ある日、突然起こるかもしれない耳からくる「めまい」

健康と美容

「めまい」人口270万人QOLの低下にも影響

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、「めまい」を訴えている人の数は全国で約270万人(※)。男性より女性の方が3倍近く多く、年齢が高くなるほど増えることがわかっています。
ひと言で「めまい」といっても、耳や脳の病気、心の不調など、原因や症状はさまざまです。
脳からくる「めまい」は、脳梗塞(のうこうそく)や脳出血など緊急性の高いものがほとんどで、頭痛や手足のしびれ、言語障害などを併発することが多く、早急に救急病院や専門病院を受診する必要があります。たとえ緊急性がなくても、頻発する「めまい」は日常生活に支障をきたし、QOL(生活の質)を著しく低下させます。

※厚生労働省「国民生活基礎調査(平成28年)」性・年齢階級別に見た有訴者率より計算

今月は「めまい」の原因の半数以上を占める「耳からくるめまい」について、富山大学医学部耳鼻咽喉科の将積(しょうじゃく)日出夫先生を取材。原因や対策について紹介します。

専門家に聞きました!つらい「めまい」を防ぐには?

当人にしかわからない不安と苦しみがある「めまい」。なぜ起こるのでしょうか?治療法はあるのでしょうか?

●お話を伺った方
将積 日出夫(しょうじゃく ひでお)先生
富山大学医学部耳鼻咽喉科頭頸部外科教授。1999年に、めまいの国際学会「バラニー学会」の若手奨励賞を日本人で初めて受賞。センター長を務める富山大学先端めまいセンターには、めまい患者が年間1000人以上訪れる。

めまい患者が増える理由ストレスが影響してる?

Q 耳と「めまい」の関係は?

A 耳は外耳・中耳・内耳に分けられ、耳からくる「めまい」の多くは、内耳の異常が原因とされます。内耳は、「聴覚(聞こえ)」と「平衡感覚(バランス)」の情報を脳に伝える大切な器官。ここに異常が発生すると全身のバランスにも影響し、「めまい」の原因になると考えられます。耳からくる「めまい」は表の通りで、おもに「メニエール病」と「良性発作性頭位のめまい患者さんの約8割を占めるといわれています。

Q おもな原因はなんですか?

A それぞれの病気が起こるメカニズムは表の内容のとおりですが、詳細な原因はほとんどわかっていないのが現状です。ただ、「メニエール病」に関しては、ストレスや几帳面な性格といった内因性と、睡眠不足や肉体的疲労といった生活習慣が大きく関わっているとされています。「良性発作性頭位めまい症」に関しては、頭部への外傷や長期の寝たきりが起因になることがわかっています。また、頭を動かさずに長時間同じ姿勢でめまい症」の2つで、内耳が原因いるデスクワーク従事者に多い傾向があるともいわれています。

Q 年齢や性別での違いは?

A 「メニエール病」や「突発性難聴」は、30~50代の働き盛り世代に多く起こります。かつては男性中心にみられた「メニエール病」ですが、約30年前からは女性の方が多く罹患しています。原因はわかりませんが、もしかしたら女性の社会進出が影響しているのかもしれません。また最近は、60代以上の発症者も多く見られます。介護疲れや運動不足といった、現代の状況が影響しているのかもしれません。「良性発作性頭位めまい症」はシニア世代に多く、加齢によって耳石(じせき)(※)が剝(は)がれやすいことや、運動不足が原因と考えられます。

※「耳石」とは、内耳の三半規管の中にある、重力や体の方向を感知する「耳石器」という器官の中にあるカルシウムの小さな粒。

「メニエール病」の改善に新しい治療装置が登場

Q 「めまい」が起こったときの対処法は?

A 耳の症状を伴う「めまい」は、早めに耳鼻科を受診しましょう。おもにMRIなどの画像検査、聴力検査、平衡機能検査を用いて診断します。「めまい専門病院」を受診するのも一つの手です。三半規管や耳石器の機能検査、メニエール病の内リンパ水腫推定検査、内耳造影MRI検査を受けられる施設があります。治療は薬物療法が中心で、内耳の血流やリンパの流れを促す抗めまい薬や、内耳のむくみを抑える利尿薬が処方されます。それでも改善されない場合、手術を選択する患者さんもいらっしゃいます。

Q メニエール病に新しい治療法があると聞きましたが?

A 「中耳加圧装置」という機械を使って、耳の奥に圧力をかけ、内リンパの排出を促すことで内耳のむくみを解消する「中耳加圧療法」という最新治療です。2018年に保険適用となり、レンタル機器のため自宅で治療できます。いわば、薬物療法と手術の間の治療法です。レンタル料は月1万8000円(3割負担であれば5400円)。1年間の治療で完治を目指します。同等機器での臨床研究では、2年間で9割の方の改善が見られました。中耳加圧療法を取り入れる耳鼻咽喉科は増えています。調べてみるのも良いでしょう。


富山大学医学部耳鼻咽喉科が第一医科株式会社と共同開発した「中耳加圧装置」

Q 「めまい」を防ぐには?

A 「めまい」がいつ襲ってくるかわからないと、心配で活動的になれません。「めまい」の原因がわからなければ、それがストレスになって「めまい」を悪化させます。まずは病院で「めまい」の病名(原因)を明らかにしましょう。そして薬物治療と並行し、生活習慣の改善などによるストレス回避を心掛けます。ウオーキングや軽いランニングなどの有酸素運動も効果的といいます。「病気を治さなければ」というプレッシャーもストレスになります。「レット・イット・ビー」「ケ・セラ・セラ」(なるようになるさ)の思いでいることも大切です。全国には、めまいの専門知識と基本的な診療技術を備える「めまい相談医」(一般社団法人日本めまい平衡医学会認定)が約700人います。同会のHPに詳細があるので、一度調べてみてはいかがでしょうか。

 

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