特集

今すぐ実践!夏の脱水から体を守る

汗をかく夏場は、体からたくさんの水分が失われます。
特に体内の水分量の割合が低下しているシニア世代は、「かくれ脱水」の危険度が高くなっています。
今月は、脱水に関する正しい知識と予防・対処法を特集します。

体の半分は「水分」

 私たちの体は、半分以上が水分(体液)でできています。しかし加齢とともに体の水分量は減り、赤ちゃんの時は体の約80%もあった水分量は、成人では約60%、65歳以上になると約50%にまで低下するといわれています。
 体液は主に水と塩分(電解質)からなり、栄養素・酸素・老廃物の出し入れや体温調節を行っています。そのため体液が失われると全身に栄養が行き渡らず、老廃物が蓄積され、やがて脱水状態に陥ってしまいます。特に「若い頃より食事量が減った」「夏場で食欲が落ちた」という人は、食事から摂取する水と塩分の量も低下しているため注意が必要です。
 何より脱水が怖いのは熱中症の原因になるだけではなく、脳をはじめ体の臓器にまでダメージがおよんでしまうことです。
 今月は、暑い夏を健康に乗り切るための脱水予防を紹介します。

シニアが脱水症になりやすい6つの理由

人は加齢に伴い脱水症に陥りやすくなります。それはなぜでしょうか。脱水が起こるメカニズムを解説します。

83_tokushu-12特に、食中毒などで下痢や嘔吐(おうと)が起こって大量に体液が失われた場合、脱水症を引き起こしやすくなります。この時、水分とともに塩分やカリウムなどの電解質も排出されている状態ですが、私たちの体は、体液中の電解質の濃度を一定に保とうとする働きがあるため、減った電解質に濃度を合わせようと、水分も尿として排出してしまいます。その結果、脱水を促進させることになるのです。

理由1 体液を貯めるタンクが少ない

83_tokushu-6活動量の低下や加齢により、筋肉量が低下するシニア世代。筋肉は、体の中で最も多く体液を含む場所です。筋肉量の減少は、体液の減少に直結し、脱水症のリスクを高めます。

理由2 のどの渇きを感じにくい

83_tokushu-8のどの渇きを感じる「口渇中枢(こうかつちゅうすう)」の機能は、加齢とともに低下します。体液が減ってものどの渇きを自覚しにくくなり、水分補給が遅れがちになります。

理由3 肝臓の機能が衰える

83_tokushu-11体液の喪失を防ぐには、腎臓で水や電解質を再吸収する必要があります。ところが加齢とともに腎機能が低下すると、水や電解質を吸収できずに脱水のリスクが高まります。

理由4 食事量の不足

83_tokushu-7私たちは食べ物からも1日1000㎖ほどの水と塩分(電解質)を摂取しています。加齢で食が細くなったり、食べ物を飲み込む嚥下(えんげ)機能が低下すると、全体的な食事量が減って水と電解質が不足しやすくなります。

理由5 トイレの回数を減らしたくて水分を控える

83_tokushu-9加齢により利尿を妨げる働きをする「抗利尿ホルモン」の反応が低下すると、トイレの回数が増えてきます。頻繁にトイレに行くのが嫌で水分補給を控えてしまうと、脱水症に陥りやすくなります。

理由6 利尿作用のある薬による影響

83_tokushu-10高血圧や心不全を患う人の割合が高くなってくるシニア世代。高血圧や心不全の治療薬は、利尿作用効果があるものも少なくありません。尿の量が増えると、体液を失いやすくなります。

教えてドクター!なぜ怖い?脱水その予防法は?

脱水を侮ると命にかかわる危険な病気になることも。そこで脱水の予防・対処法について、済生会横浜市東部病院周術期支援センター長 兼 栄養部 部長・谷口英喜先生に伺いました。

●教えていただいた先生 谷口英喜(たにぐちひでき)先生
谷口英喜先生麻酔科医師。済生会横浜市東部病院周術期支援センター長 兼 栄養部 部長。1991年、福島県立医科大学医学部卒業。著書に『熱中症、脱水症に役立つ経口補水療法ハンドブック 改訂版』『イラストでやさしく解説!「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本』など。専門医らで作る「教えて!かくれ脱水委員会」副委員長。

