インタビュー

元関脇・琴錦の朝日山親方

元関脇・琴錦の朝日山親方

輝く人 インタビュー 10月号 Vol.97

没頭できるものがあれば生きがいにつながる
史上ただ一人の平幕優勝2回、速攻相撲で名を馳せた元関脇・琴錦。
現在は朝日山親方として部屋を切り盛りしながら、毒舌の相撲解説でも人気を博しています。現役時代のエピソードや相撲に対する熱い思いについて伺いました。

貧しいからこそ親孝行したかった

先ほどBSフジの『感動!大相撲がっぷり総見』の収録を拝見しましたが、親方の解説は本当にわかりやすいですね。

 解説の仕事は4年半前に始めました。サッカーや野球の解説は予想を立てるけど、相撲は結果論を話すだけで予想は立てないんですよ。だからラジオを聞いて学びました。私は辛口コメントが多いものですから、最初の頃は「偉そうに言い過ぎなんじゃないか」という意見もありましたけど、そこは貫き通しましたよ。かつて引退と同時に、北の富士さんにどう話せば良いのか相談したことがあるんです。そうしたら「お前は優勝もしているし、三役の期間で言ったら歴代1位なんだから、自信を持って思ったことを話せばいい」と。以来、言われた通りに自信を持ってしゃべっています。

現役時代は毎日どんな生活でしたか?

 今の力士と違って稽古、稽古に明け暮れていました。まず起床時間が違う。部屋の人数にもよりますが、いつの時代も60人〜70人いたので4時に起きて4時半から練習。そうしないと全員が練習できないんです。それが終わって食事の準備や後片付け洗濯で、ほぼ遊ぶ時間はなかったかな。それでも、当時は貧しいからこそ何とか親孝行がしたい、という思いが強かった。いま年間50本ほど講演している中で必ず言う言葉は「誰かのためなら頑張れる」。これが「自分がいい車に乗りたいから」なんていう感じでやっていると、甘えが生じますし、挫折します。

16年におよぶ力士生活から引退を決意したきっかけは?

 自分の半年前に若乃花が引退しているんですけど、横綱でも大関でも、辞めたらまず最初にするのが場内警備の仕事なんですね。ある時、警備をしていた若乃花に言われてね。「関取ね、プライドがあるかもしれないけれど、頭で行ってください」と。私は体が小さいから本来は頭でガツンと当たっていかなきゃいけない相撲なのに、引退前は「若手の力士なんかに頭から行けるか」って胸から行っていた。でも、相手は倒してやろうという気持ちで向かってくるでしょ。こっちは守りだから、「こんなもんには負けないわ」と思いながらも体力的には負けてしまう。結局、何場所やろうとプライドが捨て切れず、胸から行っては負けて。惨(みじ)めな相撲を取り続けるのもいかがなものかと引退を決意しました。

切符売り場のおかげで人生が変わった

現役引退後は、2年間の場内警備を経て、切符売り場に配属されたそうですね。

 切符売り場には9年間通いましたよ。電話を受けたり計算したり、チケットを発送したり。サラリーマンと一緒で興行がない日も通わなきゃいけない。先輩の親方が2人いて、最初の頃はいろいろと教えてくれるんだけど、「ああそうですか」なんて従うタイプじゃないでしょ。お客さんともよくトラブルを起こしてね。そうしたら、自分のせいで上司が謝ってるんですよ。その姿を見て「変わらなきゃ」と思いました。そうしたら今度は、ただ話がしたいだけで電話をくれるお客さんが出てきてね。あの売り場に入ったおかげで、人生が変わりました。

相撲人生を振り返っていかがですか?

 いろんな人に助けられてきた人生かな。現役時代は師匠以外からも的確なアドバイスをもらってね。井筒部屋の逆鉾(さかほこ)さんには、「身長を伸ばすことはできないから、肩幅を広くしろ」と言われて肩幅を広げるトレーニングを教わって、中に小さく入って大きく広がるという相撲が身につきました。どこに力を入れて構えればパーっと前に出られるかという力の出し方を教わったのは、若貴のお父さんの初代貴ノ花。稽古の質や稽古量は千代の富士から教わりました。引退後も同じでね、親方になるには年寄名跡(としよりめいせき)というものが必要なんですが、私はなかなか取れずに10年以上苦労したんです。でもいろいろな人の助けがあって運良く朝日山という名跡が襲名でき、部屋まで持つことができた。貧乏部屋であっぷあっぷだけど、これも人に支えられて何とかね。今は自分の息子を含めて7人の力士が頑張っ
ています。

人生100年と考えると、親方はちょうど折り返し時点になります。これからの人生、どう生きたいですか?

 辞めた力士に唐揚げ屋や焼き鳥屋を任せているんですが、これをどんどん展開していきたいですね。あとは、趣味でもいいから必ず何か目標を持たなきゃいけないと思っています。私は大関取りに3回挑戦しましたが、全て若貴に潰されて断念。それからは攻めの相撲から守りの相撲になり、不思議と書く字まで変わりました。目標を失ってからはサインの文字が丸くなり、力がなくなった。人間は何かしら没頭できる目標があれば、それが生きがいにつながると信じています。

朝日山親方 (あさひやまおやかた)
1968年生まれ。元関脇・琴錦(本名:松澤英行)。中学時代は柔道部に所属し、ロサンゼルス五輪金メダリストの山下泰裕からもスカウトの声が掛かり高校進学が決まりかけていたが、佐渡ヶ嶽親方の再三に渡る勧誘により入門を決意。1984年佐渡ケ嶽部屋入門、初土俵。
1987年2代目琴錦を名乗る。1989年入幕。現役時代は速攻のF1相撲と称され、史上ただ1人の平幕優勝2回を記録した。2000年に引退。2016年に尾車部屋から独立し、千葉県鎌ケ谷市に朝日山部屋を再興した。現在はBSフジの『感動!大相撲がっぷり総見』で解説も行う。

 

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