健康・お金・生活

介護施設の経営者からみた新制度の誤算

社会にすっかり定着した介護保険制度ですが、日本の超高齢化のスピードに制度が追い付かない事態が続いています。
今月は、介護の現場から聞こえてきた制度の問題点をお伝えしたいと思います。

超高齢化に対応するための制度の見直し

 現在600万人を越える方々が認定を受けている介護保険制度。2000年に始まったこの制度は今や社会に定着し、なくてはならない制度になっています。  
 介護保険制度は、40歳以上の国民が納める介護保険料、税金、サービスを利用した際に生じる1割(または2割)の負担金で成り立っています。
 これら収入の中から、デイサービスやショートステイ、ヘルパー、福祉用具、特養や老健などの各施設が利用者に提供したサービスの内容に応じて9割(または8割)の介護給付が支出されています。
 しかし超高齢社会に突入している日本では介護の必要な人が年々増加しており、現状の介護保険制度が追い付かなくなっています。そこで制度を維持するために3年に1度、制度全体の見直しが行われています。
 見直しのたびに、収入面では介護保険料や利用者の負担割合が変更され、支出面では、事業者への介護給付を削減する改正が行われてきました。
 しかし8年後には団塊の世代が75歳を迎えて後期高齢者となり、介護が必要な人のさらなる増加が予測されています。これに対応するには今後ますます、制度の見直しや工夫が必要になってくるに違いありません。

人材を確保するための新制度

84_seikatu01-1 制度が見直される中、平成27年度から始まった制度に「介護職員の処遇改善加算」があります。 
 介護職員の賃金の低さは、以前から問題になっていました。昼夜を問わない過酷な労働にもかかわらず、他の産業と比較すると低賃金の介護職は、今のままではますます人手が足りなくなってしまいます。
 実際に、職員が確保できないために入所を希望する待機者が何百人といるにもかかわらず、空室のある施設もあります。
 こうした問題を解決するために考え出された「介護職員の処遇改善加算」ですが、ある施設の経営者からは「この制度、使いにくくて困っている」という声が聞かれます。

「介護職員の処遇改善加算」新改制の誤算とは?

84_seikatu01-2 介護施設は、施設を作って介護職員の確保ができれば運営できるかといえば、そうではありません。
 介護職員の他に、看護師や栄養士、介護支援専門員、相談員、事務員などが必要ですが、「介護職員処遇改善加算」が適用されるのは介護職員への支払いのみと限定されており、他の職員には振り分けができない制度になっています。
 経営者からすれば、第一線の介護職員に手厚く配分するのは良いとしても、全体のバランスを考えながら他の職員にも配分したいところです。
 この経営者は「この制度をそのまま適用すれば、他の職種から給料が上がる介護職員になりたいという者が間違いなく出てくる。優秀な介護職員だからと相談員に格上げしようとしても断られてしまう」と嘆いていました。
 地域貢献の一助になればと介護事業を10年前に始めたこの方は、これまで行われてきた制度見直しによる介護給付削減により多くの中小事業者が悲鳴を上げる中、自分の報酬はほとんど「0」にして、休みもほとんど取らずに必死に経営されてきたそうです。
 その方が「こんな制度ならない方がいい」とまで言うこの「介護職員処遇改善加算」。
 介護保険制度の見直しがされるたびに、もっと現場の実態をよく見て、サービスを利用する側も提供する側も安心して使える実効性のある制度にできないものかと感じます。

斉藤豊男さん斎藤 豊男(さいとうとよお)
株式会社けんこうぷらん 代表取締役
福祉用具専門相談員 
福祉住環境コーディネーター

 

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