特集

健康寿命をのばすウォーキングの法則!

科学的根拠により明らかにされた効果的な歩き方があった!

ウオーキングが健康に良いことは多くの人が知るところです。
具体的には、動脈硬化やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病にはじまり、骨粗しょう症や筋減少、うつ病や認知症といった脳の病気を予防する効果まであることがわかっています。しかし手軽にできる運動である一方、間違ったやり方をすれば体を壊すこともあります。
どのような歩き方で、1日どのくらい歩けば、より効果が上がるのか。今月は、ひとつの町で15年間にわたり行われた調査をもとに明らかとなった、健康維持に最も適した歩き方の法則を特集します。

1日1万歩は間違い!ウオーキングの新常識

私たちの頭に自然と刷り込まれている「1日1万歩」という常識。歩数計でこの数字をなんとなく目標にウオーキングしている人もいるでしょう。しかし、これは誤った認識。今、ウオーキングの新常識が注目されています。

青栁 幸利 先生●お話を伺った方 青栁 幸利(あおやぎゆきとし)先生
東京都健康長寿医療センター研究所 運動科学研究室長
高齢者の運動処方ガイドラインの作成に関する研究に従事し、国家的・国際的プロジェクトに主要メンバーとして携わる。研究結果をもとにした青栁式健康法が、多くの自治体などに導入されている。著書に『やってはいけないウォーキング』(SB 新書)など。

シニアの場合、男性でも7000歩が目標

国は健康のために歩くことを推奨し、厚生労働省が推進する運動「健康日本21」の中で、平成34年までにシニア男性(65歳以上)の目標歩数を7000歩、シニア女性で6000歩と定めています。
この数字を見る限り「1日1万歩」は必要ないことがわかります。
では実際に健康を保つためには、1日どのくらい歩けばいいのでしょうか。

健康寿命のカギは歩く「質」と「量」

1日8000歩中強度の運動20分東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利先生は、「健康寿命をのばすのは、1日の総歩数と速歩きといった中強度の運動を組み合わせた「1日8000歩・中強度の運動20分」のウオーキングスタイルだ」と提唱します。
2014年に厚生労働省が行った調査によれば、日本人の「平均寿命」は男性が80・21歳、女性が86・61歳で、世界的に見ても長くなっています。一方、健康で活動的に暮らせる「健康寿命」はというと、図のように平均寿命と大きな開きがあるのが現状です。
いつまでも健康に過ごしたいと思い「1日1万歩」「ウオーキングさえしていれば大丈夫」という従来の歩き方は効果があるどころか、健康を損なう危険性もあると、青栁博士は警鐘を鳴らします。
青栁先生が15年にわたって群馬県中之条町で行った研究から見えてきたのは、歩くときの量(歩数)と質(運動強度)という観点だったのです。

日本人が病気を抱えて生きる期間

町民5000人を15年間調査してわかった病気予防になるウオーキングの法則

「1日8000歩・中強度の運動20分」が、なぜ健康寿命をのばす歩き方だと言い切れるのか。そこには、ひとつの町と住人の協力による、膨大なデータをもとにした確証があったのです。

奇跡の「中之条研究」が生んだ黄金律

運動強度を表す指標に「メッツ(METs)」という単位があります。消費カロリーを表すもので、何もしない安静な状態で消費されるカロリーを1メッツとし、安静時の何倍に相当するかで運動強度の目安を計るものです。
例えば「ゆっくりと平地を歩く」のは2.8メッツ、「ストレッチを行う」のは2.3メッツとされています。「犬の散歩」は3.0メッツで、「速歩き」は4.3~ 5.0 メッツ、そして「階段を速く上る」のは8.8メッツになります。
1~2メッツを低強度、3~5メッツを中強度、6メッツ以上を高強度の運動とした場合、毎日歩くことと一緒に、中強度の運動(速歩き)を取り入れることで、老化や病気の予防などさまざまな効果を得られると青栁先生は言います。それを証明したのが、青栁先生が2000年から群馬県中之条町で行った調査です。
65歳以上の住民5000人を対象に、運動や身体活動の状況に加え、普段の食事や睡眠時間、労働時間、病気の有無など、15年にわたって毎年調査が行われました。
さらに、そのうち500人にはオリジナルの身体活動計を24時間365日携帯してもらい、1日の歩数と中強度の運動時間とを記録。
膨大なデータから、平均歩数と平均中強度活動時間を組み合わせ、有病率の関連性と照らし合わせた結果、病気予防に有効な歩数と中強度の活動時間が明らかになったのです(下表参考)。

