コラム

日本最高齢・97歳現役ピアニストの心豊かに暮らす習慣

心豊かに 暮らす習慣

人生は「目の前の一歩」の積み重ねでできている― 毎日、続ける。
続けた先には、幸せが待っています。

「もう年だから」という〝暗示〟を自分にかけない

 人に年齢を尋ねるのは失礼なこととされています。
 私は、自分が尋ねられることに抵抗はありませんが、それでもやはり、あえて年齢をお聞きするのはあまりいいことではないと思っています。
 それは、マナーや礼儀という意味でのことではありません。「おいくつですか?」「○歳です」
 こんなやりとりによって、聞かれたほうは自分の年齢を再確認することになります。
 同時に、「『もうそんな年なのに』と思われているんじゃないかしら」などと、ネガティブな方向で自分の年齢を客観視してしまうこともあると思います。
「自分は○歳なんだ」と年齢のもつネガティブな意味を噛(か)み締(し)めてしまう。そんな望ましくない〝暗示〟のきっかけになるような気がするから、わざわざ年齢を尋ねるなんてしなくてもいいんじゃないの? と私は思っています。
 私は年齢の数字は意識していません。「年齢というものを自分の体の中から追い払っている」といってもいいくらいです。「もう○歳なんだから」、分別があってあたりまえ。「もう○歳なんだから」、新しいことを始めるなんて無理。そんなふうに暗示をかけて、自分がやりたいと思うことにブレーキをかけるようなことはしたくないからです。それよりも、「今日、このとき」の貴重な経験を、どんどん自分の中に取り込んでいくことに専心してきました。そうして少しずつ獲得してきたものを使い合わせることによって、初めて出せる音、表現できる音楽というものがあります。
 これまで何度となく、ピアノを通してそれを実感してきました。今の私は「この年だから」手にしているものがあり、これまではできなかったことができる。その喜びを知っているから、若いときに戻りたいとは思いません。ピアノに限らず、新しい趣味や習い事でも、年齢を理由にやりたいことに背を向ける必要はないと思います。むしろその年齢が、やりたいことをするうえでプラスに作用することもあるのです。
 ところで、私がリサイタルで「子どものころ、初めて演奏会をしたときは、『その年でよくやった』といわれたものですが、最近では、別の意味で同じことをいわれます」というお話をすると、客席からどっと笑いが起きます。これは、私の年齢だからこそ成り立つ定番ジョークです。

おしゃれのコツは「無理をしない」こと

「もう年だから」と身だしなみにかまわなくなるのは、寂しいことです。投げやりにならず、とはいえ頑張りすぎず、この年齢なりに美しくいられたらと思っています。
 おしゃれをするにも、ある程度の気力と体力が必要なので、いつでも頭の先からつま先までバッチリ整えておくというわけにはいきません。
 余裕のないときでも「ここだけは」というポイントを押さえておけば、それだけでぐっと華やかな印象になります。
 まずは髪型。年齢とともに髪のボリュームが減ってくるので、ブローでふんわりとボリュームアップさせます。とはいえ、自分ではあまり上手にできないので、人と会う用事があるときなどは、なるべく美容室でブローしてもらっています。
 そんな手間をかけられないときに活躍してくれるのが、帽子という名の「髪隠し」。たとえ寝起きで髪がぺちゃんこでも、おしゃれな帽子をかぶれば、それだけでお出掛けOKになります。夏ならつばの広い麦わら帽子、冬はニット帽やカシミアの帽子、それからベレー帽と、いろいろなスタイルを楽しんでいます。夏なら日よけ、冬なら防寒という実用面でも、帽子は欠かせません。メイクは家から出るときは必ずします。ポイントは「目」です。何もしないとぼんやりした印象の目元になってしまうので、アイラインは必ず入れます。アイラインを入れるだけで、〝目ヂカラ〟が強まり、顔の印象がだいぶ変わります。
 ふだんの洋服は、どちらかというと「派手」といえるくらい、華やかな色のものを着るようにしています。昔から好きなのは赤です。
 私の場合、流行を追って新しいものをどんどん買うということはなく、上質なもの、気に入ったものを長く、大切に着ています。何十年にもわたって着ているものも少なくありません。
 ちなみに、リサイタルで着るイブニングドレスは、お客様にお届けする演奏を包む「パッケージ」のようなものなので、賛沢で本格的なものを選ぶようにしています。ごてごてと派手なものではなく、シンプルでも素材や仕立てのいいものです。最近は、華やかに光る素材のドレスを選ぶことも多くなりました。
 見た目に関して、老いに抗(あらが)いたいとは思いません。でも、全くありのままでいいともいえません。
 手をかけられるところは手をかけて、「『人間の顔をしているうちに』この世を去りたいなあ」と思ってはいますが……。

室井摩耶子(むろい・まやこ)
1921(大正10)年、東京生まれ。41年、東京音楽学校(現・東京藝術大学)を首席で卒業し、研究科に進む。45年、日本交響楽団(現・NHK交響楽団)ソリストとしてデビュー。56年、「モーツァルト生誕200年記念祭」の日本代表としてウィーンへ。同年、ベルリン音楽大学に留学。以後は海外を拠点に演奏活動。64年にはドイツで出版された『世界150人のピアニスト』に選ばれる。82年に帰国。現役最高齢ピアニストとして活躍し、多くのメディアに取り上げられている。

 

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