インタビュー

実力派俳優 小日向文世さん

輝く人 インタビュー 3月号 Vol.78

「やりたいことは全てやろう!10代で決めた小日向流の生き方」

実力派俳優=小日向文世さん。活躍の場は年を追うごとに広がり、観る者を引き付けて離しません。これまでの歩みを振り返っていただくとともに、主演映画『サバイバルファミリー』について伺いました。

スキー事故体験から生き方を決めた

学生時代、勉強嫌いだったと聞きました。

 高校時代にマージャンを覚えてハマってしまってからは、美術部で絵を描いているか、マージャンに明け暮れていました。勉強には全く興味を持てず、主要5科目の5段階評価はオール2。「美大に進みたい」と先生に相談したら、「お前の成績で入れる大学はない!」とはっきり言われてしまいました。そこでデザインの専門学校に進学するのですが、1年生の冬、姉と出掛けたスキーで腕を複雑骨折し、それからの一年半は手術と入退院の繰り返し。この事故をきっかけに「これからの人生は、やりたいことは全てやろう!」と決めました。まずはカメラ。当時、『流行通信』というファッション雑誌が人気で、カメラマンは憧れの職業でした。「女の子にモテる!」そんな動機で始めましたが、写真って撮る側より被写体の方に注目が集まりますよね。だったら撮られる側=俳優になろうと、新たな「やりたいこと」が出てきました。

俳優への道は容易ではなかったそうですね。

 当時、俳優の登竜門といえば文学座で、中村雅俊さんや松田優作さんが大活躍されていました。その文学座の入団試験は散々でしたよ。試験内容はシェイクスピア『ハムレット』の有名な一節「~尼寺へ行け~」とパントマイム。お題は、サラリーマンが仕事に疲れて帰宅するとベッドに死体があり驚く、というものと、道端の花を摘んで好き嫌いと花びらを落とし、嫌いで終わって残念に思う、という2つの設定からの選択でした。多くの男性志望者がサラリーマンネタを選ぶ中、僕はあえて花摘みの方を演じました。しかし一次選考で見事不合格。志望者は約6000名、30名に残れるはずもありませんでした。

アルバイト生活、中村雅俊さんの付き人を経て、串田和美さんが主宰するオンシアター自由劇場に入団し俳優デビューされました。

 もともとは映像をやりたかったのですが、入団できたので舞台俳優を目指すことにしました。最初はセリフもなく、気楽な気持ちだったんですが、役付きになると状況は一変、厳しかったですね。途中で、やはり映像の仕事がしたいと思い串田さんに相談すると「映像の仕事のオファーがあったら受けるよ」と言われ、気が楽になりました。
19年在籍後、劇団は解散し、念願の映像の世界に飛び込みました。どんなに厳しい現場であっても、あの時代よりつらいということはありませんね。

インドア派で自宅と家族が大好き

映画・TVドラマ・舞台と引っぱりだこですが、お休みが取れた日は何をされていますか?

 何もせず、ただぼ~っとしていますね。インドア派なので出掛けることは少なく、仕事場と家の往復だけ。家族の気配を感じながら、台本や本を読む時間が好きですね。これといった趣味があるわけでもないから、一カ月ぐらいの長い休みなんかもらったら、時間を持て余してしまうかも?!家事を手伝うこともあまりなくて、たまにトイレ掃除をやると隅から隅まで徹底してやりますが、家事も子育ても基本全ては、かみさん任せ。だから逆らえませんよ。

主演映画『サバイバルファミリー』で小日向さんの演じた「鈴木さんのダメパパ」ぶりが印象的です。

 外面が良くて、日常生活で偉そうにしていても、非常時に何もできない。僕もサバイバル苦手ですからねぇ。全く役に立たないんじゃないかな。それに比べて女性は危機的状況下では強いですよね。家族でどう生き抜くか?行動力があって頼もしい。
 映画中、サバイバル生活の中で田舎を目指して家族4台の自転車が一列になって走るシーンがあって、僕はここが好きです。「ああ、日本っていいな」と思わせるような穏やかな原風景を、きずなを取り戻した家族が走る。ほっこりできる数少ないシーンです。試写をご覧になった方からは「ただ笑えるだけでなく、緊迫感がある」という感想を多くいただきました。その真意を確かめに、ぜひ劇場へ足を運んでください。

小日向 文世 (こひなた・ふみよ)
1954年、北海道出身。東京写真専門学校を卒業後、中村雅俊氏の付き人を務め、1977年串田和美主宰のオンシアター自由劇場に入団。劇団解散となる1996年まで中核を担う。解散後は活動の場を映像にも広げ、映画『銀のエンゼル』で初主演を射止めた。2008年には『あしたの、喜多義男』で統合失調症により分離した一人2役という難しい役に挑戦。高い演技力に賞賛の声が上がった。
2011年『国民の映画』で第19回読売演劇大賞『最優秀男優賞』、2012 年『アウトレイジビヨンド』では第86回キネマ旬報ベスト・テン『助演男優賞』をそれぞれ受賞。
昨年からは『ぶらり途中下車の旅』の3 代目ナレーションを務めるなど、幅広く活躍中。

サバイバルファミリー

 

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