コラム

木村重男先生の上手な老い方手帖

人は生きてきたとおりに齢をとる。「いい年のとり方をしましたね」と言われるように。
良いも悪いも受け取めて、一日一日を大切に生きる、木村重男先生の珠玉のコラム。

④ お礼は生活の潤滑油

 他人には気軽にお礼が言えても、身内には言えないという人がいます。
 夫婦・親子・兄妹・親せきの間柄とはいえ、「してもらって当たり前」という無神経さがたびたび重なると、相手を不快にさせてしまいます。姑が嫁にお土産を持たせたり、孫の子守りをしたのに、お礼の電話もかけてこない、といった単純でたわいのないことが、積もり積もって不信感をつのらせ、争いの火種にもなりかねません。「今日は本当に助かりました」「とてもおいしかったです」というひと言は人格の表現であり、生活の潤滑油です。嫁姑ともに大切にしたいものです。
 愛知県一宮市のKさんは、東北の田舎に住む姑(88歳)の看病に出掛けました。風土病の末期で、すでに手足がはれあがって変色している状態の姑でしたが、「痛い」とか「つらい」とはひと言ももらさなかった気丈なおばあさんです。そして、何をしてもらっても「ありがとうよ」「すまないね」と手を合わせ、相手の労をねぎらい、感謝の言葉を忘れません。「私は本当に幸せ者だった。いい息子、いい嫁に恵まれたおかげで……」とお礼を言いながら、安らかに息を引き取りました。なんとすてきなお姑さんでしょう。
 感謝の気持ちは、体が不自由なら言葉で、言葉が不自由なら態度で示すこともできます。ただこうしたことは急にできることではありません。日ごろの生き方が、晩年の顔や態度に表れるのです。それだけに、美しく老いるためのヒントは、日常生活の中にあります。Kさんは「わずか3カ月の看病でしたが、姑から大切な老後の生き方を学びました」と話してくれました。
 人から贈り物をもらったとき、当然のことですが、心から感謝して受け取り、その気持ちを形で表しているでしょうか。直接、面と向かっているなら「〇〇さん、ありがとう」と相手の名前を呼んでお礼を言いたいものですし、遠方の場合は、すぐに電話やお礼の手紙を出すことです。
 たとえば、「先日はいろいろとお世話さまでした。久しぶりで皆さんに囲まれ、楽しい一日を過ごしました。いただいたおみやげはご近所に配り、たいへん喜ばれました。今度はうちのほうにも遊びにきてくださいね。ありがとうございました」など、簡単なもので十分です。
 一番よい手紙は、文章も上手で誠心(まごころ)のある手紙。二番目は、文章は下手でも誠心のある手紙。三番目は、文章は上手でも誠心の疑われる手紙。もっとも悪いのは、言うまでもなく手紙を出さないことです。
「挨拶ができる」「お礼が言える」ことは人として最低条件ですが、私は「自由自在に礼状が書ける」ことも条件に加えています。簡単なようで、簡単にはできないことですが、そこに至るための努力が「美しい老い」への黄金の道となるのです。

木村重男(きむらしげお)
一般社団法人倫理研究所 参与。
文部科学大臣から社会教育功労賞を受賞。著書に『夫婦の玉手箱』『豊かな人生を拓く玉手箱』など多数。

 

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