インタビュー

輝く人114 渡辺謙さん

輝く人 渡辺謙さん

人生は、何かが得られるという確証のない旅に挑むこと
日本とハリウッドを股にかけ、舞台・映画・ドラマとあらゆる分野で圧倒的な存在感を放つ国際派俳優・渡辺謙さん。
これまでの俳優人生を振り返るとともに、舞台『ピサロ』にかける熱い想いを伺いました。

35年前の『ピサロ』で演劇の神様と出会った

どんなお子さまでしたか?

 僕は、物心ついたのがすごく遅くてね。一番古い記憶として残っているのは、小学3年生のお別れ会のときに、皆の前で落語を披露したこと。当時よく読んでいた落語全集をお手本に、北海道を題材とした落語を自分で作って発表したんです。もともと活発な性格だったので人前でのパフォーマンスを面白がってやっていたんじゃないかな。その後、パフォーマンスの手段は音楽になり、小学5年生のときに入った鼓笛隊でトランペットと出会いました。以来、中学、高校と吹奏楽部に所属してトランペットに熱中していました。

音楽ではなく演劇の道を目指したきっかけは?

 単純に、トランペットでは食べていけないと思ったんですよ。技量も根気もなくて自分には向いていないと確信したので、演劇の世界へと舵をきりました。でも、そこから大人としての物心がつくまでにも時間がかかりました。劇団の養成所に入って1年で、蜷川さんの舞台『下谷万年町物語』のオーディションに合格。映画やドラマなど映像の仕事も増えましたが、自分のやっていることに確証が持てない状態が続いていたんです。35年前に『ピサロ』のオファーを受けたときは、「これが僕にとっての最後の仕事になるかもしれない」。そんな思いもよぎっていました。ところが、この舞台に立ったとき「演劇の神様がいる!」と、ふと感じたんです。舞台は、観に来てくださるお客様のためにつくり上げる世界ですが、一方で、ここには演劇の神様がいて、その神様に対しても正面から向き合わないとダメだという思いがわき上がりました。その結果、しっかりと本腰を入れてやれば、それが自分の体感として残っていくのだと気付くことができました。

これまでの俳優人生で一番印象に残っていることは?

 いいことも悪いこともたくさんありすぎて、選ぶことはできません。たとえば、舞台『王様と私』のロンドン公演のとき。直前に共演のルーシーが交通事故に遭い、けがをしてしまいました。それでも杖をつきながら現地に合流したのですが、事故のショックが大きく、フラッシュバックを起こして泣き崩れ、稽古が中断してしまうことがありました。そんな彼女をメンバーで必死に支え、挑んだ復帰初日。彼女が見事『サムシング・ワンダフル』を歌いきり、無事カーテンコールを迎えたときは感動というひと言ではいい表せない感情がこみ上げましたね。また、同じ舞台で僕が大失敗をしてしまったとき。理由はわかっているのに、それをロジカルに説明できない自分にふがいなさを感じて、メイクも落とさず挨拶もせず帰ってしまいました。するとその晩、相手役のケリーから「私たちの王はあなたしかいないのだから、失敗を恐れないで」という励ましのメールが送られてきました。さらに翌朝、楽屋に行くと他のメンバーからの手紙もたくさん置かれていて、心が救われたのを覚えています。

結果は想像せず、いまある課題に挑む

今後、挑戦してみたい役柄はありますか?

 まったくありません。というより「こうなりたい」という思いは自分の概念でしかないので。「僕にその役をやれっていうの?」という突拍子もない展開の方が成長できると思うし、それに備えるためにも常にフラットにしておきたいと感じます。

舞台は体力勝負といわれます。『ピサロ』に向けて取り組んでいる健康法はありますか?

 今年は正月返上でトレーニングを開始。自宅のマシンで体を鍛えて体力づくりに励んでいます。食事はパートナーの支えで糖質制限と栄養バランスの整った食事を心掛けていますね。それと睡眠も大切。妙齢なので朝早くに目が覚めるんですが、決めた時間まではとにかく寝るようにしています。いまは睡眠中も舞台のためだけに生きています。呪文のようにせりふを唱える毎日です。

舞台『ピサロ』に向けての意気込みを聞かせてください。

 正直、このオファーを受けたことを後悔しているんですよ(笑)。あまりにもハードルが高すぎるってね。だからこそ、やるべきだという覚悟ですが、35年前と同じ作品で何を感じるか、どこにたどり着くかはまったくわかりません。将軍ピサロも同じで、何かが得られるという確証のない旅に挑んでいく。それは僕らの人生も同じで、その気持ちをピサロと共有し続けたいと思っています。

渡辺謙(わたなべけん)
1959年10月21日生まれ、新潟県出身。高校卒業後、演劇集団・円に入団し、1984年『瀬戸内少年野球団』で映画デビュー。1987年にはNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』の主演に抜擢され、一躍人気俳優となる。2003年トム・クルーズ主演の『ラスト サムライ』でハリウッド進出。以降、『硫黄島からの手紙』(06)『沈まぬ太陽』(09)『GODZILLAゴジラ』(14)など、国内外の作品に出演。さらに、2015年にはミュージカル『王様と私』でブロードウェイデビューも果たした。

 

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