コラム

サクセスフル・エイジングへの道④

サクセスフル・エイジング

❹パニックとは病気であり、予防が大切

私たちの脳は、旅をすることで活性化します。美しい景色を観たり、異国の言葉を耳にしたり、ときには道に迷ったり……そして、団体旅行の気軽さには落とし穴がありました。

「迷」の一字

 5月の連休に妻と共に西安と敦煌へ出掛けました。中国もこの時期は労働節ということで連休になります。当地でもゴールデンウィークと言うそうで、観光地はどこも人でいっぱいでした。話をしなければ、日中韓どこの旅行者かわかりません。
 西安についた翌日、現地でJTBが編成した35人のにわか団体で兵馬俑坑の(へいばようこう)見学に行きました。ガイドはこの日初めて会う現地の男性です。なかなか日本語が上手で、兵馬俑坑発見のいきさつなど、現地に着くまでにユーモアたっぷりに説明してくれました。ここは西安観光の目玉ですから、大変な人出です。次は、少しドライブをして、玄宗(げんそう)皇帝と楊貴妃(ようきひ)の愛のすみかとして有名な華清池(かせいち)に行きました。ここも、温泉のある人気の観光地だそうで、バス用の駐車場もいっぱいです。ガイドが小さな白い三角のJTBの旗をかざし、一団は並んで歩いていきます。
 楊貴妃の湯舟の遺跡で一時自由行動となり、その後、また並んで出発。ところが、途中の掲示板にここを訪れた貴賓の写真がずらりと掲示されていて、その中に、なつかしや、竹下元総理と海部元総理の写真もあり、筆者と妻はつい立ち止まってしばらく眺めてしまいました。ふと気付くと、人波の中に、JTBの三角旗とどこかの黄色い三角旗に導かれた二つの団体がかなり先に見えます。慌てて追いかけましたが、道が二つに分かれているところで白いJTBの旗が見えなくなってしまいました。黄色い旗のほうを追いかけていくと、ゲートを出てしまいました。こちらは中国人の団体のようです。「皆もうバスに乗ったのかな」。さらに慌ててバスの駐車場まで行くと、バスの台数がさらに増えており、自分たちのバスがどんなだったのか、うろ覚えの私たちにそれを見つけるのは不可能な状態になっていました。そのあたりを一周して、また華清池のゲートに戻ってみましたが、白い旗も、それらしい団体も、見覚えのあるガイドの姿も見えません。
 妻と2人、交代でバス駐車場とゲートを伺度も往復するうちにだんだんと不安になってきました。日程を書いたメモはバスに残してきてしまったし、団体名やガイドの名前、もっと恐ろしいことに、昨夜泊まったホテルの名さえ覚えていません。ゲートの係員は、日本語はおろか、英語も解さず、妻の顔は不安で引きつっています。
 ゲートの横に詰所のような建物があり、私はおずおずと入っていきました。休憩室なのか、デスクに3、4人の若い男性がいます。「英語を話せますか」と英語で聞いてみましたが、皆、ニヤニヤ笑うばかりです。私は身振りで、何か書く様子をしてみせました。一人がデスクの上のチラシ風の紙をり、自分たちのバスがどんなだったのか、うろ覚えの私たちにそれを見つけるのは不可能な状態になっていました。そのあたりを一周して、また華清池のゲートに戻ってみましたが、白い旗も、それらしい団体も、見覚えのあるガイドの姿も見えません。
 妻と2人、交代でバス駐車場とゲートを伺度も往復するうちにだんだんと不安になってきました。日程を書いたメモはバスに残してきてしまったし、団体名やガイドの名前、もっと恐ろしいことに、昨夜泊まったホテルの名さえ覚えていません。ゲートの係員は、日本語はおろか、英語も解さず、妻の顔は不安で引きつっています。
 ゲートの横に詰所のような建物があり、私はおずおずと入っていきました。休憩室なのか、デスクに3、4人の若い男性がいます。「英語を話せますか」と英語で聞いてみましたが、皆、ニヤニヤ笑うばかりです。私は身振りで、何か書く様子をしてみせました。一人がデスクの上のチラシ風の紙を裏返して、鉛筆も添えてくれました。私はここに大きく「迷」と書きました。すると、男たちが「おー」と歓声を上げ、手を叩き、笑い出しながら何か話しかけてきました。
 それから、一人が私を案内して、男性の警官に引き合わせました。しかし、この警官も、英語はさっぱりダメ。男たちの一人が大声で誰かを呼ぶと、今度は女性が来ました。「May I help you?」少しはなじみの英語です。私は迷子になったいきさつを簡単に(簡単にしか言えないのですが)
話し、JTBの団体だったと言うと、それを聞きつけた警官が「JTB!」と声を上げ、さらに大きな声でまた誰かを呼びました。
 すると、どこからか若い女性が現れました。なんと彼女は、白いJTBの旗を持っているではありませんか。彼女はメモ帳を出して、「かじかわさん?」と確かめるように尋ねてきました。そのとき、全身の力が抜けるようで、笑いが込み上げてきました。彼女は携帯を取り出し、連絡をとっています。
 やがて、ゲートに私たちのガイドが現れ、少しは見覚えのある団体客も一緒で、皆さん口々に「よかった、よかった」と言うのでした。実は、なんと!トイレ休憩のため私たちとは違う道に行ったということでした。
 漢字の国でよかった。日本から西安まで4時間、上海までなら2時間足らず。こんなに近いのに、六十余年、中国語とは無縁に暮らしていました。まったく残念です。
 ここに、団体旅行の気軽さに基づく落とし穴があります。
 パニックとは病気であり、予防が大切であることを、身をもって感じたのでした。
 でも、一字だけで、状況を説明でき、理解してもらえた、漢字とは本当に素晴らしい言葉だと思いました。
 日本に帰った後、知り合いの中国人留学生に尋ねたところ、「迷」と書いたのは正解とのことで、「迷子になる」は「迷ミ ールー路」で、「迷子になった」は「迷ミ ールーロ路了」と書くそうです。
 ただし、「迷」はたまたま正解だっただけで、日本と中国では異なる意味になる漢字もあります。

梶川 博(かじかわひろし)
医師、医学博士。
医療法人翠清会 梶川病院 会長。
日本脳神経外科学会 認定専門医。

サクセスフルエイジングへと導く50の答え

 

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