インタビュー

俳優 柄本明さん

俳優 柄本明さん

輝く人 インタビュー 1月号 Vol.88

芝居をやるということがうまく水に合ったんだろうね

シリアスからコミカルまで幅広い役を演じ、演劇界において独特の存在感を放つ俳優の柄本明さん。
40年以上続く劇団東京乾電池の主宰者でもある柄本さんに、役者になる以前のお話からご家族のことまでを伺いました。

人間が人間を観るって本当に恐ろしいこと

小学生の頃から映画が好きだったそうですね。

 家庭環境ですね。親父とお袋が映画や芝居の話しかしないような家でね。終戦間近のことですけど、ものすごい貧乏だったから、日本人はみんなアメリカ映画を観て生活の豊かさに圧倒されて打ちのめされた。いくら貧乏でも、芸術がどうこうって話をしていると浮世を忘れられるじゃないですか。

芝居を始めたきっかけは?

俳優 柄本明さん あの頃はちょうど学生運動が起きて社会がガチャガチャしている時代で、芝居の世界ではアングラ演劇というものが生まれた。そこから状況劇場なんかの劇団ができて、要するにカッコよく見えたんだよ。子どもの頃って何もわかっちゃいないのに、何かをやりたいとかこれになりたいって言うでしょ。俺も最初はそんな感じで劇団に入って、続けていたらおかげさまで運良く仕事になった。やっぱりどこか芝居をやるってことが、うまく水に合ったんだろうね。だけど、人間が人間を観るって本当に恐ろしいことだよ。ましてや、あんなところ(舞台)でやっているわけだからね。

年明けにはベルギーの天才振付家シディ・ラルビ・シェルカウイさんが演出と振付を手掛ける舞台『プルートゥ』が控えています。出演を決めた一番の理由は?

 異国の方と一緒にやることに興味があってね。人間は人それぞれ皆違うから、もちろん誰とやっても同じなんてことはあり得ないけど、今回に関しては演出が外国の方というのが大きかったですね。この作品はどちらかと言えばパフォーマンス中心だから、その中で芝居をさせていただくというのはある意味楽ですよ。パフォーマンスをやる人は大変ですから。それに比べたら私なんてね。皆さんが動いているのを見ていると、ご苦労さまだなと申し訳ない気持ちになったりしますよ(笑)。

自分のことでいっぱいでもそれでいいんじゃない

柄本家は、奥さまの角替和枝さんと2人の息子さんも俳優という役者一家ですが、自然の流れ?

 しょうがないでしょ。しょうがないって嫌な意味で使っているわけじゃなくて、家庭環境がね。それよりほかない。お袋が生きていた頃は、うちの子どもたちがお袋のところに行くといつも映画を観ていて。フレッド・アステアっていう20世紀最高のダンサーがいるんだけど、彼の映画なんかは小学校の時に全部観ちゃってるからね。それがすごいとかすごくないとかじゃなくて、そういう家庭環境だからしょうがないのよ。うちは夫婦で劇団もやってるでしょ。「門前の小僧習わぬ経を読む」じゃないけど、そりゃあ周りがこんなことをやってるんだもの。そうなっちゃうよ。息子たちは、最初はうちのマネージャーがオーディションに出したいと言って。それが通ってたまたま仕事になった。だから「お父さん、俳優になります!」みたいな面倒臭いことは一切なかったですね(笑)。

読者に向けて、定年後を楽しく生きるコツなど、何かメッセージをいただけますか?

 人に偉そうなことなんて1つも言えないよ(笑)。人にああした方がいい、こうした方がいいって言える言葉なんて何も持ってないし、自分のことでいっぱいだもの。でも多分、それでいいんじゃないかな。自分のことを精一杯やる。自分自身の健康面で言えば、歩く時は少し意識して速く歩いてみようとか、稽古場まで自転車に乗って行こうとか、そういうことはやっていますよ。長年続けていることと言えば、カミさんと一緒になってからは毎朝一緒にお茶を飲みに行くこと。この習慣は続けていますね。

素敵ですね!

 そう言いたいわな(笑)。でもまぁ悪いことじゃないと思います。なかには、「えっ?毎朝カミさんと一緒?何話すんだよ、気持ち悪いじゃないか」って言う、意地の悪い連中もいますよ。そりゃあ俺もそう思わないことはない(笑)。いつも犬を連れているからオープンカフェの外の席に座っているんだけど、通りかかる人が「あ、また今日もいる」なんて話しててね。雨がザンザン降ってる日でも変わらずいつもの席に座っていると、「あ、また今日もいる」ってね。どういう夫婦なんだと。つまり夫婦というものに対する感じ方は人それぞれだからね。だから単純に「素敵だ」って言葉でくくられるようなものじゃないと思うけどね。
俺は根が意地悪なのかね(笑)。

柄本 明 (えもと・あきら)
1948年生まれ。高校卒業後、商社に就職。自由劇場を経て、1976年に劇団東京乾電池を結成し、座長を務める。
1998年『カンゾー先生』にて第22 回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。以降、数多くの映画に出演し、さまざまな賞を受賞。映画のみならず舞台やテレビドラマにも多数出演し、2011年には紫綬褒章を受章している。2018 年1月に行われる舞台『プルートゥ』では、アトムの生みの親・天馬博士を演じる。

手塚治虫生誕90周年記念 鉄腕アトム 「地上最大のロボット」

 

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