみお)が暮らした 朝倉彫塑館(あさくらちょうそかん)

東京に観光名所は数あれどあまり知られていない穴場スポットは数多く存在します。そんな「」を、隔月でシニアライフ・コンシェルジュ藤野政史がご案内します。
今月は、JR線ほか日暮里駅より徒歩5分の場所にある「朝倉彫塑館」に出掛けてみましょう。

朝倉の息吹を感じる無二の空間

 日本を代表する彫刻家、朝倉文夫。その朝倉が、昭和10年から亡くなる昭和39年までを過ごした建物が、朝倉彫塑館として一般公開されています。台東区谷中にある朝倉彫塑館は、朝倉自らが設計・監督したコンクリート造のアトリエ棟と木造の住居棟を組み合わせた特徴ある建物。その内部を主任研究員の戸張さんに案内していただきます。
「玄関から入ってすぐに広がるアトリエは、8.5mもの天井高があり、皆さんその広々とした空間にまず驚かれます。彫刻は鑑賞上、光線の具合が重要になるため、三方向から光を採り入れています。採り込んだ自然光で陰影が強く出すぎないよう、天井はR状の造りです。通常、大作は作品の周りに足場を組んで彫刻家が上り下りしながら制作しますが、朝倉は自分ではなく作品を動かそうと考え、電動昇降台を設置しました。そのため、アトリエはコンクリート造にする必要がありましたが、性分に合わないということで住まいは木造の数奇屋造にしたのです」
まるでホールのような広々とした空間には、早稲田大学の創設者である大隈重信の像をはじめ、朝倉の代表的な作品が並びます。アトリエを抜けると、壁一面に蔵書が並べられた書斎、そして数奇屋建築の住居棟へと続きます。

立派な造りのアトリエ。敷地内には、大正13年に造られた旧アトリエも残っている(非公開)。

四方を建物に囲まれた中庭は、その大半を池が占めている。朝倉は五典の池ともよばれる中庭を自己反省の場とし、迷いが生じたときは水を眺めて心身を浄化し、制作に邁進した。

アトリエで制作をする朝倉。電動で昇降する制作台に乗り、作業をする様子が見て取れる。

中庭を囲んだ和の住居棟

「アトリエと住まいは和と洋と捉えられがちですが、朝倉はコンクリートを洋とは捉えておらず、世界共通の建築材と考えていました。美意識の中にコンクリートと木材をいかにうまく融合させるかという視点があり、形式にとらわれないユニークな発想で幾度となく増築や改築を繰り返したのです。住居棟で特徴的と言えるのが、四方を建物に囲まれた中庭でしょう。庭と家の間には廊下などを挟むことがありますが、この建物にはそれがありません。たとえば茶室は庭を見るための部屋として、一体化が感じられるような造りになっています。また、庭はどこから見ても美しく見えるように作庭されています」
戸張さんが言うように、中庭に面した居間や自室、寝室からは、さまざまな庭の景色が楽しめます。さらに贅沢なのは、屋上に広がる庭園です。かつて朝倉はこの地で朝倉彫塑塾という専門学校を開校していましたが、野菜作りによって感覚が自然と研ぎ澄まされるよう、園芸を必修科目にしていました。その園芸を行っていたのが、この屋上庭園だったのです。
現在では、敷地全体が国指定名勝である朝倉彫塑館。無類の猫好きだった朝倉は、多い時には19匹もの飼い猫に囲まれて生活していました。そんな当時の様子が垣間見られる無二の空間に、ぜひお出掛けになってみてはいかがでしょうか。施設内は保存の観点から靴を脱いで入るようになっているので、お出掛けの際には靴下をご着用ください。

3階にある客人のための大広間「朝陽の間」には、伊豆天城の地中より掘り出されたという神代杉の天井をはじめ、贅沢な和の建材がふんだんに使われている。

聖徳太子像

9月5日までの期間展示されている『聖徳太子像』。歴史上の人物ではあるが決して神格化することなく、生身の人間がいるかのような存在感を感じさせる。

屋上庭園

屋上緑化の先駆けとしても貴重な事例である屋上庭園。現在は当時の菜園を一部再現し、野菜が育てられている。

書 斎

書斎の一角には、美術評論家の岩村透の約2,500冊もの蔵書が収められた岩村文庫がある。関東大震災の経験から作り付けの書棚にしたそうだが、ずらりと並べられた蔵書は圧巻のひとこと。

朝倉彫塑館

■所在地/台東区谷中7丁目18番10号
■最寄駅/JR、京成線、日暮里・舎人ライナー「日暮里」より徒歩5分
■開館時間/午前9時30分~午後4時30分 (入館は午後4時まで)
■休館日/月・木曜日(祝休日と重なる場合は翌平日)、年末年始
※展示替え等のため臨時休館することがあります
■入館料/一般500円(300円)、小・中・高校生250円(150円) ※( )内は20人以上の団体料金
※障害者手帳提示者及びその介護者は無料となります
※特定疾患医療受給者証提示者及びその介護者は無料となります
※毎週土曜日は台東区在住・在学の小、中学生とその引率者の入館料が無料です

※次回の「都内の名処」は11月号に掲載予定です。

藤野 政史さん藤野政史(ふじのまさふみ)
グローバルライフ株式会社 代表取締役
シニアライフ・コンシェルジュ
シニア世代の皆さまが楽しく、笑顔で、遊び、学ぶ、集う会
「グローバルライフクラブ」を運営。
 

 

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