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生活習慣の改善で予防したいアルツハイマー型認知症

84歳、現役医師が伝える健康と病気の話、第6回。2025年には65歳以上の約5人に1人が発症するといわれる認知症。
今月は、認知症の原因で最も多い「アルツハイマー型認知症」のお話です。

アルツハイマー型認知症の危険因子

 現在、日本人の多くが「老後に認知症になるのではないか」という不安や恐れを抱えています。
 認知症の原因となる病気はいろいろとありますが、最も多いのが「アルツハイマー型認知症」で、日本人の認知症の約60%を占めています。次いで多いのが「脳血管性認知症」です。認知症を予防するためには、この2つの病気を発症させる「危険因子」を減らすことが大事になります。
 そこで今月は、アルツハイマー型認知症についてお伝えしたいと思います。
 アルツハイマー型認知症の危険因子は、「遺伝因子」と「環境因子」に分けることができます。近年の研究では、遺伝因子よりも環境因子による影響の方が発症に大きく関わっていると考えられています。
 環境的因子として特に注目されているのが、食生活や運動などの「生活習慣」です。

ぎんさんが教えてくれた認知症の予防法

 百歳老人として話題になった「きんさん・ぎんさん」を覚えているでしょうか。ぎんさんが亡くなった後に行われた脳の解剖結果からは、驚くべき事実が明らかになっています。
 ぎんさんの脳には、アルツハイマー型認知症の原因と考えられている「老人斑(βアミロイド)」が多く見つかりましたが、105歳まで認知症を発症しなかったのです。ぎんさんは、なぜ認知症を発症しなかったのでしょうか。
 長生き家系と認知症についての遺伝的関係については明らかではありませんが、ぎんさんの場合、後天的に認知症にならなかった要因がいくつか考えられます。
 ぎんさんの好物は、魚とお茶でした。魚にはコレステロールを減らし脳の炎症を抑えるドコサヘキサエン酸(DHA)が、お茶には活性酸素を除去する働きをもつカテキンが多く含まれています。
 また、テレビ出演など社会的活動のほかに、足腰を鍛える目的で毎日30分の散歩を日課にしていました。これらが認知症防止に寄与したものと考えられています。

20年以上も前から始まっている脳の病変

 ぎんさんの例からもおわかりいただけるように、最近の研究では脳にアルツハイマー型認知症の病変が起こっていても、必ずしも認知症を発症しないことがわかっています。
 アルツハイマー型認知症の病変は、長年にわたって脳の「大脳皮質」や「海馬」とよばれる部位を中心に「アミロイドβタンパク」などの異常タンパクが蓄積することで起こるといわれています。
 脳の病変部位では神経の変性が進み、神経細胞が死滅、神経細胞同士のネットワークが障害されて機能しなくなり、徐々に脳が萎縮していくのです。
 実は、このような病変は認知症と診断される約20年~30年も前から始まっているといわれています。
 しかし脳には、一部の神経細胞が機能しなくなっても周りの神経細胞がその機能を補う「代償機能」が備わっているため、すぐに発症するわけではありません。
 多くの人が日常的に経験する風邪を例にとってみますと、たとえ風邪のウイルスに感染しても、一生懸命仕事に精を出しているときは体の免疫力が高い傾向にあり、風邪の症状が出ないことがあります。それと同じで、脳に病変があったとしても、症状として現れないことがあるのです。つまり脳を活性化させ免疫力を高めておけば、認知症になりにくいと言えるかもしれません。

糖尿病と認知症の深い関係

 脳の免疫力を高めるには、頭をよく使って「認知予備力」(知の貯金)を高く保っておくと、認知症の発症を遅らせる可能性が増すといわれています。また最近では、脳に適度な精神的刺激を与えると、新しい神経細胞が出現するという報告もあります。
 さらに食生活や運動などの生活習慣が脳の健康に大きな影響を及ぼすことは先に述べたとおりですが、特に、食生活や運動などの生活習慣が大きな発症要因の1つとされる「2型糖尿病」は、認知症と深い関連があることがわかっています。
 糖尿病はインスリンというホルモンの分泌が低下したり、インスリンの働きが低下することで血液中の血糖が増える(血糖値が高くなる)病気です。その結果として、脳の血管や神経細胞が傷害されてさまざまな合併症が起こります。
 九州大学が行っている「久山町研究」では、1985年から福岡の人口約8600人の久山町で、40歳以上の住人ほぼ全てを対象に健康管理を追跡しています。この研究によると、高齢で糖尿病がある人では認知症も発症している人が多く、糖尿病のない高齢者に比べると、アルツハイマー型認知症や血管性認知症の発症リスクは2~4倍も高くなることがわかりました。2型糖尿病は、栄養バランスの良い食生活に気を付け、適度な運動で肥満に注意していれば予防できる病気です。それがさらに認知症予防にもつながるのです。
 次回は、「脳血管性認知症」についてお伝えします。

 

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