インタビュー

俳優 大地康雄さん

輝く人 インタビュー 12月号 Vol.75

「私の俳優人生のはじまりはピンチヒッターの連続でした」
和製ジャック・ニコルソンの異名をもち、ドラマや映画で圧倒的な存在感を放つ実力派俳優=大地康雄さん。
これまでの人生を振り返ってもらうとともに、最新出演映画「幸福のアリバイ~Picture~」について伺いました。

同僚の突飛な行動がいまの私の原点?!

高校時代は生徒会長をされていたそうですね?

 はい。母校は10年くらい前に野球で甲子園出場を果たした八重山商工なんですが、 私はその一期生で、初代生徒会長でした。もともとは生徒会の選挙で立候補者の推薦人として応援演説をする側だったんですよ。ところが、その演説の際の自己紹介が大ウケで、終わってみると、満場一致で私が生徒会長になるべきだという流れになっていたんです。しかも、それを伝えられたのが校長、教頭が顔をそろえた高級料亭。ご馳走に囲まれ、半ば接待を受けるような状態で丸め込まれて引き受ける次第となりました。でも、やるとなれば楽しまなきゃ損。男くさい機械科・電気科の男子のために、商業科の女子と交流できるよう企画したフォークダンス大会なんかは大好評でしたね。また、卒業時にはまだ校門もなかった学校に300本の植樹もしました。

俳優になろうという夢はいつごろから芽生えてきたんですか?

 学生時代には全く考えたことなどありません。商業高校に通っていたので、その先にあるのは東京への集団就職でした。当時は「金の卵」といわれ、旅費や支度金をもらって上京、ある大手スーパーに就職しました。ところが、出身地によってずいぶん待遇が違うんですよね。関東出身の人たちはきれいなOLさんたちとビルの上階で仕事をしているのに、沖縄組は地下の倉庫で作業服を着てラベル張りの毎日。うんざりですよ。それに耐えかねた同僚の一人が、ある日突然「俺、俳優になるために、オーディションを受ける!」なんて突拍子もないことをいい出したんです。俳優といえば、高倉健さんとか石原裕次郎さんとかでしょう。世界が違うよと思いつつ、ヒマな私は彼のオーディションに付き合うことにしました。その会場に向かう途中、新宿西口の公園でドラマのロケに出くわしたんですよ。しかも、撮影していたのはあの銀幕の大スター松原智恵子さん!そのとき「あんなきれいな女性と仕事ができるんだ」と、急に俳優が魅力的に見えてきて、そのまま駆け込みでオーディションに参加、なんと合格してしまったんです。

『マルサの女』で悪役イメージを脱皮俳優として自立の道を

俳優になるために、何か見えない力が働いたようですね。

 そうはいっても地に足が着くまでは長い道のりですよ。私の俳優人生のはじまりはピンチヒッターの連続でしたから。銀幕デビューとなった『衝動殺人 息子よ』も犯人役がずっと見つからず、最後の最後に私の名前があがったそうです。でも、呼ばれたからには自分の力を試したい。取り調べのシーンでは狂気的なセリフがなんと台本1ページ分もありましたが、これぞ伊藤雄之助さんのもとで修業した成果を見せるチャンスだとイチかバチかでぶつかりました。それが意外にも高評価だったので、帰りの大船駅のホームで観音様を見上げながら「おれ、俳優でやっていけるかもな」と確信したのを今でも覚えています。でも現実は甘くはなく、その後もたまに悪役が回ってくる程度で、アルバイトと演技の訓練を両立する日々。そして31歳の時に、再びピンチヒッターでドラマ『深川通り魔殺人』の主役・殺人鬼に扮することになりました。これが無名の主役でありながら、視聴率26%というまさかの大ヒット。俳優としてはたいへん喜ばしいことだったんですが、反面リアル過ぎてそういう人間だと思われてしまい、たまにくる仕事は悪役ばかり。女性は寄り付かないし、残念な結果となりました。

これまでの俳優人生を振り返って、印象に残っている作品は何ですか?

 35歳の時にやった伊丹監督の映画『マルサの女』ですね。私にとっては俳優人生の岐路となる作品だと思います。実はこれも、ある事情で役を降りた人のピンチヒッターでした。映画の撮影中にテレビをつけたら、たまたま『深川通り魔事件』の3回目の再放送をやっていて、それが伊丹監督の目に留まったというわけです。しかも、これまでの悪役続きから一転、マルサ、すなわち税金の刑事役ですよ。これ以降、伊丹監督の作品にも出演させていただけるようになり、ようやく俳優として自立の道が開け、悪役のイメージから脱皮。いろいろな役をやらせていただけるようになりました。

誰かの役に立てるような作品に出演していきたい

最新の映画『幸福のアリバイ』について教えてください。

 今回は、悪役ばかりやっていた頃の古巣に戻ったような懐かしさ、居心地の良さがありましたよね。そうはいっても、テーマはあくまで恩返し。親から受けた恩は子に返すという昔からの教え、日本人が持っている美徳をやくざの葬儀を舞台に表現していて、短いストーリーの中に陣内監督の人間愛があふれています。シリアスな題材なのにクスッと笑え、最後には観ていただいた方一人ひとりの心の中に何かが残る、そんな作品に仕上がっているのではないでしょうか。

最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

 60歳を過ぎた私たちの世代は、自分のことばかりではなく、人のためになることを考えて過ごしていきたいですよね。そうすれば、人生はもっと豊かなものになるのではないでしょうか。実際、私の周りでも、そういう風に行動している人ほど幸せに見えますし、私もそれを見習いたいと思っています。できることといえば、俳優として少しでも他人の役に立てるような作品に出演すること。単純な娯楽として笑って泣いて楽しんでもらえるものもいいですし、逆に、追い詰められてどん底に落ちた男が再生していくような作品で、現実にご苦労されている方に一筋の光や力を届けられたらいいなとも思います。そんな志を持ってこれからも頑張っていきたいです。

★生徒会長の応援演説のエピソードにもあるように、小学生の頃から盛り上げ上手だったという大地さん。取材の現場も、笑いに包まれたとても楽しいひと時でした。

大地 康雄さん(だいち・やすお) 
1951 年、熊本県出身。1979 年、木下惠介監督『衝動殺人 息子よ』で映画デビュー。
『深川通り魔殺人事件』主役、その後、伊丹十三監督作品『マルサの女』『ミンボーの女』で脚光を浴びる。『病院へ行こう』日本アカデミー助演男優賞、『砂の上のロビンソン』太平洋映画祭主演男優賞、『バカヤロー! 私、怒ってます』毎日映画コンクール男優助演賞を受賞、『恋するトマト』主演、2013 年『じんじん』インディオ映画祭主演男優賞。
『じんじん~秦野編~(仮)』『サバイバルファミリー』の公開を控えている。

幸福のアリバイ

 

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