特集

年を重ね経験を積んだ今だからこそできる自分を輝かせる生き方④

自分を輝かせる生き方

65歳以上の6人に1人が一人暮らしをする時代。石原郁子さんが東京・三鷹で「おでん屋えがお」を始めたのは、「一人の食事はわびしい」という同世代の言葉がきっかけでした。自分の好きな料理を通じて笑顔を届ける石原さんに、一歩前に進む秘訣を伺いました。

Chapter 04 一人暮らしの同世代に元気を!という使命感に駆られて

67歳でオープン心強い家族の協力

 カウンター9席というアットホームな空間で、体にやさしいほっこりおでんを提供している「おでん屋えがお」。野菜はサイドメニューを含め国産だけというこだわりを貫く一方、価格はできるだけリーズナブルに抑えているのが魅力です。
 一番の人気メニューは「寄り道セット」。卵・大根・ちくわ・がんもどきの4品にビールがついて1000円とお得です。
 店のオーナーは石原郁子さん。2014年5月、67歳のときにオープンしました。当初は一人で切り盛りしていましたが、料理の提供やお客さんとの会話に熱中するあまり、会計が疎(おろそ)かに。それを見かねた旦那さんが店を手伝ってくれるようになりました。旦那さんは出版社に勤めていますが、毎日出社する必要がないため、皿洗いやレジ、掃除などでバックアップしています。
 店のロゴはデザイナーである娘さんが担当。家族の協力を得ながら作り上げた店は、温かな雰囲気に満ちています。

体にやさしい料理でみんなを笑顔に

 石原さんは大学を卒業後、メーカーに3年勤務。結婚して2人の娘さんに恵まれてからは、10年間専業主婦として子育てに励みました。育児がひと段落すると、団地の子育て施設で保育士の助手を数年務め、その後は旦那さんの影響を受けてフリーペーパーのライターに。7年間、取材や執筆に明け暮れました。
 好奇心旺盛な石原さんは、45歳から八王子市の市役所職員組合の事務局で働くことになりました。そこで60歳の定年を迎えますが、まだまだ働きたいと、今度は社会福祉協議会が運営する「老人憩の家」に勤務します。そこで目の当たりにしたのは、おにぎりだけでご飯を済ませる人や、「一人の食事はわびしい」とこぼす人が多いという現実でした。
 料理が好きだったこともあり、「同世代の人たちが気軽に立ち寄れて、体にやさしい家庭料理が提供できるお店を持ちたい!」と思うようになります。なかでも、おでんは温かい上に消化もよく、出汁さえしっかり取っていればおいしく仕上がる。そう考えて、おでん屋をすることに決めました。
 老人憩の家で65歳の定年を迎えようとするなか、三鷹商工会に行き、出店について相談。すると、あるNPO法人が運営する「身の丈起業塾」を紹介されました。これまで飲食店を経験したことはなかったため、「店舗を経営するとは」といった商売の基礎から補助金の申請まで、教わる全てが新鮮でした。
 肝心の物件はなかなか決まりませんでしたが、「階段を使わなくてすむ1階」「駅からも自宅からも近い」「家賃10万円以内」という希望を周囲に伝えておいたところ、理想の物件情報をキャッチします。書店が店じまいをするため空くとのことでした。補助金の申請に間に合うよう、閉店時期を早めてもらえないかと自ら書店に交渉。1年の準備期間を経てオープンにこぎ着けました。

できることをできるうちに楽しむ

 おでん屋を始めて感じるのは、人に恵まれているということ。「店に立ったばかりのころは、お客さんと話さなくてはと緊張していましたが、そんな心配は無用でした。皆さんいい方ばかりで、一人で来られた方でも自然と会話が弾んでいます」。楽しい場を提供できているのは、石原さんの人柄あってのことかもしれません。
 仕入れや新メニューのことなどを朝から晩まで考えながらお店を切り盛りし、帰宅するのは毎日午前様。それでも料理が好きなこと、そして素敵な人たちに囲まれていることが、大きな原動力になっていると言います。
 オープン当初は営業期限を5年と決めていましたが、すでに丸4年が経過。今後できるだけ長く店を続け、もっともっと女性客を増やすのが目標です。
 気晴らしは、8年通っているカルチャースクールでカンツォーネを歌うこと。また現在は、石原さん自身がいろいろな学びを得た「身の丈起業塾」で、講師として年2回登壇。「何かを始めるのに遅過ぎることはありません。好きなことを身の丈で行えば、十分にやっていけるはず」と、自らの経験をもとに呼びかけます。できることを、できるうちに楽しむ。それが石原さん流の生き方です。

【問】おでん屋えがお
 東京都三鷹市上連雀1-1-5  080-5687-1419

 

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