輝く人130 由紀さおりさん

インタビュー

困難が続くいまだからこそあきらめないことの大切さを伝えたい
70歳を過ぎてもなお、のびやかな澄んだ歌声で多くの人を魅了する歌手・由紀さおりさん。由紀さんの人生の大半を支えてきた「歌」と、初主演となる映画『ブルーヘブンを君に』に込めた想いを伺いました。

私の人生の傍(かたわ)らにはずっと「音楽」があった

子どものころから歌手活動をされていますが、歌との出会いはいつだったのでしょうか?

 きっかけは、姉がひばり児童合唱団に入ったことでしょうね。当時、まだ3歳だった私は、いつも母にくっついて姉の稽古場について行きました。そこでいろいろな歌を覚えては、家に帰って気ままに歌っているような子どもだったそうです。そのうち、「毎回こうしてついて来るなら、一緒にやらないか」と声を掛けていただき、5歳くらいでその合唱団に仲間入り。ここから私の音楽人生がスタートしました。その後は、童謡歌手として活動したり、CMソングやテレビ番組のテーマソングを歌ったり、NHKの歌のお姉さんをやったりしましたね。そして、高校3年でキングレコードからデビューしたものの、まったく売れないというしくじりも経て、あの『夜明けのスキャット』と出会ったわけです。振り返ってみると、私の人生、ずっと傍らに「音楽」がありました。

歌手だけでなく、女優としてもご活躍されています。変わらぬ美と健康の秘訣は?

 人前に出るということを常に意識していますね。だから、自粛生活中もただボケッと家にいるのではなく、自分でできる簡単な運動やウエイトコントロールを心掛けていました。最近はプライベートレッスンで、体のバランスを整えるためのトレーニングも始めたんですよ。実は、歌うときはのどだけでなく体全体を使っているんです。鼻から抜けるような頭声発声と腹式呼吸で歌うことで、体全体が共鳴板のようになるんですね。私の場合、常に右手にマイクを持って歌ってきたので、知らず知らずのうちに、偏った体の使い方をしてきたのでしょう。10年くらい前から左右差が生じてバランスが悪くなってきたので、いま、その矯正に励んでいるところです。

主人公・冬子に込めたのは夢をあきらめないエネルギー

映画初主演作となる『ブルーヘブンを君に』。どんな想いで取り組まれたのでしょうか?

 主人公の「冬子」のモデルとなった河本純子さんは、品種改良によってブルーヘブン(青いバラ)を作った方。さまざまな色のバラに囲まれて生活しながら、「こういうものを作りたい」というアイデアを生み出しては、その実現に尽力されてきました。しかも、その手法は遺伝子組み換えではなく、ひたすら交配を繰り返すというもの。1つの花を咲かせるには、長ければ1年近くかかるといいますから、ブルーヘブンを咲かせるために、どれほど地道に努力を重ねられたのかと思います。そんな河本さんに実際にお会いしてみると、その人柄の中に、あきらめずにやり遂げようとする意志の固さ、夢を貫くエネルギーのようなものをすごく感じました。だから、冬子の中にもそうした心の強さを感じてもらえるように意識して演じました。
映画は、病を発症して余命宣告を受けた冬子が、周囲に支えられながら、初恋の人がなしえなかった夢(=ハンググライダーで空を飛ぶこと)に挑むというストーリーです。困難が続くコロナ禍だからこそ、あきらめないことの大切さを伝えたいと思います。

そんな河本さんの姿勢に大いに共感されたそうですね?

 私、4年前に三味線を始めたんです。一昨年の10月には銀座の観世能楽堂で、狂言とコラボした一人芝居『夢の花―蔦代という女』に挑戦したんですよ。31ページにも及ぶ台本で、芝居と歌と踊り、そして三味線の1人4役です。さらに能楽堂では初めてとなるプロジェクションマッピングを用いた舞台演出も手掛けました。わからないことだらけで苦労の連続でしたが、そんな最中に、この映画のオファーをいただいたので、誰もやったことのないものに挑む河本さんの姿と自分がすごくリンクして見えましたね。
ちなみに、その舞台は昨年10月に再演を予定していたのですが、コロナの影響で延期になってしまいました。残念でしたけれど、その分、踊りや三味線の稽古ができたので、今年の2月にようやく再演が叶ったときには、よりよい成果として皆さんに披露することができたと思います。

読者へ向けてメッセージをお願いします。

 年をとると、行動範囲が狭くなって自分の世界に引きこもりがち。とくに若い人たちと交流する機会がめっきり減ってしまいますよね。交流したいと思っても、ただ待っているだけでは誰も振り向いてくれません。だからこそ、自分から近づく努力が必要かなって思っています。映画の冬子みたいに、若者たちの仲間に入れるような素敵なおじいちゃん、おばあちゃん、面白いおじいちゃん、おばあちゃんになりましょう!自分から関わっていけば、興味を持ってくれる子がいるはず。例えば、スマートフォンを持って、その使い方を若者に聞いてみるのはいかがでしょうか?ちょっとしたことがコミュニケーションの糸口になると思うので、ぜひトライしてみてください。

由紀さおり(ゆきさおり)
群馬県出身。子どものころから童謡歌手として活躍し、1969年に「由紀さおり」として『夜明けのスキャット』でデビュー。歌手として活動する一方、俳優として数多くのドラマや映画に出演。さらに、司会やバラエティなどでも幅広く活躍する。「美しい日本の歌を次世代に歌い継ぎたい」という思いのもと、姉、安田祥子と活動を続けている。2012年紫綬褒章受章。2019年には由紀さおりとしての歌手活動が50周年を迎え、同年に旭日小綬章を受章。

ブルーヘブンを君に

 

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