インタビュー

女優 岸本加世子さん

輝く人 インタビュー 7月号 Vol.82

「たくましき楽観主義」母の言葉と共に歩んだ女優人生

多くの映画やドラマに出演し、日本アカデミー賞など数々の賞に輝く女優の岸本加世子さん。
40年におよぶ女優人生の軌跡と、最新作「いつまた、君と ~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~」について伺いました。

数字の「1」は「5」になる可能性を引き出す母の教え

デビューのキッカケは西城秀樹さんだったそうですね。

 高校1年の時、新御三家が全盛でした。西城秀樹さんの大ファンだった私は、学校を早退して横浜で開かれたコンサートに行ったんです。当時は会場で大きなボンボンを振るファンが多く、それが邪魔で西城さんが見えないことに腹を立てて「見えねーよ」と怒鳴ったんです(笑)。すると、腕章をしたスタッフに声を掛けられました。「怒られる!」と思ったら、それはなんと西城さんの事務所のマネージャーさんでした。いわゆるスカウトだったんです。

その頃から芸能界への興味はあったのですか?

輝く人 岸本加世子さん

 全然。なぜなら、小学校の学芸会で演じた役がずっとトラウマになっていて。今でも忘れない、「あ!ハト便よ。ハト便」という一言のセリフが何度練習しても皆から「土瓶に聞こえる」って(笑)。だから人前に出る芸能界なんてあり得ませんでした。
 でも、そのマネージャーさんは3カ月も家に通い続けてくれたんです。すると母が、「こんなに熱心に誘ってくれているんだから、勉強もしないで中途半端なことをしているくらいだったら行って来い!」と私の背中を押してくれました。そしてマネージャーさんに「娘はすぐ根を上げて続かないと思います。それでも良ければどうぞ連れて行ってください」と頭を下げてくれました。
 母はとにかく楽観的な人で、「自分の可能性を信じろ」と子どもの頃から教えられました。小学校で通信簿の成績が悪くウジウジしていると、「見てなさい」とゴム印で押された1の数字が並ぶ通信簿を広げて、「いいか?1は5になる!」と言って、ボールペンで1を5に書き換えたんです。1と2だらけの通信簿は、新学期に先生に返す時には3と5だけになっていました(笑)。

17歳で役者として歌手として何にも負けない強さは母譲り

デビュー作がTBS水曜劇場のドラマ「ムー」でした。

「時間ですよ」や「寺内貫太郎一家」を生み出した演出家の久世光彦さんをはじめ、伊東四朗さんや樹木希林さんなどすごい方たちに囲まれて、とにかく必死でした。久世監督は鬼軍曹のようで、演技指導では「帰れ!」「辞めちまえ!」と常に怒鳴られ、愛用の缶入りタバコが容赦なく飛んできました。
でも、それだけ厳しくされると共演者の皆さんが、厳しく薫陶(くんとう)を受けている新人の私を励ましてくださり、可愛がってくださいました。
今になってみれば、新人に対する久世さんなりの親心だったのだと気付きます。

同時に歌手としてもデビューしました。

 歌はド下手だったのに、当時は新人が演技と共に歌うことが通例でした。キャンペーンで全国を回る時、新人なので1コーラスしか歌わせてもらえません。だから私は持ち歌なのに、1番の歌詞しか覚えていませんでした。するとある日、地方公演でフルコーラス歌うことを求められてしまい、困った私は1番だけを3回続けて歌い切ったのです。周囲からは「なんて図太い新人だ」と呆れられました(笑)。母の好きだった言葉は「たくましき楽観主義」で、何事にも負けない強さは母から教えられた気がします。

お母様の存在は大きいですね。

 美空ひばりさんが亡くなった年、TBSドラマ「美空ひばり物語」に主役で抜擢されました。母は「お前に務まるわけがない」と言いながらも、喜んでくれました。その直後、母が倒れ危篤状態になってしまいました。全国民に愛される大スターを演じるプレッシャーに押し潰されそうな中、ひばりさんのご家族をはじめ皆さんに支えられて、なんとか無事に演じきることができました。私にとっては忘れられない作品です。でも結局、母には見てもらえませんでした。

今回の出演作「いつまた、君と ~何日君再来~」でも、母親との関係が描かれています。

 俳優の向井理さんの祖母である芦村朋子さんの半生を描いた作品で、戦後の混乱期に明るく健気に生きた家族の物語です。朋子の夫役の向井理さんが企画段階から携わっています。私が演じるのは朋子の娘・真美で、あることがキッカケで母親とのわだかまりを長年抱え続ける役です。母を大切に思うからこそ、誤解や不安を抱く真美の思いが痛いほどわかりました。

映画のコンセプトは「笑顔の力で生きていける」。明るく生きる人生の秘訣はありますか?

 尾野真千子さん演じる若き日の芦村朋子は、貧しくとも常に明るく夫を支え、子どもたちに愛情を注ぎます。今の私が在るのは、貧しい中でもたくましく私を育ててくれた母の強さのおかげです。女優として40年。一時は老いに抗あらがおうとした時期もありましたが、今はありのままで良い、という考えに到達しました。ただ、女優業は体力勝負なので1年前からボクシングを始め健康維持に努めています。今の自分のままで。これこそ、楽観主義の母の教えの賜物です。

岸本 加世子 (きしもとかよこ)
1960年12月29日生まれ。静岡県出身。
1977年にドラマ「ムー」(TBS)で女優デビュー。『HANA‐BI』(98/北野武監督)で日本アカデミー賞・優秀主演女優賞、『菊次郎の夏』(99/北野武監督)で同・最優秀助演女優賞など数々の賞を獲得している。
近年の出演作には『おしん』(13/冨樫森監督)、『先生と迷い猫』(15/深川栄洋監督)、ドラマ「ドS 刑事」(15/NTV)、「遺産争族」(15/EX)、「がっぱ先生!」(16 /NTV)、「トットてれび」(16/NHK)などがある。

いつまた、君と ~何日君再来~

 

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