特集

年を重ね経験を積んだ今だからこそできる自分を輝かせる生き方⑥

多彩な生物を育む東京・高尾山を中心に、森林インストラクターとして活躍する小川和恵さんは、自然の大切さを伝えることで自らの存在意義を大いに感じています。

Chapter 06 自然と生きる喜びをたくさんの人に伝えたい

自然に対する熱き想い

 森林インストラクターの小川和恵さんは「森の案内人」として、東京・高尾山をガイドしたり、近くを流れる川での渓流遊びを指導したりしています。
 小・中・高校の課外授業や、自治体が企画する親子イベントなど、小川さんに案内を依頼する団体はさまざまです。
 森の中を丁寧に説明しながら、植物や虫といった生き物と共存することの大切さ、森の果たす役割、林業の必要性などを伝えています。その真剣な訴えは、多くの人の共感を呼んでいます。
 例えば小学生の課外授業の場合、スタートは朝7時半、山の中を歩き回って解散するのは15時と、なかなかハードな活動です。それでも「子どもたちの純粋な眼差しと、『こんな生き物、初めて見た!』といった感激の声が、何よりの原動力」と小川さんは言います。
 今でこそ慣れたものの、森林インストラクターになったばかりの頃は緊張から伝えたいことの3割くらいしか話せないこともあったそうです。しかし、たどたどしくても内から涌き出る言葉で話すことで、森や自然に対する熱い想いが伝わったのでしょう。同年代の方たちを案内した時は「小川さんは本当に自然が大好きなんですね」と言われるほどだったそうです。
 実際に小川さんの自然への想いは深く、「毎年ここで咲いているはずのトチバニンジンが今年は見当たらない」など、高尾山の植物のことを熟知しているのには驚きです。

ある後悔がきっかけで森林インストラクターに

 千葉県銚子生まれの小川さんは緑豊かな環境で育ち、幼い頃から植物が大好きでした。
 学校を卒業後は経理の仕事に就き、60歳まで経理畑一筋で歩んできました。その傍ら約40年にわたり、華道と茶道を日曜のカルチャーセンターで教えていました。いずれも「大師範」の有資格者です。
 定年退職後は自然と関わる仕事に就きました。そして今から7〜8年前のある日、きれいな桃の木が倒れているのを見掛けます。気にはなったものの行動を起こせず、桃の木はそのまま枯れてしまいました。それから小川さんには後悔の念が残り続けます。「あの時、行政に掛け合って植え直しをお願いしていれば、あの時行動していれば、桃の木は救えたはず」と。
 これが大きなきっかけとなり、小川さんは森林インストラクターの資格取得をめざします。
 以前は国家資格だった森林インストラクターですが、現在は一般社団法人 全国森林レクリエーション協会の管か ん轄かつです。5年の間に4科目合格すれば、資格を取得できます。小川さんは3年かけて67歳の時に森林インストラクターの資格を取得しました。

人や自然と関われることが何よりの生きがい

 小川さんが所属している森林インストラクター 東京会(以下、FIT)の活動は森の案内だけにとどまらず、登山道のゴミ拾い「高尾山GREEN CLEAN作戦」を行ったり、日比谷公園みどりフェスタでクラフト制作のブースを出店したりと実に多彩です。活動は多岐にわたりますが、FITから発表される活動の中で興味があるものに立候補し、空きがあれば従事できると言います。
 以前は、駅の階段を上ると息が切れていたそうですが、森林インストラクターになってからはそうしたこともなく、体力がついたことを実感するそうです。
 一方で、現在70歳という年齢から、いずれは山歩きが難しくなることも冷静に見据えています。
 今後の目標について小川さんは「草木染めや炭焼きなど、ゆくゆくはFITの別の活動にシフトして、月に何度か山に出られるといいですね。そして、後押ししてくれる家族への感謝を忘れずにいたいと思います」と話します。
 週に4回、子どもからシニアまでたくさんの人たちと関わりながら、大好きな自然を縦横無尽に歩き回る小川さんの瞳は、イキイキと輝いています。


http://www.forest-tokyo.org/

 

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