都内の名処

シニアライフ・コンシェルジュが案内する都内の名処⑬

CHAPTER13 心に響く言葉に出逢う 相田みつを美術館

東京に観光名所は数あれどあまり知られていない穴場スポットは数多く存在します。そんな「都内の名処」を、隔月でシニアライフ・コンシェルジュ藤野政史がご案内します。今月は、JR有楽町駅から徒歩3分の東京国際フォーラム地下1階にある「相田みつを美術館」に出掛けてみましょう。

心をリセットする空間

「にんげんだもの」や「しあわせはいつも」で知られる相田みつをさんが残した言葉は、没後30年を迎えるいまも多くの人の心を捉えてやみません。その原作に触れら
れるのが、東京国際フォーラムにある「相田みつを美術館」です。館長を務めるご子息の相田一人(かずひと)さんに、館内を歩きながらその言葉の奥深さについて語っていただきました。
「父の作品の一番の特徴は、書とも絵とも言い表せない造形芸術のような独特の文字でしょう。20代の頃は正統派の書体でしたが、そこから書家とも詩人ともジャンル
分けできない独自の世界観を築き、強烈な作品を残していきました。ただしそれらはすべて、綿密に計算されたものだったのです。父の作品は、短い言葉ゆえにひらめきで作ったように誤解されがちですが、必ずある程度の長さの詩にまとめ、それをさらに凝縮していくという作り方をしています。1つの作品に1、2年かかるのはザラで、中には10年かかったものもありました。言葉が生まれるまでにはすさまじい葛藤があり、短い書の背後には長い思考のあとが透けて見えるような気がします」

「にんげんだもの」 1980年
人間の良い面も悪い面も含めて、すべてを肯定する言葉です。

「うばい合えば」1989年
普段は忘れていても誰もが心の底に持っている思いではないでしょうか。

「ぐち」 1977年   「道」 1980年代前半
「ものごとは、片一方から見たのでは本当のことはわからない。両面から見ないといけない」父がよく言っていたことです。「道」と「ぐち」は真逆のことを言っていますが、父が人を見る2つの視点だったのだろうと私は考えています。「道」と「ぐち」が1つになった言葉が「にんげんだもの」ではないでしょうか。

「しあわせはいつも」 1990年
父は私が物心のついた頃から、この作品を書いていました。ある意味で私はこの言葉に囲まれて過ごしたと言ってもいいかもしれません。

「いのちの根」 1980年代後半
この作品の中には「たえる」という言葉がいくつも出てきますが、最近「たえる」という言葉を耳にしませんね。逆に「きれる」という言葉を耳にする機会が増えた気がします。ときには「たえる」ことも大切ではないでしょうか。

「かんのん讃歌」1987年
とても優しい母性的な作品です。ただし「なにもかも みんな承知でね」という一節は恐い感じもします。

相田みつをのこだわりとは

 1996年に銀座に開館した相田みつを美術館は、前年に起きた阪神淡路大震災の影響で、開館直後は被災者の方が頻繁に訪れたと言います。その後、東日本大震災の直後にはインターネット上で「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」という言葉が拡散され、瞬く間に人々の間に広まりました。そしていま、また相田さんが残した言葉が多くの人に力を与えているのです。
「来館される方は、美術館で芸術作品を鑑賞するのとはまた違う感覚で訪れているようで、皆さん自分を見つめ直すいい機会になったとおっしゃってくださいます。ここは父の作品に直に触れられる唯一の空間です。館内には5つの展示室があり、時期によっては相田みつをと親和性の高い作家の方をお招きしてコラボレーションも行っています」
 案内していただいて驚いたのは、作品の中には1点たりとも同じサイズのものがないということ。相田さんは、言葉の内容に応じて作品のサイズを決め、あらかじめ大きめに寸断した紙に書いてから、余白をトリミングしていたと言います。また、決して裕福とはいえない暮らしの中、道具については一切妥協することなく、満足がいくまで本番用の紙や筆、墨を使用していたと知り、そのこだわりにも驚きました。時間とお金をかけて最高の作品を追求し続け、完成品からはどれも執念のような思いが感じられます。
「書は余白の美と言われます。そのため父は、1週間近くかけてミリ単位で調整するほど余白の取り方にはこだわりました。さらに額とマットの色まですべて指定し、ようやく人目に触れさせるのです。私が美術館を開いたのは、そんな父の本質、原作でしかわからない迫力や細部の筆づかいを実際に感じていただきたかったからです」
 生涯にわたり、自分自身に問いかける作品を作り続けた相田さん。人々の心に刺さるその言葉の解釈は、読み手に委ねようと思っていたのではないでしょうか。

書き損じの山に囲まれた、八幡町旧アトリエでのみつを。「父のアトリエはいつもこのような感じで、失敗の山はすべて風呂の焚き付けなどにして燃やしていました」と館長の一人さん。

井 戸

入ってすぐのスペースには大きな井戸があり中を覗くと「夢」の文字が浮かび上がる。

愛用の道具類

愛用の道具類を展示するスペースも。亡くなる1年ほど前に自身の作品について語ったという音声付きの解説コーナーも用意されている。

散策の小道

毎日深夜まで筆を取ったみつをは、興奮を冷ます意味でアトリエ近くの八幡山古墳を散歩するのが日課だった。館内には珪藻土が敷き詰められた通路があり、みつをが明け方思索にふけったというその小道が再現されている。

相田みつを美術館

■所在地/東京都千代田区丸の内3-5-1 東京国際フォーラム地下1階  
■電話番号/03-6212-3200
■最寄駅/JR「有楽町駅」国際フォーラム口より徒歩3分、「東京駅」丸の内南口
 より徒歩5分、京葉線「東京駅」と地下1階コンコース4番出口にて連絡
 東京メトロ有楽町線「有楽町駅」徒歩3分(地下1階コンコースD5出口にて連絡)
 東京メトロ日比谷線「日比谷駅」より徒歩5分
 東京メトロ千代田線「二重橋前駅」より徒歩5分、「日比谷駅」より徒歩7分
 東京メトロ丸ノ内線「東京駅」より徒歩5分、「銀座駅」より徒歩5分
 東京メトロ銀座線「銀座駅」より徒歩7分、「京橋駅」より徒歩7分
 都営三田線「日比谷駅」より徒歩5分
■開館時間/午前10時~午後5時30分(入館は午後5時まで)
■休館日/月曜日(祝休日の場合は開館・振替休日なし)
■入園料/一般・大学生800円/70歳以上600円/中・高校生500円/小学生200円(未就学児は無料)
 ※障がい者及び付き添いの方は1名無料。ミュージアムショップのみのご利用は入場無料
■展覧会情報/第75回企画展「みつをの言葉力(ことばぢから)」(9月13日(日)まで〈予定〉)
 ※新型コロナウイルス感染拡大防止のため臨時休館となる可能性もございます。臨時休館につきましては、お電話・サイト等にてご確認ください。


多くの商品が並ぶミュージアムショップ(入場無料)。グッズはオンラインショップでも購入でき、作品を鑑賞した後に余韻に浸れるカフェも併設されている。

藤野 政史さん藤野政史(ふじのまさふみ)
グローバルライフ株式会社 代表取締役
シニアライフ・コンシェルジュ
シニア世代の皆さまが楽しく、笑顔で、遊び、学ぶ、集う会
「グローバルライフクラブ」を運営。
 

※次回の「都内の名処」は9月号に掲載予定です。
 

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