コラム

【最終回】命涯(かぎ)りあり知は涯りなし⑯

命涯りあり知は涯りなし

人にはそれぞれの生き方があり、人生にはドラマがある。私もいつの間にか86歳になった。
ふと、あと何年生きられるかと思うことがある。必死に生きてきた私の半生を書いてみたい。

⑯1度しかない人生、最後まで感謝とご奉公を

 敗戦後、台湾引き揚げから間もなく両親を亡くした私は、昼間は薬局で働きながら高校の夜学を卒業した。そして昭和32年4月、一般社団法人倫理研究所へ入所後、同じ職場で勤務していた妻と結婚。男ばかり6人の子を育てながら、倫理活動の普及に奔走(ほんそう)した。

再び市原刑務所で

 平成20年6月13日、市原刑務所で400人を対象とした講演。テーマは、『人生は再出発の連続・反復』――つねに活路あり――過去と他人は変えられないと知るべし。わが人生の悲劇、あの日、あの事さえなければ……と後悔した体験の数々。
○飲酒運転による事故○スピードの出し過ぎによる事故
○居眠り運転による事故
○その他
 日本全国で走る凶器による交通事故は毎日どこかで起きている。小学生のころから〝注意一秒、怪我一生〟という言葉も学んだ。どんなに悔やみ、嘆き、悲しんでも過去は取り戻せない。それより自己中心的で自立心がなく、誘惑に弱くて、生活にだらしなかった自分を反省することに尽きる。
 これからは後悔より、深い反省といさぎよい再出発が大切。誰でも努力次第で運命も人生も変えることができる――という内容だったが、受講者からはたくさんの感想文をいただいた。
 その1つひとつについては省略するが、なかには「『朝は希望に起き昼は喜んで働き 夜は感謝に眠る』を生活信条にして、積善こそ消罪への近道だと知って、希望と目標が確立された」といううれしい言葉もあり感謝している。
 市原刑務所とは保護司の方のご尽力で多くの人との出会いがあり、光栄なことに3度の感謝状をいただいた。

一生のご恩をいただく

 長年、素晴らしい方々との出会いがあり、数多くの講演や執筆を通して、たくさんの研究や指導をさせていただき幸せだった。
 その都度、講演原稿を作成し資料を集め、地道な努力が実って、6冊の単行本を自費出版することができた。自著へのサインも2万5千冊におよび、私の生きた証となった。これは大恩人である紅屋オフセット株式会社の今井寅吉氏、現社長の今井敏義(としのり)氏の大変なご厚意とご援助をいただいたおかげであり、一生のご恩をいただいたことに感謝している。  
 簡単に自著の紹介をすると、
●個人・家庭向けに
◇お母さんの玉手箱(平成16年1月出版)
 ―良い子に育てる生活の知恵と子育てのヒント―
◇夫婦の玉手箱(平成18年1月出版)
 ―家庭こそ幸福の源泉―
◇豊かな人生を拓く玉手箱(平成22年1月出版)
 ―美しく老いる生活の知恵と99のヒント―
●職場向けに
◇平成社員心得帳(平成15年7月出版)
 ―学んで実行すれば得をする―
◇平成社員心得帳パートⅡ(平成16年7月出版)
 ―魅力ある社員(幹部)はここが違う―
◇平成経営者心得帳(平成17年3月出版)
 ―繁栄する企業はここが違う―

社会教育功労賞を授与

 人の運命とは不思議なものだ。住み込み店員として働きながら夜間高校を卒業した私が、思いがけなく文部科学大臣から社会教育功労賞をいただくことになった。
 倫理研究所の『倫研新報』平成19年1月号には「木村重男参与に表彰状 平成18年度社会教育功労者」の見出しで掲載された。その一部を紹介すると、
――――――――――――――――
 平成十八年度「社会教育功労者表彰式」が十二月六日、東京のパレスホテルで開催され、木村重男参与が表彰を受けた。(中略)
 昭和三十二年に倫理研究所に入所。入所後は普及現場に出張して会員の指導教育に奔走し、また研究部、弘報部、編集部などで会員のための教育資料の製作に当たった。また全国の「家の継承問題」に悩む人々の相談にのり、的確な指導で問題解決に導き、さらに「夫婦問題」「親子問題」「老人問題」にも研究を深め抜群の指導力を発揮。五十九年に理事、出版局長を経て、平成五年に常任理事、同十一年に参与となった。
 表彰を受けて木村参与は、「今年は倫理研究所に入所して、ちょうど五十年の節目だけに、長年の努力が報われ、夫婦共々心から感謝しています。本も数十冊書きましたが、さらに精進して、少しでも倫理運動に貢献していきます」と喜びを語った。
――――――――――――――――
 私は自分のことより妻のことを思い率直に嬉しく、心から感謝した。長い間苦労して新聞配達などをして6人の男の子を育てながら、献身的に私を支えてくれた妻が、第1の功労者だからである。
 妻には「おめでとう」そして「ありがとう」と、感謝の念で労をねぎらった。

最後のご奉公に

 先にご紹介した今井寅吉氏は他界後、今後の医学の発展のためにと大学に献体をされた。私も今井寅吉氏のように最後のご奉公と思い、平成21年6月に神奈川県歯科大学に献体の登録をした。私もすでに86歳を迎えたが、さらに摂生してきれいな体で献体を迎えたいと願っている。
 1度しかない自分の人生だから、悔いが残らないように早くから心の準備をしておきたいと常に思っている。(完)

木村重男さん木村重男(きむらしげお)
1933(昭和8)年生まれ85歳
一般社団法人倫理研究所 参与。
文部科学大臣から社会教育功労賞を受賞。著書に『夫婦の玉手箱』『豊かな人生を拓く玉手箱』など多数

 

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