特集

新年記念リモート対談

本誌連載でおなじみ森惟明先生と総編集長・今井が、ゴールデンライフ創刊10年を振り返り、「いま」と「これから」を語ります。


森 惟明(もり これあき)(86歳)
高知大学名誉教授
ゴールデンライフ創刊当初より寄稿を続けている。


今井 敏義(いまいとしのり)(73歳)
紅屋オフセット株式会社
 代表取締役ゴールデンライフ発行人総編集長

2010年の9月に創刊したゴールデンライフ。創刊当初の思いを教えてください。

【今井】当時、私の両親に介護が必要になってはじめて、介護認定を受けるにはどうすればいいのか?「介護付有料老人ホーム」と「特養」は何が違うのか?など必要な知識がないことに気付きました。それは世の中の大半の方も同じで、実際にそういった事態に直面するまでわからないことだと思います。そこで私どもの印刷事業を生かして、必要な情報を毎月皆さまにご提供できたらという思いで本誌を創刊しました。この事業を通じて、多少なりとも皆さまのお役に立つことができればと願っております。
 そのなかで森先生には、創刊当初から私自身も役に立つお話ばかりを毎月寄稿いただき感謝しております。以前からぜひお会いしたいと思っておりました。
【森】本日はオンライン上ですが、私もお目にかかれて光栄です。ゴールデンライフを初めて手にしたとき、高齢者が老後を過ごすに際して有用な情報がわかりやすく盛り込まれていることに感心しました。このような冊子を無料で配布し続けておられる今井総編集長の利他精神に敬意を表するとともに、担当してくださった編集者の熱意のこもった編集態度に感銘を受けて、記事を提供させていただくことになったのを覚えております。

創刊から10年が経ち、仕事や健康、生き方に対して変わったことはありますか?

【今井】昔と比べると、だんだんと人間が丸くなって角がとれてきたように思います。10年前と比べれば体力も認知機能も低下してきましたが、人間も生き物ですから、これは致し方のないこと。現状をあるがままに受け入れ、それを認識することも大事だと思います。
 誰しも毎年1つずつ年をとるわけで、10年前に60歳だった方は、いまは70歳になるわけです。そういった意味で、記事は同じテーマの繰り返しが多くなります。一方で介護保険制度の改正など変わっていくものもあります。普遍的なテーマと変わっていくもの、バランスをみながら有益な情報を発信し続けることが大事な使命だと考えております。
【森】この10年、高齢者にできるだけ役に立つ情報の提供を心掛けてまいりました。それは同時に私自身のセカンドライフにも役立っています。こうして健康が保てているのも、執筆をする過程でいろいろと学ぶことができたおかげだろうと考えております。

「健やかな老後」を過ごすためには、何が大切だと思われますか?

【森】自著『健やかな老後を目指して』には、これまでお伝えしてきた情報がほとんど盛り込まれております。たとえば、「加齢」は誰にでも平等に起こり予防はできません。ところが「老化」は不平等で個人差が大きく、年をとればとるほどその差が大きくなりま
す。しかし幸いなことに、老化は予防が可能です。
 老化の三大要因は、①フレイル(虚弱)、②サルコペニア(加齢性筋肉減少症)、③ロコモ(運動器症候群)です。すでに老化要因を持っておられる方は治療で危険因子の進行を抑えることです。そして①病気・ケガを避け、②身体・精神機能を高い水準に維持し、③
社会とのつながりを持つことで、①身体的健康、②精神的健康、③社会的健康を維持することです。
 具体的には、食事と運動、そして睡眠など毎日の生活習慣に注意すること。そして今月から連載がスタートする「認知症予防チャレンジ」でも書きましたが、家に閉じこもらず社会とつながることです。いまはコロナ禍で外出を自粛している方が多いと思いますが、高齢者にとって閉じこもりは老化の非常に危険な因子となります。
【今井】私の場合、仕事を続けることが健康を保つ秘訣かもしれません。これまでいろいろなことに挑戦してきましたが、長続きしているのは仕事ですね。人と出会うことで刺激を受ける。悪いことも楽しいことも、ときには悲しいこともある。でも、好きなことはずっと続けられる。ただ、無理のないペースで続けることが課題です。