脱水は脳梗塞まで引き起こす

脱水では体にどんな異変が起きるのですか。

83_tokushu-13 脱水が原因で起こる病気は多く、また反対に、病気の初期症状として脱水が起きることもあります。特に体液が多い脳、消化器、筋肉の3カ所に異変が出やすくなります。脳の場合、集中力や記憶力の低下のほか、睡眠リズムが狂うことも。ひどくなると、めまいや立ちくらみ、頭痛、吐き気、けいれんが起こったり、意識がなくなったりすることもあります。脱水による症状で最もひどいものは、脳梗塞(のうこうそく)です。体液不足によって血液がドロドロになることが発症の大きな原因となります。次に多いのが消化器で、皆さん最初は胃腸の不調を訴えられます。食欲低下から始まり、下痢や便秘、ひどいときには吐き気や吸収不良を起こしたりします。いつもよりだるいなと感じたら、それは脱水のサインかもしれません。脱水では体全体の免疫力が落ちるため、ウイルスや細菌に感染しやすくなるのです。筋肉の異変に関しては、足がつったり力が入らなかったり、ひどくなると筋肉痛のような痛みを伴うこともあります。また脱水症になると、痛みの感じ方が敏感になるため、もともと関節やひざが痛かった人は、さらに痛みが増すということもあります。それ以外にも、脱水時は尿量が減って濃縮されるため、膀胱炎や尿路結石など、泌尿器にさまざまな障害が発生することもあります。かゆみや皮膚の疾患も、シニアの場合は原因の1つに脱水があることを知っておきましょう。

シニア世代で脱水の特徴はありますか?

 ご高齢の方は屋外より屋内で脱水症になるケースが多く、家の中で普通に生活していても起こります。体に占める体液の割合が低下しているシニア世代は、それほど暑くなくても日常的に「かくれ脱水」状態になりやすく、脱水症状が進行しやすいのです。特に認知機能が低下している方は、温度に対しても感度が落ちており、暑さに鈍感になりがちです。周りが「暑い」と言っていたら暑さを意識し、「温度が感じにくい」ことを自覚するように心掛けましょう。脱水症では、幻覚を見るなどの「せん妾(もう)」を起こすこともあります。それが認知機能の悪化につながることもあるので気を付けてください。ベッドに西日が当たらないように移動したり、ベランダに日よけを付けたりするなど、一年を通じて脱水予防対策を行いましょう。

脱水には「経口補水液」

脱水になったらどのように対処すれば良いのでしょうか。

83_tokushu-14 脱水になったときは水を取るのも大事ですが、取りすぎると体の中の電解質が薄まって意識がもうろうとしたり、けいれんや不整脈が起きたりするので、「水と電解質を一緒に取る」ことが重要です。それには水と電解質をバランス良く含み、速やかに体内に吸収できる「経口補水液」がお勧めです。経口補水液はドラッグストアなどで販売しているため、日頃からすぐに飲めるように常備しておくと良いでしょう。少し具合が悪い程度では「病院に行かない」という方もいると思いますが、その段階で経口補水液を飲んでおけば、万が一ひどくなって点滴を受けても回復力が格段に違います。また、脱水症状が進むと水分が飲めなくなってしまうので、飲む力があるうちに水分補給することが大切です。ただし、体液の量はある程度決まっているため、一定量を超えると尿として排出されます。500㎖ほど飲んで満たされたら、あとは少しずつ補うように飲んでいってください。最近はゼリータイプも出ているので、水ではお腹いっぱいになってしまう方や、トイレが近くなるからと水分補給を控えたい方はこちらがお勧めです。

水分補給以外で脱水を防ぐ方法はありますか?

 よく食べることです。夏場は水分を多く含む夏野菜を中心に食べると、ミネラル補給になります。私たちの体は寝ている間にも水分が失われ、朝は脱水状態になっています。そのため、朝食で水と電解質を取ることが大切です。日中は時間を決めてこまめに水分補給し、就寝前もコップ1杯の水を飲みましょう。

脱水について、改めてアドバイスをお願いします。

 「自分は脱水や熱中症にはかからない」と思っている方が大半かもしれませんが、脱水はいつでも誰でもどこでもかかる症状で、「本人が気付いていないだけ」というケースがほとんどです。下記に、自分でかくれ脱水をチェックできるシートを紹介します。たとえ元気な60代でも、体内の水分量が若い頃と同じという人はいません。脱水を意識することは、体のさまざまな異変に気付くことにもつながります。ぜひ参考にして健康増進に役立ててください。

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