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お口のお手入れが脳の健康を守る歯周病の予防・治療と認知症

歯を失う大きな原因である歯周病。しかし歯周病の怖さは、口腔内への影響だけではありません。認知症の発症リスクまで上昇させることがわかっているのです。
今月は、歯周病と認知症の関係についてお伝えします。

たった1つの食べかすが引き起こす歯周病

 お口の中には約800種類もの細菌が生息しています。普段はおとなしくしている細菌たちですが、ブラッシングが行き届かず歯と歯ぐきの境目などに食べかすが残っていたりすると、そこに多くの細菌が集まってプラークを形成し、歯ぐきが赤みを帯びて炎症を起こします。これが歯周病のはじまりです。歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性の病気なのです。 
 プラークが形成されると、粘着性が強いため不適切なブラッシングやうがいでは取れなくなります。しかも1㎎のプラークの中には約10億個の細菌が含まれているといわれています。たった1つの食べかすが、大事な歯の寿命を縮めてしまうかもしれないのです。

歯周病の治療が認知症を予防・抑制する

 歯周病が歯を失う大きな原因になることは知られていますが、歯周病の怖さは口腔内への影響だけではなく、糖尿病などの生活習慣病や、認知症の発症リスクまで上昇させてしまうことです。
 台湾の研究チームは、歯周病を治療することが認知症の予防・抑制につながる可能性があると発表しています。
 また、名古屋市立大学大学院・道川誠教授の研究チームは、歯周病治療はアルツハイマー型認知症の予防と抑制に効果的、という研究結果を発表しています。
 アルツハイマー型認知症で亡くなられた方を調べたところ、歯周病菌の一種であり極悪御三家とよばれる「ポルフィロモナス・ジンジバリス」(以下p・g)という細菌が出す毒素を多く持っていたことがわかったのです。
 さらに、p・gの毒素を注入したマウスでは、脳の「海馬」という部位の病変面積が、歯周病のないマウスと比べて2倍以上だったことも報告されています。
 海馬は、アルツハイマー型認知症で最初に病変が起こる部位といわれています。
 実際に、私が往診した患者さんを見ていると、口腔ケアの良し悪しが認知症の進行具合に影響しているように見受けられます。
 認知症の予防と抑制に、口腔ケアは欠かせない治療法の1つであることを実感します。
 歯周病菌は全ての人が持っている細菌で、歯ぐきの血管を通して全身へと運ばれていきます。
 わずかな炎症であっても毎日続けば、その炎症反応は脳をはじめ全身へと広がっていくのです。

味覚の感度を上げると認知症の進行抑制に

 口腔ケアで重要なことは、歯を支える歯周組織だけではなく、舌・粘膜などの周囲組織も清潔にすることです。
 高齢になってくると、味を感じる「味蕾(みらい)」細胞の感度が落ちる傾向にあります。
 その原因は、高齢による体力の低下や栄養不良、薬の副作用などにより、味蕾細胞の修復能力が低下するためと考えられます。
 味蕾細胞は普段の食事で壊されては修復を繰り返し、健康な人であれば通常10日間ほどで再生しますが、高齢になると、さまざまな要因により修復能力が落ちてきます。味蕾細胞の修復が追い付かなくなると、味を感じにくくなってきますが、これを手助けするのが口腔ケアです。修復能力が落ちた味蕾細胞をきれいにしてあげるだけで、味覚の感度を良くすることができるのです。
 味蕾細胞は、舌の先端・縁・奥、上あご後方の中心に存在しています。これらの部分をきれいにすることが、味覚の感度を上げる手助けになります。
 味覚は脳神経が司っているので、味の感度を上げることは脳への良い刺激となり、認知症の進行を抑制する1つの手段にもなります。
 味覚の異変は自分自身ではなかなか気付きにくいものです。身内の方で、味を感じづらく濃い味を好むようになった方がいらっしゃいましたら、ぜひ主治医・歯科医師にご相談ください。

佐藤 美嘉(さとうみか)
医療法人社団高輪会 歯科医師
医療法人社団高輪会(いりょうほうじんしゃだんたかなわかい)
故深井眞樹(歯学博士)により昭和54年に日本歯科医療教育発祥の地、東京都港区は高輪に第一号の診療所を開院、昭和62年7月に医療法人社団高輪会設立。平成5年訪問部門を立ち上げ、日本で初めて組織的に歯科訪問診療を開始。訪問歯科診療のパイオニアとして、日々変化し続ける歯科医療現場において、最新の技術・知識を持てるよう教育に力を入れ、北海道から九州まで診療所を展開。理事長 相浦洲吉

 

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