インタビュー

輝く人101 坂東玉三郎さん

坂東玉三郎さん

劇場とは異なる臨場感が「シネマ歌舞伎」の大きな魅力です

現代歌舞伎を代表する美しき立女方、人間国宝の坂東玉三郎さん。演出家としての才も発揮する 「シネマ歌舞伎」への想いと魅力を伺いながら、美の秘訣にも迫りました。

バックステージ映像や音や場面のつなぎにこだわり

まずは「シネマ歌舞伎」について教えてください。

 私がシネマ歌舞伎に関わるようになってから13年です。シネマ歌舞伎は、歌舞伎の舞台公演を撮影し、スクリーンで上映するというもので、歌舞伎をもっと身近に楽しんでいただきたいという思いから始まりました。しかし企画段階では、テレビ放送用に収録していた舞台をそのまま映画館で上映すればいい、という簡単な構想だったため、私は賛成していませんでした。単なる舞台の2次使用では、わざわざ観に来てくださる方に失礼だと感じたからです。シネマ歌舞伎でしか見られないものを入れて舞台との差別化を図る、それは私のなかの絶対条件でしたね。

具体的にはどんなことをしたのですか?

 例えば、バックステージ(楽屋)にカメラを入れて、化粧や早替りなどの様子を映像に織り込むことにしました。観る方の夢をこわさないよう配慮した選りすぐりの映像で、演者たちの出の前の緊張感を味わっていただけるのは、シネマ歌舞伎ならではの楽しみだと思います。また、劇場には複数のカメラを入れてさまざまな角度から舞台を捉えられるようにしました。具体的には、今回は7台のカメラで2公演分撮影しています。シネマ歌舞伎を意識して演じることは一切ありませんが、映像化されると作品に奥行きが出て、個々の表情や動きもより間近に感じられます。まさに、劇場とは異なる臨場感を味わえるのは、シネマ歌舞伎の大きな魅力でしょうね。

玉三郎さん自身、編集にも携わっているそうですが、特にこだわっている点はありますか?

 ひとつは「音」ですね。マイクが高性能になった分、音の編集にはさまざまな苦労が伴います。というのも、ほんの少しマイクの方向がずれるだけで、観客の咳ばらいや足音、衣類がすれる音など、不要なものまで鮮明に拾ってしまうからです。弦の音を弦らしくクリアに響かせたいとなれば、そうした雑音すべてを1つひとつ取り除いていくしかありません。いまは最新の編集技術で音を切ったり貼ったりできますが、それでも、音関連の編集作業には最低1カ月はかかっています。そして、もう1つは「場面のつなぎ」です。今作でいうと、「沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)」のような作品は斜めでつなぐと奥行きが出ますし、「楊貴妃(ようきひ)」のような舞踊は正面でつないだほうが見栄えがよくなります。これらはほんの一例で、そうした編集技術を駆く使しして、歌舞伎のすばらしさがしっかりと伝わるような映像作りを心掛けています。私はライティングデザインにもすごく興味があるので、今後はその辺も勉強していきたいと思っています。

原点に戻って演出を一新時間の流れもスムーズに

本作の特徴を教えてください。

「沓手鳥孤城落月」は新歌舞伎の原点に戻って、原作者の坪内逍遙(つぼうちしょうよう)先生の意図が生かせるよう、合方(三味線などの下座音楽)をすべて取り除いて、効果音(戦乱の音、雨音、遠雷など)のみの演出としました。さらに登場人物ごとに状況説明を入れていたシーンもあえて割愛し、1時間20分あった上演時間を60分弱にまで短縮。また樂様のご協力のおかげで、樂家の茶室の風景も解説を交えて収録しています。淀の方の時代の茶碗や香炉を、映像を通して観ていただくことで、歌舞伎座にはない趣がお楽しみいただけます。最近は、スマホのような小さな画面で映画を観ることも普通になってきましたが、シネマ歌舞伎はぜひ大きな空間、大きな画面で観て、体全体で作品を感じてほしいですね。

最後に、玉三郎さんの美と健康の秘訣を教えてください。

 健康にいい、美容にいいからと何か特別なことをやろうとしても、なかなか長続きしませんよね。それよりも「バランスのいい食事をする」「睡眠をしっかりとる」といった当たり前のことを「継続」することが大切なんじゃないでしょうか。私自身も、食事や睡眠をしっかりとって、日常のリズムをできるだけ崩さないよう生活することを心掛けています。美容に関しても、やっていることは歌舞伎役者として当たり前のことだけ。舞台のために化粧をし、終わったらしっかり化粧を落とすことを、子どものころからずっと繰り返してきました。無意識の継続ではありますが、それこそがスキンケアの基本。続けた結果として、今の私があるのだろうと思います。

坂東玉三郎 (ばんどう たまさぶろう)
東京都出身。1957年「菅原伝授手習鑑・寺子屋」で初舞台。1964年十四代目勘弥の芸養子となり、五代目坂東玉三郎を襲名。歌舞伎界屈指の立女方としてだけでなく、近代劇でも活躍。さらに、世界の超一流芸術家たちとのコラボレーションで、世界的賞賛を浴びる存在となる一方で、映画監督や演出家としての才能も発揮。2012年には重要無形文化財(人間国宝)に認定された。

 

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