健康・お金・生活

成功加齢のためのQ&A⑨サクセスフル・ エイジングへの道

サクセスフル・エイジングへの道

高齢医師(83歳)の立場から、シニアが元気で幸せに生きていくための心構えを、12回にわたってお伝えしていきます。
老化と仲良く上手に付き合いながら、一緒にサクセスフル・エイジングを実現させましょう。

老化は闘う相手ではない

 日本は超高齢社会となり、高齢の方からは「老後の準備をしてこなかった」「今後どのように過ごせばよいか」などの言葉をよく聞きます。これからのシニアは、いろいろな問題や悩みをかかえて生きていくことになりますが、問題解決のためには、自分自身が何とかして一歩でも前へ踏み出すことが大切です。アンチエイジング(抗加齢)に惹かれる人も多いのですが、老化をアンチと捉えて闘う必要はありません。老化と仲良く上手に付き合いながら、自分の持つ能力をフルに発揮すれば、いくつであっても「サクセスフル・エイジング」は可能なのです。
 サクセスフル・エイジングとは、1987年に米国の老年医学者ら(※)が提唱した言葉・考え方で「成功加齢」「幸せな老後」を意味します。
 これまで老化には遺伝が大きく関係しており、人ごとに起こり方が違うと考えられてきました。しかし近年、老年学の学際的研究が進み、老化の差には遺伝的因子よりも外的因子が大きく影響することがわかっています。
 外的因子で大切なことは、「適度な運動」と「食事を中心とする生活習慣」です。これらが老化と仲良く上手に付き合って行くための要となります。
 近年、日本人の長寿化により増えているのが認知症です。厚生労働省が昨年発表した「国民生活基礎調査」によれば、介護が必要となった主な原因の1位は「認知症」です。認知症の人は、2025年には700万人を超えるとも推計されています。これは65歳以上の5人に1人の割合です。しかし認知症もまた、生活習慣の改善で予防できることがわかっています。

(※)老年医学者のJohn W. Rowe, MDと社会心理学者のRobert L. Kahn, PhD

脳トレに最適な料理

 「男子厨房に入らず」という言葉は、「男子は女子のするような卑しいことをしてはならない」という昔の男尊女卑の名残かもしれません。共働き夫婦の多い現代では、男性も台所仕事に積極的に関わるようになり、この言葉は死語となりました。
 これまでに料理を作ったことがない男性高齢者が料理を作らねばならないような立場になったり、趣味として料理を作りたいと思うようになったりしたとき、抵抗なく調理を学ぶには料理教室に通うのが早道です。
 男子専門料理教室では、女性の目を気にせずに、男同士でサークルのように気軽に料理を習うことができます。レッスンはちょっとしたイベントに参加するような感覚で楽しめるそうです。参加者に共通しているのは、ほとんど包丁を持ったことがないことで、ゼロからスタートすると聞きます。他の参加者とクラスを通じて結束を強め、旧来の友人のようになることもあるようです。
 高齢者男性が調理を学ぶと、栄養バランスの整った食事ができるようになることも、大きなメリットだと考えられます。料理と食事は、人生を豊かに生きるためにとても大事なことです。自分の食べる物を自らきっちりと作って食べることは、低栄養の解消にもつながります。
 また、料理を作ることは恰好の「脳トレ」となって認知症の予防にも大いに役立ちます。料理には、食材選びや調味料の組み合わせなど、さまざまな手順や段取り、作業が必要ですので、その過程には脳(前頭前野など)を刺激したり体を動かしたりと、認知症予防に最適な要素がたくさん含まれています。料理を食欲を満たすためだけのもの、栄養摂取の手段と考えないで、想像力を働かせて楽しんでみましょう。試行錯誤しながら料理を作ると、いろいろな発見があるものです。
 食事と栄養については、国の方針の中に介護予防として取り組むべきだとの記述があるにもかかわらず、介護予防のサービスとして定着していません。
 この点に着目し、例えば高知県のNPO法人「食と健康を学ぶ会」では、2012年の発足当初から食事と健康の問題を活動の1つの柱として位置づけています。「リハビリキッチン」というフレーズのもと、食事づくりにみんなで一緒に取り組み、楽しく食べることで地域づくり、健康づくりに取り組んでいます。
 高齢者を支えるこのような地域活動を通じて、それぞれがバランスの良い食事習慣や認知症予防など健康への意識を高め、ぜひともサクセスフル・エイジングを実現させたいものです。

 

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