最近もの忘れが増えた。こんなこと、ありませんか? 脳は使わなければ衰えていきます。このコラムでは脳をすこやかに保つための方法を、3人の先生が12回にわたって教えてくれます。ぜひチャレンジして、12カ月で認知症リスクを減らす生活習慣を身につけましょう。
●今月教えてくれる先生
森惟明(もりこれあき)先生
高知大学名誉教授
チャレンジ⑦脳を刺激しよう!

「脳トレ」をしてみましょう。一人でもできる簡単な読み書きや計算、なぞなぞ、クイズ、ナンバープレース(ナンプレ)など。自分にとって問題が難解過ぎると、かえってストレスになるので、楽しんで取り組めるものを選びましょう。家族や友人とコミュニケーションを取りながら楽しめるものであれば、より効果的です。

「語学学習」を始めてみましょう。学習のために英会話教室などに通うと、少なからず人との出会いがあります。人との会話は脳に多くの刺激を与え、認知症予防につながります。とくに既に習ったことのある英語学習は、脳に適度な負荷をかけ、言葉が通じたときの達成感や幸福感をもたらしてくれるでしょう。

五感をフルに使った生活は脳への刺激となり、機能維持につながります。脳の刺激といえば、真っ先に思いつくのが「脳トレ」かもしれません。東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授の研究では、脳の「前頭前野」は何もしていないときにはあまり活性化していませんが、「簡単な計算をしているとき」「本を音読しているとき」「誰かとコミュニケーションをとっているとき」は、脳の血流量が増加し、脳が活発に働いていることがわかりました。反対に「複雑な計算をしているとき」「クラシック音楽を聴いているとき」は、脳の活性化はあまりみられませんでした。つまり、簡単な読み書き・計算などの脳トレは、脳を活性化させる効果が期待できるといえるでしょう。また、英語などの「外国語学習」も脳に良い刺激を与えます。実際に、2言語を話す人の方が認知症になりにくいという研究結果があります。ベルギー・ゲント大学の調査では、認知症患者さん648人を対象に、バイリンガル(2言語を習得している人)とモノリンガル(1言語のみ習得している人)とで認知症の発症時期を調べたところ、バイリンガルの方が、モノリンガルより平均すると約4.5年発症が遅いことがわかったのです。
さらに、2つのことを同時に行う「ながら作業=デュアルタスク」も、脳の若さを保つ刺激になることで注目されています。国立長寿医療研究センターが自治体などとの連携で研究開発した「コグニサイズ」は、コグニション=認知と、エクササイズ=運動を組み合わせて、脳と体の機能を効果的に鍛えて向上させようという「認知症予防運動プログラム」です。例えば、いつもより少し大股で速歩きをしながら、しりとりや計算をし、川柳を考えたりします。計算であれば、1から4ずつを足していき、100を超えたら次は12ずつ引いていくなど難易度を上げていきます。
また、いくつかの作業をこなす「料理」には、食材選びや調味料の組合せなど、さまざまな手順・段取り・作業が必要になりますので、その過程には脳(前頭前野など)を刺激したり体を動かしたりと、認知症予防に最適な要素がたくさん含まれています。そして、自分の食べるものを自らきっちりと作って食べることは、低栄養の解消にもつながります。
今日からできる対策を上に紹介しますので、ぜひ参考にして、実践してみてください。