インタビュー

舞台役者 梅沢富美男さん

梅沢富美男さん

輝く人 インタビュー 9月号 Vol.96

自分が生きたい人生を生きればいい
歯に衣着せぬ豪快な物言いが視聴者の共感をよび、「昭和のジジィ」としてあらゆる世代に愛される存在の梅沢富美男さん。そのルーツを探るとともに、自らが座長を務める「梅沢劇団」と、舞台役者という仕事に寄せる思いを伺いました。

不遇の少年時代に生きる強さを学んだ

幼少期はどんなお子さまでしたか?

 ひと言でいえば「天才」じゃないですか。両親共に役者の家庭に生まれ、演劇がすごく身近にあったわけですが、1歳そこそこで、舞台袖で音楽に合わせて上手に踊っていたようですからね。その姿を見た母が、「この子は演劇をやるために生まれてきたんだ!」と確信したそうですよ。そして、あまりにのみ込みがいいので、手取り足取り教える必要もないまま、わずか1歳7ヵ月で舞台デビューを果たしました。そういう意味で、小さなころは舞台一色の生活。常に劇団のお弟子さんたちに囲まれていたので、同世代の子どもたちとワイワイ遊んだ記憶は一切ありません。また早い時期から、彼らが文字やら数字やらを教えてくれたので、小学校に上がったときには漢字も書けるし、かけ算もできた。つまり、勉強の面でも頭2つくらい抜きんでた天才だったわけです(笑)。

しかし、小学生のころはかなりご苦労されたと聞いています。

 そうなんです。小学3年生のころ、テレビや映画の普及で娯楽が多様化し始めると、劇団運営が一気に苦しくなりましてね。両親共に役者という私の家庭は、貧乏のどん底に突き落とされました。生活していくことで精一杯で、学費も給食費も払えない。教科書もなければノートも買えない状況の中、小学4年生のときには自ら新聞配達(夕刊)のアルバイトをして、必死に家計を助けました。周りからは「貧乏人」と言ってからかわれるので、だんだんと学校にも行かなくなったかな。いま思い出しても、楽しいことなんて1つもない。まさに暗黒の時代ですよ。でも、あの経験があるからこそ、逆境にめげない、強く生きる術が学べたのだと思っています。

つらい中でも、ずっと役者を夢見ていたのですか?

 とんでもない。そもそも親父の教育方針で、義務教育である小・中学校時代は舞台から離れていましたしね。その間に、思わぬ苦労に見舞われて、役者を軽蔑するようになっていました。役者なんかやっているからこんなに苦労するんだってね。ところが、「蛙の子は蛙」。中学を卒業したあとは自然と、また舞台の世界に舞い戻っていきました。

誰もが楽しめる舞台づくりを目指す

役者だけでなく、歌手、コメンテーター、料理家……とマルチに活躍されています。

 そりゃあ、天才ですから!……というのは冗談として、全ては演じることの延長にあるんじゃないですか。役者とは、いわば総合芸術です。だから何でもできなきゃ、真の役者とはいえないと思いますね。幸いなことに、その点で私は才能に恵まれていたので、その才能を生かして結果を出すことが私の責任かなと。わかりやすくいえば、劇場の客席を一杯にして、観客の皆さんに楽しんでもらえる舞台を提供する、そのために、日々邁進(まいしん)しているわけです。面白いかどうか、その作品の価値は観客が決めてくれます。その1つの指標となるのが集客率でしょうね。全ては競争社会ですから、他の劇場より集客できれば私の勝ち!それが役者の勲章だと思って頑張っているんです。

そんな梅沢劇団の魅力を教えてください。

 大衆演劇ですから、老若男女問わず多くの人に楽しんでもらいたい、その思いを込めて舞台づくりに取り組んでいます。かつて父親が座長を務めていた時代は、七五調の歌舞伎に近い台詞回しが主流でした。『夢芝居』などの演歌の歌詞も同様ですが、七五調のリズムは日本人の耳に心地よく響くので、観客にウケていたんでしょうね。でも、いまは違う。30代、40代の方にも受け入れてもらうには、その世代に合う波長に変え、日々進化していく必要があるんです。そして、作品はわかりやすくてユーモアたっぷり。オリジナルだけでなく、歌舞伎の人気演目のパロディなどもあって、観に来てくださった方に満足していただける内容になっています。

読者にメッセージをお願いします。

 私はいま67歳。世間一般でいう「シニア」世代ですよ。じゃあ、シニアって何ですか?年齢でひとくくりにされていますが、そんな概念にとらわれる必要は全くないと思いますね。すべきことはただ1つ。自分が生きたい人生を生きればいいんですよ。働きたいと思うのなら働けばいい、遊びたいと思うなら遊べばいいじゃないですか。私は、役者でありたいと思うから、これからもずっと役者を続けていきます。東京オリンピックのときには70歳になっていますが、おそらく、いまと同じことを考え、舞台に立ち続けているんじゃないかな。

梅沢富美男 (うめざわとみお)
1950年11月9日生まれ。福島県福島市出身。兄が座長を務める「梅沢劇団」で役者を務め、1975年に女形に転身。その美しさが一躍話題となり、「下町の玉三郎」とよばれた。1982年にはデビューシングル『夢芝居』が大ヒットし、翌年の「第34回NHK紅白歌合戦」に初出場を果たす。近年は、「梅沢劇団」3代目座長を務める傍ら、ドラマや映画に出演したり、テレビのコメンテーターを務めたりとマルチな才能を発揮し、さまざまなジャンルで活躍している。

 

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