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健康長寿のカギは「フレイル」予防⑥

「フレイル」という言葉をご存じでしょうか?
体重が減ってきた、疲れて何もやる気が出ない、歩くのが遅くなった……などを感じたら、それはフレイルかもしれません。介護予防のために知っておきたいフレイルの話、第6回です。

「フレイル」は要介護状態になる前の虚弱

健常なときから介護が必要となるまでの中間段階として、人によりその期間に長短の差はありますが、「フレイル」(虚弱)とよばれる状態があります。
 フレイルでは、加齢に伴って食欲が落ちるなどの理由から食べる量が減り、体重が減少し、低栄養を招きます。低栄養状態では疲れやすく、活動量が減り、動かないことで筋力が低下して、ますます身体機能が衰えていく……この一連の負の連鎖を「フレイル・サイクル」といいます。
 自分がフレイルに陥っていないかを意識して、まずは食事や運動などの生活習慣を見直すことが、フレイル予防の第一歩です。

立つ歩くなどが困難になる「ロコモ」

 「ロコモティブシンドローム」(ロコモ・運動器症候群)という言葉をよく耳にするようになりました。ロコモは日本整形外科学会が提唱した概念で、筋肉や骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器に障害が起こり、立つ歩くなどの機能が低下している状態をいいます。
 身体的フレイルとロコモは、ほぼ同義と考えられます。ロコモは、加齢によって筋力や持久力が低下したり、「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」「骨粗しょう症」「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」などの疾患によっても引き起こされます。これらの疾患から痛み、関節可動域制限、筋力低下、まひ、骨析、こわばりなどが生じ、体力やバランス能力、立つ、歩くといった移動能力の低下につながるのです。

重症化してからでは遅い

歩く速度は、現在の健康状態を素直に反映しています。歩行速度1.0m/秒が、健康上の問題を起こすかどうかの境目とされています。
 筋肉の予備力(普段は使う必要のない余裕の部分)が低下した人では、例えば立ち上がりや階段を上り下りする際に、あっけなく生活機能障害を引き起こすことがあります。しかしこういった人であっても、適切なトレーニングにより筋肉量は増加し、筋力は向上します。
 外国のある事例では、ナーシングホーム(日本での特別養護老人ホーム)に入所している72歳〜98歳の人たちが、最大筋力の80%を使うトレーニングを10週間行った結果、筋力が向上して、歩行速度やバランス能力などの運動機能が回復したそうです。トレーニングは、年齢にかかわらず有効だったそうです。
 また別の研究では、すでに重度の身体的フレイル(ロコモ)を持った人たちでは、運動指導を行っても日常生活動作の悪化を防ぐことはできませんでした。つまり身体的フレイル(ロコモ)が重症化する前に、適切な運動を行う必要があるということです。
 要介護状態になる原因は、80歳までは主に脳卒中ですが、80歳以上ではフレイルが主な原因となっています。フレイルでは原因となる疾患が特定できず、複数の要因によって要介護状態にいたることが考えられます。そうならないためには、日頃から簡単な運動を行うなど積極的に予防策を講じていきましょう。

ロコトレは「ながら運動」がお勧め

 ロコモ予防は、実は骨の成長が活発化する10代から始まっています。10代から20代までの間に栄養バランスのとれた食事をしっかり取って適度な運動を続けることが、後々の健康状態にも大きく影響します。そして中高年になっても、骨や筋肉などの運動器を鍛えることがロコモ予防をはじめ、生活習慣病や循環器病などの予防にも役立ちます。
 ロコモによって体が動かなくなれば、それまでと同じ量の食生活を続けていれば当然太りますし、認知症も起こりやすくなり悪循環です。認知症の原因にもなる寝たきりを防ぐためには、転ばない、骨粗しょう症にならない、ひざや腰の痛みに負けない筋肉をつける、といったことが重要なポイントになります。
 こういったロコモ対策には「ロコトレ」が役に立ちます。ロコトレはたった2つの運動です。
 そして毎日の習慣に、この2つのロコトレをプラスするだけの「ながら運動」もお勧めです。例えば、歯を磨きながら・テレビを観ながら・電車に乗って立っていながらなどの「ながら運動」が、ロコモ予防に効果を発揮します。

ながら運動がおすすめ
 
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森惟明(もりこれあき) 高知大学 名誉教授

森惟明(もりこれあき)
高知大学 名誉教授

 

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