輝く人123 浅野和之さん

インタビュー

掃除は台詞覚えから完全に解放される癒しのひととき
たくさんのドラマや映画に出演し、名バイプレイヤーとして大活躍の演技派俳優・浅野和之さん。俳優になったきっかけや忙しい中でのリラックス法などを伺いました。

好きという思いを貫いていまの僕がある

俳優になったきっかけは?

 僕の父は宝石職人で、自宅に5~6人のお弟子さんを抱えていました。だから僕の周りにはいつもたくさんの大人がいて、ちやほやされながら育ったんです。小さいころはよく、彼らの前で流行りの歌を歌ったり、ものまねをしたりして、皆を喜ばせていましたね。おそらく、その経験から人前で何かをする楽しさを知ったんじゃないでしょうか。とにかく「人前に出る」ことがやりたくて、その手段として選んだのが演劇でした。高校で演劇部に所属しましたが、きちんと勉強を始めたのは高校3年生のとき。ある児童劇団の青年部に入り、本格的にノウハウを習ったんです。演劇の魅力にすっかりハマった僕は、桐朋学園大学に進み、専科を含めた4年間、朝から晩まで演劇漬けの生活をおくりました。そこでの安部公房先生との出会いが、いわば僕の原点。専科1年のときに安部公房スタジオを受験するも落とされたことがきっかけとなって、はじめて「俳優」を職業として意識するようになったんです。

やめたいと思ったことは?

 僕は演じることが大好き。好きだから知りたい、好きだから続けたいという思いを貫いた結果、俳優という道が開けたわけですが、仕事となれば当然壁にもぶつかります。もともと僕は舞台からスタートしているので、映画やドラマなどの映像の仕事を始めたときは、正直とまどいました。演じることの基本は同じなんですが、舞台とカメラの前とでは芝居のサイズが変わるんですよ。舞台では少し大きく演じるので、それをそのまま映像に持ち込むと違和感が生じてしまう。それにすごく抵抗を感じて、舞台と映像の両輪は無理じゃないかって真剣に悩んだ時期もありました。いまは、それぞれの良さを知り、その違いを楽しんでいます。

役作りで心掛けていることはありますか?

 台詞をしっかり腑(ふ)に落とすこと。つまり、自分の体の中に落とし込むことが大切です。そうしないと、台本を読んでいるだけで、演じることにはなりませんからね。そのためには集中する必要があるので、僕はよくカラオケボックスを使っています。小さな部屋なので気が散らないし、大声を出しても気にならない。しかも、日中は格安で利用できるのでとても便利です。ただし、いまは仕事以外は外出を控え気味にしているので、台詞覚えはもっぱら自宅の自室でやっています。

掃除をすることが何よりのリラックス法

プライベートはどのように過ごしていますか?

 僕は、お休みだからといってボーッと過ごすことができない人間なんですよ。マグロみたいに常に動いていないと死んじゃう。だから時間ができると、ひたすら家の中をキレイにしています。本を読むことも好きですが、結局は台本が頭をよぎっちゃって休めない。でも、掃除は台詞覚えから完全に解放される癒しのひとときになるんです。掃除好きが講じて、若いころに友達と2人で「便利屋・五徳」という名前で、掃除の仕事を請け負っていたこともあるんですよ。ただ、あまりに掃除好きで、たまに台詞覚えしていたことを忘れちゃうんです。台詞覚えの途中で台所に水を飲みに行くと「あっ、蛇口が汚れてるな」って、ちょこちょこ掃除を始めてしまう。そして気付いたらレンジフードまで磨いていた、なんてこともありましたね。それではさすがに仕事に支障をきたすんで、最近は自制心を働かせるようにしています。

若さと元気の秘訣は?

 たぶん、遺伝ですね。僕には80歳、76歳、70歳の姉兄がいるんですが、みんな本当に元気。全員が年齢よりも若く見られます。健康のために何かしているわけでもないので、家系的なものじゃないかと思っています。また、いろいろなことに興味を持つことが元気につながっているのかな。俳優という仕事は、与えられた役に挑むためにいろいろと情報収集して、ときには新しいことを勉強しないといけないので、それがいい刺激になっているんだと思います。だから、僕と同じ世代の皆さんには「新しいものに興味をもって、どんどん踏み込んでいこう!」と言いたいです。以前、ある雑誌で読んだのですが、90歳近くまで現役を貫いた幇間(ほうかん)(太鼓持ち)の初代・桜川ぴん助さんは、まさに好奇心のかたまりのような人でした。興味、好奇心はバイタリティーの源。健康長寿を叶えるお手本にしたいですね。

最後に、舞台『23階の笑い』の見どころを教えてください。

 2人の喜劇作家のコラボですから、面白いこと間違いなし!とくに、三谷さんの笑いのツボはすばらしい。マニアックではなく、老若男女誰でも楽しめる作品なので、ぜひ、観に来てください。

浅野和之(あさのかずゆき)
1954年2月生まれ、東京都出身。1987年、劇団『夢の遊眠社』に入団。1992年の解散後は、舞台のほか映像の世界にも活躍の場を広げていき、多くの映画やドラマに出演。また、2002年に三谷幸喜演出の舞台『You are the Top/今宵の君』をきっかけに、三谷作品で欠かせない存在となった。演技派として、読売演劇大賞・最優秀男優賞に2度輝くなど受賞歴も多数。

 

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