特集

人生100年時代を心豊かに生きるミニマリズムのススメ

かつては長生きすることが幸せで、モノを保有することが豊かさの象徴という時代もありました。
しかし人生100年時代が到来し、私たちの生き方にも変化が求められています。人生100年をいきいきと生きるためには?一緒に探っていきましょう。

時代に合わせて生き方も変化

 戦後、高度成長期から大量消費時代に入った日本では、人々の価値観が変化し、モノやお金へのこだわりが強くなりました。人生50年といわれた寿命は医療技術などの進歩により、いまや100年を見据える時代に突入しています。
「人生100年時代」という言葉を提唱したロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授は著書『ライフ・シフト』の中で、「長寿化は、社会に一大革命をもたらすと言っても過言ではない」「最も大きく変わることが求められるのは個人だ。あなたが何歳だろうと、いますぐ新しい行動に踏み出し、長寿化時代への適応を始める必要がある」と述べています。
 しかし問題は、多くのことが変化しつつあるため従来の生き方の常識が通用しなくなってきていることです。長寿化時代に適応するために、私たちは何を手掛かりに生きれば良いのでしょうか。

人生100年時代とミニマリズム

「必要以上のモノを握りしめるたびに、ぼくたちは自由を奪われていく。必要以上のモノはエネルギーも時間も、すべてを自分から奪っていく――」。ミニマリストの肩書きを持つ佐々木典士さんは、ベストセラー著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』の中でこう述べています。
 2010年の流行語にノミネートされた「断捨離」、そして「ミニマリズム」という2つの言葉は同列に語られることがありますが、佐々木さんは「ミニマリズムはモノを少なくすることが目的ではない。大事なものを見つけるための手段」だと話します。
 変化する時代に流されず、自分にとって大事なものを見極める。それが、いまを生きる私たちに必要なことかもしれません。
 今月は、ミニマルな暮らしの中に、人生100年時代をいきいきと生きるためのヒントを探ります。

大事なモノを見極める ミニマリズムな生き方とは?


身の回りにあるモノを手放したとき、何が変わるのでしょうか。
ミニマリズムな生き方を提唱する佐々木典士さんに、モノを手放すことの利点と極意を伺いました。

●お話を伺った方
佐木 典士(さ々さきふみお)さん
作家、編集者、ミニマリスト。早稲田大学教育学部卒業後、出版社3社を経て独立。2014年クリエイティブディレクターの沼畑直樹氏と共に『Minimal&Ism』を開設。著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は国内16万部突破、22カ国語に翻訳されるベストセラーに。Webマガジン『WANI BOOKOUT』、月刊誌『むすび』にてコラム連載中。

無理にモノを減らす必要はない

 ミニマリストと言うと、一般的に「モノがすごく少ない人」というイメージがあるかもしれませんが、僕が考えるミニマリストは「自分が本当に必要なモノがわかっている人」です。ですから、たとえたくさんのモノに囲まれていても、それが本当に必要なモノで、所有することで活力を感じられるなら、無理にモノを減らす必要はありません。自分にとって大事なモノを見極め、自分の基準で選ぶことができていれば、たとえモノが多くてもミニマリストと言えるのではないでしょうか。
 かつての僕は、大量のモノに囲まれ、どんよりした日々を過ごしていました。掃除をするのも億劫で、時間ができてもやる気が起きず現実逃避ばかり。ところがある時、モノを手放して生活がシンプルになると、身も心も軽くなり、充実感が生まれました。部屋がきちっと片付けられているというだけで、不思議と意欲が湧いてきたのです。モノが溢れていた頃は、いつか使おうと思って買ったさまざまなモノたちを目にするたびに、使えずじまいの自分に苛立ちを感じていました。そこに置かれた「不要なモノ」によって、無意識のうちに負の感情が生まれていたのです。モノを手放す「もったいなさ」よりも、見るたびに「使いこなせていない」という感情が出てくること自体が一番もったいなかったことに、以前の自分は気付いていませんでした。

モノより思い出に投資

 ミニマリストには体を鍛えたり旅に出たりする人が多いようです。なぜかと言えば、おそらく生活がシンプルになることで時間に余裕ができ、意識がより内面に向かっていくからだと思います。ですから何か新しいことをやりたいときは、最初の準備段階としてモノを減らすという行為はお勧めです。
 それは新たな気付きも生みます。例えば本棚を整理すると特定のテーマの書籍だけが残り、「自分はいま、これに興味があるんだ」ということがわかったりしますよね。つまり自分の価値観をはっきりとさせ、いま何をしたいのかがわかることでもあります。
 持っているモノの価値は本人にしかわからないことが多いので、元気なうちに自分で整理することが大事ではないでしょうか。
 思い出を大切にすることと、モノを所有することは別です。モノを手放すことで、人はだんだん「いまこの瞬間」だけが見えてきます。過去に執着してばかりでは新しいことが入ってこなくなるので、「かつて」という執着を手放してみることも必要だと思います。
 また、豊かな個性を作るのはモノではなく経験なので、「モノより思い出に投資する」という発想の転換も必要かもしれません。

佐々木さんが伝授する モノを手放す8つの極意

誰から見ても明らかなゴミというモノから手放す

サイズが合わない服や壊れた家電など、誰が見ても不要と思うようなモノはすぐに手放そう。それだけでもかなりスッキリするはず。

複数あるモノは1つ残せばOK

ハサミやボールペン、マグカップなど、複数あるモノは一気に処分。それによって残ったモノにも愛着が湧くのでは?

