いまだから知っておきたいワクチンの基礎知識Q&A

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日本はワクチン後進国?

新型コロナウイルスのワクチン接種が進むなか、「ワクチン」に対する関心が高まっています。一方で、日本の予防接種制度は世界の先進国の中でも最低レベルといわれているのはご存じでしょうか?そのため、ワクチンに対して懐疑的な人や、ワクチンについてよく理解していない人も多く、身近なインフルエンザワクチンの定期接種率でさえ、例年50%程度と低い水準となっています(※)。韓国やメキシコでは80%以上、イギリスは70%を超えていますから、日本人のワクチンへの関心の低さが数字に表れていると言えそうです。
そもそもワクチンとは、どういう役割を果たすものなのでしょうか。今月は、遺伝子ワクチン研究の第一人者である、東京大学医科学研究所の石井健教授を取材。新型コロナウイルスのワクチンだけでなく肺炎球菌ワクチンや、定期接種と任意接種の違いなど、ワクチンの基礎知識をQ&A形式で紹介します。ワクチン接種について一緒に考えていきましょう。

※厚生労働省「定期の予防接種実施者数」より

専門家に聞きました!ワクチンの素朴な疑問

日本ではワクチンを接種することは「義務」ではなく、「義務努力」。だからこそ一人ひとりがワクチンを知り、判断する必要があります。

石井健先生●お話を伺った先生 石井 健(いしいけん)先生
東京大学 医科学研究所
感染・免疫 部門ワクチン科学分野 教授FDA生物製剤センターでマラリアワクチンの基礎研究をはじめ、自然免疫やアジュバントの研究に長年従事。新型コロナウイルスのワクチン開発にも関わる。

誤解していませんか?効果と安全性について

Q そもそもワクチンって何?

A 感染症を起こす病原体(ウイルスや細菌など)を弱毒化したものがワクチンです。病気になってから使う治療薬に対し、ワクチンは病気にならないように前もって接種するものです。接種すると、その病原体に対する免疫が体内でつくられ、病原体が体の中に入っても病気にかからない、病気にかかっても重症化しないようにするのがワクチンです。

Q ワクチンを打てば病気にならないのでは?

A 病原体やウイルスには新しい株が出現することもあり、ワクチンを1度打てば安心とは言えません。ワクチンの役割は「自分が病気にならないこと」に加え、「病原体から自分と周りの人を守ること」が最重要点です。接種の輪が家族から地域、国から世界へと広がれば、感染症から多くの人を守ることができます。

Q ワクチンって実際に効くの?

A 例えばインフルエンザワクチンの有効性は約60%とされています。これは重症化予防の有効性で、発症予防ではもう少し数値が低くなるといわれます。天然痘(てんねんとう)や麻疹(はしか)、風疹(ふうしん)、おたふくかぜ、結核など、定期接種に該当するワクチンは発症予防の効果も高いです。人口の8~9割の人が接種すれば病気が拡大しないレベルになり、これが集団免疫です。つまり、ワクチンが本当に効くかどうかは、個人の防衛と社会全体の防衛の両面から捉える必要があるということを知っていただきたいです。

Q ワクチンって安全なの?

A 副作用が0・0001%の確率で、たとえ100万人に1人の症例であっても、当人や家族にとっては100%の事実です。それに応えられる研究を続けていくことが、私たち研究者の責務と考えています。その点では、「本当に安全か?」という問いに100%の回答は出せません。ただ、人生は被るリスクより得られる利益を優先することが明るい未来につながると信じています。ワクチンも同じで、打つことで得られる利益、打たないことで得られる利益、打つことで起こるリスク、打たないことで起こるリスクを考え、自身で情報を集めて精査し、判断することが大切です。一人ひとりがそうした考えを持つことで、社会全体も成熟していくものだと考えます。

海外と大きく異なる日本のワクチン事情

Q 「筋肉注射」と「皮下注射」の違いは?

A 日本では皮下注射が主流ですが、海外はその逆です。「皮下注射」は皮膚と筋肉の間にある皮下組織に注射し、「筋肉注射」は筋肉内に注射します。効果に違いはありませんが、筋肉注射の方が皮膚の腫(は)れや痛みが少ないとされています。

Q 「定期接種」と「任意接種」の違いは?

A 自治体主体の予防接種が「定期接種」(公費※一部で自己負担あり)。希望者が各自で受けるのが「任意接種」(自費)です。「定期接種」とはいえ、あくまでも各自の「義務努力」。一方、諸外国は真逆です。あの自由を愛するアメリカでさえ、定期接種のワクチンをすべて接種しなければ小学校に入学できません。それほどワクチン接種の有無が、公衆衛生の根幹を揺るがす問題と捉えています。日本でも近年、任意接種から定期接種に変わったワクチンがいくつもありますが、まだ接種率は低く、集団免疫を獲得できるまでには至っていません。

Q 肺炎球菌ワクチンは接種すべき?

A 定期接種である「肺炎球菌ワクチン」は満65歳から受けられます。5年経つと効果が弱まるとされ、医師への要相談で5年ごとの接種が勧められます※初回は一部助成)。2種類のワクチンがありますが、2回目に1回目と異なる種類を接種しても問題ありません。肺炎による死亡者は年間で10万人を超えています。日本の肺炎球菌のワクチン接種率は40%ほど。アメリカの接種率(約60%)くらいになれば、肺炎の死亡者を約4万人減らせるという試算があります。

Q ワクチンとどう向き合っていくべき?

A ワクチンとは「後悔先に立たず」。もし病気になった際に「あのとき打っていれば」と思うものかもしれません。いま、ゴールデンライフ世代の皆さんにとって危ないウイルスが、世界中を闊歩(かっぽ)しています。肺炎球菌も含め、ワクチンを打つ利益とリスクを考えながら、長生きする未来を見据えて、皆さんご自身で判断してください。また、「予防接種健康被害救済制度」や「医薬品副作用被害救済制度」などがあることも知っておいてください。そして、必要のない苦しみから前もって逃れることは非常に大事です。いまこそワクチンについて知り、考えていただきたいです。

 

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