インタビュー

料理研究家 浜内千波さん

輝く人 インタビュー 5月号 Vol.80

食卓につけば安心感に包まれる家庭料理にはそんな力があります。

「料理は、もっともっと夢のある楽しいもの」をモットーに料理教室を主宰し、料理研究家としてテレビ番組や講演会、雑誌、書籍など幅広い分野で活躍中の浜内千波さん。
料理の世界へと導かれたきっかけ、そして、料理を通して伝えたい想いを伺いました。

家庭料理は相手を思い「こころ」を込めて作るもの

料理の道をめざしたきっかけを教えてください。

 私には「○○になりたい!」という夢とか目標がありませんでした。だから進路を考えた時「将来、結婚して子どもを産んで、家族に喜ばれるような料理を作れたらいいかな」と、とりあえず栄養士になるための学校に進んだのです。
そして、卒業後は一般企業のOLになりました。そこから少しずつ考え方が変わっていったんですね。女性が自立するためには、何か手に職をつけておくべきだという思いが芽生えて、3年後、料理の世界に入る決心をしました。岡松喜与子先生のもとで3年間料理の技術を学び、独立。自らクッキングスクールを開校するに至ったわけです。

先生が教えてくださる料理はどれも本当に素敵です。

 相手の健康、相手の笑顔を思って料理を作り、感謝しながらいただく。これが家庭料理の一番素晴らしいところだと思うんですね。だから高級な食材を使うとか、高度なテクニックを駆使するとか、そういうことではなくて、「こころ」で作ることを知ってほしいなと思います。疲れて帰ってきた時、お母さんの手料理を口にしてホッとする、皆さんもそんな経験をしたことがあるでしょう。ご主人やお子さまは、外でいろいろなストレスにさらされて帰ってくるじゃないですか。まず「ただいま」「お帰り」というやり取りがあって、そして食卓につけば安心感に包まれる。家庭料理には、そんな不思議な力がありますね。

それは、先生ご自身の経験に基づくものでしょうか。

浜内千波さん
 もちろんです。実家は小さな会社を営んでおり、両親共にいつも忙しくしていました。でも母は、どんなに疲れていても手料理を欠かさない人でしたね。そして、誕生日や運動会、ひな祭りやクリスマスなど、イベントにはいつもご馳走が並びました。料理は食べたらなくなってしまいますが、そこには母の大きな愛情が詰まっていたので、温かな思い出、感謝の気持ちとして、深く心に刻まれました。そして、そんな母の姿を見て育った私たち兄弟5人は、よく子ども会議を開いて、忙しく働く両親の代わりに何ができるか話し合っていました。末っ子で幼かった私も、自分にできることはないか一生懸命考えていましたよ。「早起きは三文の徳!」「働かざる者食うべからず!」と、私たちに復唱させるほど厳しい父の教えもあり、「家族は助け合うべき」という精神が自然と根付いていた気がします。とにかく当時の私は、台所に立つ母が大好きで、いつも横に寄り添っていました。その頃から、この道に向かって歩き始めていたのかもしれませんね。

「モアベター」の精神で人生を積み重ねていきたい

プライベートで夢中になっていることはありますか?

 夢中になるというとちょっと違うかもしれませんが、身の回りの整理整頓、家の中の掃除は四六時中やっています。台所はゴミひとつなく、シンクの水滴も全て拭き取るくらい徹底していますよ。家の顔である玄関も欠かさず掃いて拭き掃除をしています。隅々まできれいにしておくと、出掛ける時も帰ってきた時も気持ちがいいじゃないですか。家族のためにも心地良い家にしたいと思いますしね。私自身のことをいえば、掃除によって仕事のパフォーマンスも良くなると感じています。それだけではありません。掃除って結構な重労働でしょう。四つん這いになってせっせと床磨きすることは、とても良い運動になります。普段、体を動かす時間がなかなかとれないので、まさに一石二鳥ですよね。

読者の方にメッセージをお願いします。

 私はよく「モアベター」という言葉を使います。人生は、今日が100点満点ではないですよね。何かやったら必ず感じることがあるので、その思いをもって行動すれば、さらに良い方向へとつながっていきます。それが人生を積み重ねる一番の基本かな、と。だから常に「モアベター」を考え、自分のため、家族のため、社会のために行動したいですね。家庭料理の大切さを唱えているのもそのひとつです。母から教えられたことを、次の世代へと伝えていくのは、とても大切な仕事ではないでしょうか。だからこそ、経験豊かなシニア世代には立ち上がってほしい。隠居しておとなしく過ごすのではなく、もっともっと前に出ていきましょうよ。その結果、子どもや孫の世代には厳しすぎる指摘となって嫌われてしまうこともあるかもしれません。でもそれは愛情あってのこと。本望じゃないですか。

浜内 千波 (はまうちちなみ)
1955年徳島県海部郡出身。大阪成蹊女子短期大学栄養科卒業後、岡松料理研究所へ入所。
1980年に東京都中野にクッキングスクールを開校、1990年には株式会社ファミリークッキングスクールに組織を改め社長に就任する。2006年にキッチン用品「Chinami」のブランド設立。
現在は、テレビ番組や料理ビデオへの出演、講演会、雑誌や書籍の執筆活動、さらには食品メーカーやコンビニの商品開発など活躍の場を広げている。

浜内千波さん書籍紹介

 

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