最近もの忘れが増えた。こんなこと、ありませんか? 脳は使わなければ衰えていきます。このコラムでは脳をすこやかに保つための方法を、3人の先生が12回にわたって教えてくれます。ぜひチャレンジして、12カ月で認知症リスクを減らす生活習慣を身につけましょう。チャレンジ⑧歯周病を治療しよう!
●今月教えてくれる先生
森惟明(もりこれあき)先生
高知大学名誉教授
チャレンジ⑧歯周病を治療しよう!

て、脳内に歯周病菌が入り込まないようにしたいものです。


中高年の90%近くが罹患しているという「歯周病」。最近の研究では口腔内の病気であるだけにとどまらず、「アルツハイマー型認知症」や「糖尿病」をはじめ、全身の健康に影響することがわかっています。
米国の研究チームは、アルツハイマー型認知症の人の脳内に、歯周病菌を検出したと発表しました。また、 歯周病菌を口腔内に感染させたマウスの実験では、6週間後には脳内にも同じ菌がみられるようになり、脳内では「アミロイドβ」というタンパク質のレベルが1.4倍に増えたという報告もあり、注目されています。
アミロイドβとは、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるタンパク質で、年をとるにつれて脳に溜まるゴミのようなものです。これが脳内に蓄積すると、認知症リスクが高まるといわれています。
糖尿病に関しても、歯周病菌から出る「リポ多糖」という物質が歯肉の炎症部分から血液中に入り込んで肥満につながることが示唆されています。肥満になるとインスリンの分泌が低下したり働きが悪くなったりして、糖尿病の原因や悪化につながります。また、肝臓に脂肪を蓄積させ、脂質異常症になる危険も高まるといわれています。
歯周病は、歯と歯ぐきの境目のブラッシングが行き届かないと、そこに食べかすや細菌がたまって「歯垢(しこう)」(プラーク)ができることから始まります。歯垢は2日ほどすると「歯石」へと変化するため、歯ブラシでは取れなくなってしまいます。歯石の中で増えた細菌は歯肉に炎症をひき起こし、やがて歯を支える歯槽骨(しそうこつ)を溶かします。そして、最後には歯が抜け落ちたり、抜歯が必要になったりします。
歯がなくなると、かむ力が弱くなったり発音障害を生じたりするだけでなく、食欲や意欲まで低下し、そのため脳に対する刺激が減ることで認知症になりやすくなるともいわれています。
「食べること」は人間らしい生活の基本ともいえるもので、例えば、寝たきりだった人が自分で食べられるようになると、だんだんと声が出て話せるようになり、笑顔が出て生活全般に意欲が生まれるようにもなってきます。