コラム

【新連載】モノとこころの整理術 老いへの「ケジメ」

モタさんの言葉①

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その時々の役割を果たしながら、誰かの何かの役に立っていられればいい。
それが生きる「ケジメ」である。(本文より)

人生後半を生きる楽しい「ケジメ」

世の中から忘れられていくというのは寂しいことである。人間が社会的な生き物なら、それは、自分を忘れていくということにもなりかねない。つまり、ボケである。あるいは、うつを生じることもある。
 ボケたり、うつを生じたりしないためには、いつも社会とつながっておくことが大切だ。仕事をしないことで社会とつながれないとすれば、無料奉仕でもつながっておくようにしたほうがいい。これは自分のためである。
 誰かの何かの役に立つ行為が、純粋な形で自分の役にも立つというのが、ボランティアではないのか。まさしく、情けは人のためならず、である。(~中略)
 私はボランティアというのは、人間関係が広がっていく性質を備えていると思っている。善意の輪というのは、広がるようにできているものなのだ。
 こういう生きがいを見つけておけば、人生の後半生を生きる上での楽しい「ケジメ」となるだろう。

一人ではないという気持ちを育てる

ある郊外の街での話である。
 障害者施設を建てる計画が持ち上がった。そのためにはわずかに残っている自然を壊さなければならない。住民からは反対運動が持ち上がった。「残された自然を壊すな」という主張なのだが、もともとその街は自然を破壊してでき上がった新興住宅街だ。自分たちのための破壊は許して、施設をつくるための破壊は許さないというのは「住民エゴ」でないかという批判もあった。
 障害者のいる家は、どこでも必死である。そこに建たなければ、遠くの施設までいかなければならない。
 住民の中には、施設ができると環境が悪くなるとか、地価が下がるという理屈にもならない理屈をいう人もいたそうだ。
 そこで、以前、施設建設に反対し、しかし施設ができ上がった街に、話を聞きにいくことになった。
 施設をつくった街での反応が、私には素晴らしいものに映った。
 最初は反対したけれども、自分たちの近くに障害者がくることで、彼らと間近に接し、また手伝いをすることが増えた。そのことで、住民の中に隣人への温かい感情が生まれ、近所の人との交流も増えたというのである。
 人を助けるという体験、弱者と共存する体験が、自分さえよければいいという現代人特有の固いエゴを溶かしたのである。
 年を経たらボランティアを目指すというのは、きれいごとをいっているわけではない。今まで、自分を中心にしてしか考えてこなかった生き方を変えるのである。
 自分中心であれば、自分の死はとてもこわい。一人で立ち向かわなければならないからである。
 しかし、隣人とか多くの人との温かい交流が生まれれば、自分は一人ではないという感情も芽生える。一人ではないという気持ちは死に際しても、強い感情となる。
 ボランティアとは、つまるところエゴを減らしていくということだ。
 そしてエゴが減る分、生きるのが楽になる。生きるのが楽になれば、死ぬことも少し楽になる。
 この世に感動する思い出を残していこうと思ったら、自分中心を少し引っ込めて、他人中心のことをやればよい。とても気持ちいい思い出となるはずだ。それに、これは何歳でもできる。
 年を取ったら何もできないし、邪魔になるだけという「認識不足」も、その中で解消していくはずである。
 私は年を取るほど、いろいろなことが自由にできると信じている。若い頃のほうが、仕事や子育てなど、しなければならないことがたくさんある、不自由な生活を強いられているのである。
 そんなものから解放されたときこそ、自分らしさを自由に発揮して、世の中と関わりを持てるはずなのだ。
 大切なことは、ボランティアは自分のためにするということだ。
 だから、何か自分にできることはないかと探さなければ、なかなか見つからない。場合によっては自分から売り込んでいく必要もある。
 誰かが自分を必要としてくれるだろうと待っているだけでは、世間から取り残されていってしまう。できることをやらせてくださいと扉を押してみるかどうかで、世間はがらっと変わってくる。
 やるべきことをしようと思ったら、自ら動き出す必要がある。仕事もボランティアもこの面ではまったく同じだ。

老いへのケジメ

斎藤 茂太(さいとうしげた)
精神科医・医学博士。「人生は悠々と、急がずあせらず」をモットーに、おだやかな人柄で知られ、「モタさん」の愛称で親しまれている。2006年11月逝去。著書多数。

 

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