コラム

サクセスフル・エイジングへの道⑥

サクセスフル・エイジング

⑥いつまでも忘れない「思い出」の歌

認知症が進んで日常の生活が難しくなっている人でも、昔の歌を歌うと、一緒に口ずさむことができます。ときには懐かしい歌を思い出し、子どもの頃を振り返ってみませんか。

思い出の歌『野ばら』

 子どもの時に覚えた歌、若い時に反復して歌った歌は、忘れられないものです。
 認知症が進んで日常の生活が難しくなっている人でも、昔の歌を歌うと、一緒に口ずさむことができます。高齢者施設のレクリエーションでも、昔の歌を歌うことは大切な認知症改善プログラムです。
 筆者の施設では、小学唱歌や女学校でよく歌われていた歌の詞を、小学校の先生だったIさんが墨の丁寧な筆遣いで半紙に書いて、歌集を作ってくださいました。
 高齢者にとっては、筆で書いた歌詞は読みやすく、漢字が入っている方がわかりやすいようです。 
 たくさんコピーをして、いつでも見て歌えるようにしてあります。 
 午後、デイルームで皆さんが集まって小グループで歌ったりする時や、一人で好きな歌を歌ったりする時に使っています。
 ある日の午後、歌が大好きなNさんが、川の見えるデイルームの窓辺で、澄んだ声で『野ばら』を歌っていました。でもよく聞くと、日本語ではありません。「ザー アイン クナーブ アイン レーズラインステーン……」。ドイツ語の『野ばら』です。
女学校の先生に教えてもらった大好きな歌だそうです。
『野ばら』は今でも、中学校や高校の音楽の教科書に取り入れられている歌です。
野ばら 近藤朔風(こんどうさくふう) 訳詞
童(わらべ)は見たり 野なかの薔薇(ばら)
清らに咲ける その色愛(め)でつ
 飽かずながむ
紅(くれない)におう 野なかの薔薇
手折(たお)りて往(ゆ)かん 野なかの薔薇
手折らば手折れ 思出ぐさに
 君を刺さん
紅におう 野なかの薔薇
童は折りぬ 野なかの薔薇
折られてあわれ 清らの色香
 永久(とわ)にあせぬ
紅におう 野なかの薔薇

歌詞に想いをふくらませて

『野ばら』の原詩はゲーテで、日本で歌われているのは主にシューベルト作曲のものとウェルナーの作曲によるものです。
シューベルトは軽快で、ウェルナーはやや抒情的です。童(クナーブ)の年齢にもよりますが、可愛い少年のいたずらの歌ともとれるし、少し大きな少年の「紅の野ばらを手折ってしまうぞ」という、残虐な恋心かもしれません。
 訳詞をしている近藤朔風(1880~1915)は、明治〜大正時代に活躍した訳詞家です。東京音楽学校(現・東京芸大)選科で声楽を研究し、ドイツ近代歌曲に訳詞をつけて日本に紹介しました。ほかにも『ローレライ』『久しき昔』などいまも歌い継がれる多くの名訳を残しています。
       * * *
 筆者が育った九州の野ばらは白く小さな花でしたので、子どもの頃はヨーロッパの紅の野ばらを見てみたいと憧れたものでした。若い頃に歌った歌は忘れられません。

梶川 咸子(かじかわみなこ)
医師、医学博士。
医療法人翠清会介護老人保健施設ひばり施設長。
日本臨床内科学会、日本老年医学会会員。

サクセスフルエイジングへと導く50の答え

 

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