メッツで表す身体活動の例

例えば、1日8000歩・中強度の運動を毎日20分行っている人の場合、それ以下の活動量の人と比べて、高血圧や糖尿病の発症率が大きく下回り、病気予防につながることが判明しました。同時に、歩数や中強度の活動時間が多ければ健康に良いわけではなく、1日12000歩以上歩くのと、「1日8000歩・中強度の運動20分」では、病気予防の効果が変わらないこともわかったそうです。むしろ12000歩以上歩くと、疲れとストレスで免疫力が低下し、かえって病気にかかりやすくなることも明らかとなりました。

1日の歩数と活動量がさまざまな病気を予防する

そもそも、なぜ歩くことや運動をすることが、認知症や生活習慣病をはじめとするさまざまな病気の予防に役立つのでしょうか。
青栁先生によると、運動により筋肉が刺激されると、血液中に成長ホルモンが分泌され、これが脳内の神経細胞に関わるたんぱく質の分泌を助けることで、認知症の予防になると考えられるそうです。
また、運動により代謝が上がることで質の高い睡眠が得られ、それが脳内の老廃物除去を促進し、認知症やうつ病予防につながると言います。さらに、細胞の活性化による免疫力アップや、余分な脂肪の分解による生活習慣病の予防、筋力維持による生活の質の向上にも期待が持てるそうです。
ただし、運動をし過ぎることは逆効果であり、1日8000歩程度の歩行のうち、20分ほどを中強度の活動(速歩きなど)にするのが、最適な運動量といえます。
特に、今まで運動をしていない人がいきなり始めると危険なため、まずは無理のない歩数から始めて徐々に増やしていくことを勧めています。
調査の結果からは、始めてから2カ月後には効果が期待できる一方、2カ月休むと元に戻ってしまうため、健康効果を維持するためには、できるだけ毎日続けることが大切ということです。
目標とする歩数と中強度の運動時間は、朝起きてから夜寝るまでの1日の総数で良いため、日常生活での家事や通勤時などに取り入れると続けやすいでしょう。

予防が期待できる病気と歩数・中強度の活動時間の目安

1日8000歩・中強度の運動20分実践のための3つのコツ

中強度の運動を行うためのコツを、青栁先生に教えていただきました。

1.腕を振って力強く歩く

無理をしないことが大切です中強度の運動の代表といえば
「速歩き」ですが、具体的にはどのようなフォームを意識すれば良いのでしょうか。青栁先生は、加齢とともに歩幅が狭くなる傾向にあるため、歩幅を大きくとり、腕
を振って力強く歩くことがポイントだと言います。しかし無理なフォームは転倒やけがの危険性もあるため、ウオーキング用ポールやステッキで補助して歩くなど、
自分ができる範囲で行うことが大切だと話します。

2.風呂掃除や草むしりでもOK

中強度の運動には速歩き以外にも、「風呂掃除」や「庭の草むしり」などの家事、「階段をゆっくり上る」ことなども含まれます。つまり意識して普段の生活を活動的に過ごせば、速歩きできない日でも「中強度の運動20分」を達成することができるのです。
ただし注意していただきたいのは、前述した通り活動時間が長ければ健康に良いというわけではなく、やり過ぎるとかえって逆効果になるということです。とはいえ「1日8000歩・中強度の運動20分」を自分の感覚だけで判断するのは難しいものです。そこで活用したいのが、「活動量計」です。

3.活動量計を身につけて2000歩UP

活動量計とは、歩数をはじめ移動距離や消費カロリーなど1日の活動量を計測する機器のことです。
青栁先生が行った中之条研究でも身体活動計(活動量計)が使われ、これを身につけて研究に参加した町民は目標意識が高まり、1日の歩数が2000歩以上増えるという結果が出ました。また身体活動計を24時間365日携帯していた人と、そうでない人とでは、数年後の医療費に月額で1万円もの開きが生じたそうです。
大切なのは無理なく継続できること。ウオーキングの法則の実践に、活動量計は欠かせないアイテムといえるかもしれません。

活動量計選びのポイント

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ウォーキングの心強い相棒

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