命にかかわる病気を経験されたお二人ですが、病気との向き合い方を教えてください。

【今井】5年前に肺がんの手術を受けましたが、がんは日本人の2人に1人がなるというし、終活も大事ですが、病気のせいで躊躇(ちゅうちょ)していると新しいことが始められないんですね。私の場合、自分の命がなくなるときに多分、やりかけのことがいっぱいあると思っています。全部終わらせてから、というのはありえない。人はあと100年生きられるから何かができるとか、あと5年の寿命だから何もできないとか、そんなことはなくて、そのときにできることをやり続けていくことが大事、という信念でおります。
【森】わかります。これは経験上の話ですが、前向きな患者さんは病気の治りが早く、がんの場合も進行が遅いように感じます。
 私もC型肝炎、心筋梗塞を経験しました。高齢になると「無病息災」あるいは「一病息災」というわけにはいきません。したがって「多病息災」をめざすべきだと考えます。そのための対処法として患者さんにアドバイスしているのは、「賢い患者になりなさい」ということ。これは自著にも書きましたが、自分の思いをお医者さんにうまく伝えることです。それには患者さんも勉強が必要です。
 日本の保険制度は非常に優れたものですが、自分が適切な病院にかかっているか判断が難しい面もあります。風邪をひいていきなり大病院に行くようなことがないように、信頼できるかかりつけ医を持たれることが非常に大切じゃないかと思います。

本誌では楽しみや生きがいにつながる情報も発信しています。お二人の楽しみを教えてください。

【森】85歳を過ぎてからは歩行機能が衰えていることと、最近はコロナ禍による外出自粛のため、多くの時間は読書に費やしています。この年になってわかったことは、「無知の知」で自分がいかに物事を知らないかということ。とくにお釈迦さんが説かれた「原始仏教」から多くの学びを得ております。ただ、健康維持のために長時間机に向かうことは避けています。
【今井】私は、いろいろ考えてみると、一番はやっぱり仕事かもしれない。ほかは、毎週日曜の新聞でやっている数独とクロスワードパズルです。この問題が解けているうちは、認知機能は大丈夫だろうと。できなくなったら気を付けた方がいいと自分に言い聞かせています。いまのところは大丈夫ですよ。あとは週末に会社の工場を回りながら、家内と外で食事をしたりするのが楽しみですね。大事なのは小さな積み重ねで、日々の生活の中で少しずつ楽しいことをするのが大切ではないかと思います。

お二人の2021年の目標を教えてください。

【森】今日も高知大学から新講座開講にあたり講義のオファーがありました。また、本誌に掲載していただいたコラム『身の丈を伸ばす生き方』は、人生の仕上げの一環として自費出版による書籍化を目指しており、全ての世代へ向けた人生の応援メッセージにしたいと考えております。どうか多くの方にご覧いただければ幸いです。人生の終末期の話で恐縮ですが、ただ一度の人生の旅も終着駅が近づき、列車から降りる準備をしなければならない時期となりました。「生・老・病・死」という人生の難題に対して、人間にはどうしようもないことは「受容」し、「自然の摂理」にしたがって、人様のお役に立てる存在でありたいと願っております。明日をも知れぬ身ですので、気力を失わず、一日一日を大切にし、生の質を高めて生きたいと考えております。願わくは、人生の卒業である「卒寿」(90歳)まで生き、人生の幕を下ろすときは「自分の人生はまんざらでもなかった」と言えるようにしたいものです。
【今井】最近、ときめきや好奇心がちょっと薄くなっている気がしますね。胸が「きゅん」とするようなことを、年をとっても忘れず、いままで経験したこともないようなことにチャレンジしていく。意識的にそちらへ向かっていきたいと思います。江戸時代に伊能忠敬は、引退後に日本地図を作って長生きをしているし、高齢になっても新しく始められることはいくらでもあると思います。やり遂げることに挑戦し続けるということが、人生の一つの醍醐味(だいごみ)だというふうに思っております。


 

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