インタビュー

俳優 井上順さん

井上順さん

前を向いて歩けば、いろんな景色が見えて人生楽しい
気さくで明るいキャラクターで、周囲を和ませる井上順さん。芸能界入りのきっかけや出演予定の舞台『九十歳。何がめでたい』について伺いながら、その魅力に迫ります。

ジャズ喫茶での出会いがきっかけ

井上さんのルーツ「野獣会」とは?

 幼かった頃は、両親の趣味で映画館によく連れて行かれました。両親は、3人兄弟の末っ子で小さかった僕を、家に置いては行けなったんでしょうね。一方、兄たちはいつも留守番させられていたので、帰宅すると身振り手振りで映画の内容を兄たちに披露していたんですよ。そんな僕の姿を見て、母は何かを感じたのでしょう。ある時、「野獣会」の人たちが集う場所に僕を連れて行ってくれました。それが中学2年生の時だったかな。野獣会というのは、音楽や映画、ファッションなどに興味を持ったオシャレな若者たちが集まって作ったグループ。それがすごく刺激的で楽しくて、学校帰りに入り浸るようになりました。そして、生涯お世話になった峰岸徹さんらと交流しながら、やがてバンドを組んで、ジャズ喫茶で歌を披露するようになったんです。

ザ・スパイダースとしてデビューするきっかけは?

 野獣会としての活動はアマチュアの域を出ませんでしたが、そこで田邊昭知(たなべしょうち)さんと出会えたことで運命が変わりましたね。当時は、ちょうどビートルズやローリングストーンズなどの海外のグループサウンズが流行り始めた頃。バンドも世の中の風潮に合わせて変わっていくべきだと、田邊さんが新生「ザ・スパイダース」を立ち上げたんですよ。そこに、かまやつひろしさんや堺正章さんが集められて、最後の一人として僕にお声が掛かったわけです。これには野獣会の人たちも快く背中を押してくれ、16歳で、僕は晴れてスパイダースの一員になりました。

苦労はありませんでしたか?

 全くありません。あれこれ考え込む年頃でもなかったし、そもそも毎日が新しいことの連続で、「楽しい!」のひと言。もちろん遊びではないので、田邊さんには相当厳しくしつけられました。でも、それは理想のバンドを作り上げるための愛のムチだと、素直に受け入れていたかな。そのおかげで、最初は閑古鳥(かんこどり)が鳴いていたジャズ喫茶の客席がだんだんと人で埋まるようになり、そこが修学旅行生の定番のルートにもなり、テレビ出演の機会が増えて、ついには空港で横断幕を掲げられ歓迎されるまでになりました。あの時は、ちょっとだけビートルズ気分に浸れましたね。

身近の楽しい、うれしいを見つけるのが僕のモットー

グループ解散後は、俳優の道も切り開いた井上さん。今回は、舞台『九十歳。何がめでたい』に出演されるそうですね。

 僕は本を読むのが好きで、この舞台の原作はすでに読んでいました。内容があまりにも面白くて、1~2時間集中して一気に読み切ってしまったほど。この感動を独り占めするのはもったいないと、皆に本を配ろうかと考えていた矢先、演出の石井ふく子先生から、この作品の出演オファーをいただき大喜びで引き受けました。いまは、こんな僕を選んでくださったことに感謝して、精一杯作品に尽くすだけ。最高の舞台をお届けできるよう、一生懸命稽古に励んでいます。こう見えて僕は不器用なんで。人一倍頑張らなくちゃね。

何事にも前向きな姿勢が印象的です。

 だって、前を向いていた方が人生楽しいでしょ。そのためにも身近なところで「楽しい」「うれしい」をいっぱい見つけることが僕のモットー。例えば、雨が降ったら「うっとおしい」と思わずに「雨降って地固まる!」と考えるし、嫌なことに遭遇したら「やってはいけないことを教えてくれたんだ」と考える。そうすれば自然と「サンキュー!」っていう気持ちになれるんです。悪いものは良いものに、良いものはより良いものに、何事もプラスに捉えれば心は平和。仕事でも遊びでも、僕は常にそう考えるようにしているんです。だから皆にも「下を向かずに前を向いて歩こう」って言いたいですね。前を向けば、いろんな景色が見えて、楽しい、うれしいが見つかりやすくなり、良い循環も生まれてくるはずです。

ゴールデンライフの読者にメッセージをお願いします。

 今回の舞台出演を機に感じたのは、原作の佐藤愛子先生も石井先生も終わりなき人だということ。90代というご高齢でありながら、「他人様のお役に立てるなら」と、常に前を向いて進んでいるんです。そこは僕もぜひ見習いたいところです。そもそも一人の人間が生きていくのは貴いことで、その過程で得られた経験はすごく価値があると思うんです。だから自分の歩んできた人生に自信を持って、さらに前進してほしい。そうやって進んだ先には、新しい発見がいっぱいあるはずです。その中で、楽しい、うれしいが実感できる日々を過ごしてほしいし、僕もそうしたいと思います。

井上順 (いのうえじゅん)
1947年2月21日生まれ。東京都渋谷区出身。1963年ザ・スパイダースに加入。堺正章と共にボーカルを担当し、『ノー・ノー・ボーイ』でデビュー。1971年にグループ解散後、『昨日・今日・明日』でソロ歌手デビューしたほか、俳優としてドラマ『ありがとう』シリーズや『渡る世間は鬼ばかり』、NHK大河『北条時宗』、映画『60歳のラブレター』『群青色のとおり道』など数々の作品に出演。さらに伝説の歌番組「夜のヒットスタジオ」で司会を担当するなど、多分野で才能を開花させ活躍中。

 

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