1年使わなかったモノはもう使わない

1年使わないモノは翌年も使わない。さらに3年に1度しか使わないキャンプ道具などは、買わずにレンタルで済まそう。

捨てられるか悩んだ時点で手放せる

捨てようかなという感情を一度でも抱いたなら、それはすでにいらないモノ。悩む時間がもったいない。

モノをお金に換算しない

モノは買った瞬間から価値が激減する。購入時の価値に捉われず、サイズの合わない服などは勉強代だと思って潔く手放すべき。

捨てづらいものは写真に撮ってから手放す

旅の記念品など手放すことで思い出までなくなると思う人は、ぜひ写真に残してみて。写真を見ればいつでも立ち返ることができる。

大切なモノは人に渡すという気持ちで売りに出す

ゴミ箱に捨てるのが嫌なら、リサイクルショップなどを活用してみては?誰かが活用してくれると思えば手放しやすい。

モノを収納する棚ごとなくす

収納術を駆使していたら、なくなるモノもなくならない。デッドスペースにモノを詰め込むことはやめて、収納自体を減らしてみよう。

年の功で自分らしく シニアリズムな働き方とは?

ミニマムな暮らしで意欲が湧いてきたら、今だからこそできるシニアのリズムで生活を楽しみましょう。
最近は、仕事に楽しみを見出すシニアも増えています。そこで、シニア就労の実情について、求人情報誌『タウンワーク』を発行する株式会社リクルートジョブズの方に伺いました。

●お話を伺った方
宇佐川 邦子(うさがわくにこ)さん
株式会社リクルートジョブズ
ジョブズリサーチセンター長

仕事を始めるきっかけは健康維持のため

 シニアの方が再び働こうと思うきっかけは、皆さんちょっとしたことのようです。お金のためというよりは、仕事をすることで生活のリズムを整えたい、健康維持のため、といった声が多く聞かれます。そのため若い世代に比べて切迫している感じがなく、皆さん思い思いに働いていらっしゃいます。
 健康維持が目的で仕事をするなら、スポーツジムや地域のサークルに通えばいいと言う方もいらっしゃるかもしれませんが、天候の良し悪しや人付き合いによって、そういった場所にはいつの間にか通わなくなってしまうことも多いですよね。その点、仕事は雨が降ろうが嵐が来ようが行かなくてはいけないので、定期的に体を使うということにとても適しています。
 シニアの仕事は、主に男性であれば警備員やマンションの管理人などの不動産管理、女性は清掃が比較的多く、介護職に就く人も増え始めました。介護職は接する相手と年代が近いので話も合いますし、体の痛みもわかるので良い関係が築けるようです。また最近は、小売店や飲食店で働くシニアも増えてきました。飲食店はもともと洗い物や清掃といったバックヤードの仕事が中心でしたが、最近は接客される方も増えています。10年前に比べて圧倒的にIT技術が進化しているので、以前より楽に働ける環境が整っています。

シニアの持つ強み「年功助力」が魅力

 仕事を探している方は、皆さん現役時代と同じ職種や業種を希望しがちですが、実はやったことのない仕事にこそ、経験や生活の知恵が役に立つことが多くあります。生活の知恵というのは、自分で意識していなくても自然と染み付いているものなので、人生経験 =「年の功」が仕事においても強みになるのです。長年の経験で培ってきた精神と知恵、そして安定感のある対人能力、時間や心の融通などシニアの持つ強みに気付き、『年功助力』を活かす企業も出てきています。
 ですから、仕事をしたくても希望する仕事がなかなかないという方は、培ってきたスキルやスペックを生かそうと最適な求人を待ち続けるよりも、それが見つかるまで短期のバイトを探してみるのも1つの手です。大変そう、難しそうという思い込みは捨てて、ぜひ気軽に働いてみてください。気付けば楽しく通っていたという方も多く、皆さんとても楽しそうです。

仕事は生きがいや健康をもたらしてくれる

 2012年頃から、短時間勤務OKの職場が急増しました。以前は週に1時間の勤務など到底考えられませんでしたが、今では週5回3時間程度、または週3回8時間ずつ働くという主流2パターンに加え、週に数時間の勤務形態も増えています。朝の散歩代わりに働いたり、買い物に便利なエリアを勤務地に選ぶなど、生活の中に仕事を組み込む感覚のようです。大学で授業を選択するように、週に何コマという感覚で気軽に働く。これが今のシニアの働き方です。
 また、金銭的報酬以外の部分で満足するシニアが多く、組織に属して仲間と働く楽しさや、誰かにお礼を言われた時の嬉しい気持ちなどが非金銭的報酬として満足度や生きがいにつながっています。
 時折、働くシニアのご家族が「いい歳をして働かなくてもいいんじゃない」と言ったり、高学歴の方が時給制のバイトをやっていると「なんでそんな仕事をしているの?」と言ったりする場面に遭遇します。けれどシニアが働くということは単にお金が目的ではなく、生きがいや健康をもたらし、皆が笑顔になれることなのです。本人が楽しみながら働いているのであれば、ぜひ否定的に捉えないでいただきたいと思います。
 人生100年と思えば、60歳は再スタートの時期といえるかもしれません。縛られるものが減ってシニアのリズムで暮らせるいまだからこそ、できることはたくさんあるはずです。自分が楽しいと思えるものを見付けて、毎日をいきいきと楽しみましょう。


 

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