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健康長寿のカギは「フレイル」予防③

「フレイル」という言葉をご存じでしょうか?
体重が減ってきた、疲れて何もやる気が出ない、歩くのが遅くなった……などを感じたら、それはフレイルかもしれません。介護予防のために知っておきたいフレイルの話、第3回です。

「フレイル」は要介護状態になる前の虚弱

 健常な状態から介護が必要となるまでの中間の段階として、人によりその期間に長短の差はありますが、「フレイル」(虚弱)とよばれる状態があります。
 フレイルを定義したFried ら(2001)によれば、フレイルでは食欲減退などの理由で食べる量が減ることから体重が減少し、低栄養を招きます。低栄養状態では疲れやすくなるため活動量が減り、動かないことで筋力が低下します。この一連の負の連鎖「フレイル・サイクル」が、さまざまな身体機能を低下させます。
 ただし、フレイルになる要因は身体機能の低下だけではなく、高齢期特有の精神的要因や社会的要因も関係しています。それらについては今後の連載で述べていきたいと思います。

痩せ過ぎ、急な体重減少に要注意

65歳以上で、特にBMIが18.5以下の痩せている人、または半年の間に体重が2~3㎏減少した人は注意が必要です。
 体の栄養状態を示す目安として、「ヘモグロビン値(血色素量)」と「血清アルブミン値」があります。
 厚生労働省の国民健康・栄養調査では、ヘモグロビン値が低い人は、高齢になるほど低栄養になりやすいことがわかっています。
 アルブミンは主要なたんぱく質で、その数値が3.8g/dlより下がるほど死亡リスクが高くなり、3.5g/dl未満になると内臓たんぱく質の減少が生じる、という研究結果もあります。
 低栄養状態になると、免疫力が落ちて風邪を引きやすくなったり、軽い風邪でもこじらせて肺炎を起こしたりする危険性が高くなります。高齢者が体調を崩して1週間ほど寝込んでしまうと、以前の生活リズムに戻すにはかなりの期間がかかります。始めは軽い風邪で寝込んだだけなのに、それが寝たきりの状態を招く、そんなことはぜひとも避けたいものです。

あなたのBMIを計算してみましょう

高齢になるほど必要になるたんぱく質

「You are what you eat. (何を食べているかで人が決まる)」 この英語の格言は「人間の健康は、食べ物によって左右される」ことを、うまく言い得ています。
 人体を構成している60兆個の細胞は、摂取した食べ物から作られています。食べ物は血となり肉となる栄養素を供給し、エネルギーを産み出します。エネルギーは体の機能や活動を維持するための基本です。
 高齢になってくると、歯の本数が減り、咀嚼(そしゃく)・嚥下力(えんげりょく)や、胃の消化・吸収力が低下し、唾液が減って、味覚が変わり、食欲も落ちてきます。このような理由から食べる量が減り、生きる上で必要なエネルギーが不足してくると、体は蓄えてある脂肪を燃焼させるほか、筋肉などのたんぱく質をエネルギーに変換し、筋肉量が減っていきます。
 私たちが健康に生きていくために欠かせない栄養素は、炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルの「5大栄養素」で、これらをバランスよく取ることが大切です。そして年齢が上がってくると特に大切なのが、たんぱく質を多く含む「肉」や「魚」をしっかりと食べることです。
 肉は生活習慣病の原因といわれて敬遠されがちですが、それが当てはまるのは50歳くらいまでです。人は60歳を超えてくると、たんぱく質の利用効率が落ち、若いときよりたんぱく質が必要となってくるのです。
 低栄養の影響は筋力低下だけではなく、脳梗塞リスクや認知症リスクを高めるなど、体のさまざまな機能に影響が出ることもわかっています。
 成人が1日に必要とするたんぱく質の目安は「体重(㎏)×1〜2g」といわれています。
例えば体重が50㎏の人であれば、1日50g~になります。これを食材に置き換えてみると、1日に魚およそ80g、肉およそ80g、豆腐およそ3分の1丁、卵1個、牛乳170㎖ほどになります。
 低栄養は自覚しづらく、本人も周りもなかなか気付かないものです。健康診断を受けたときは血圧や血糖値だけでなく、体重の変化、BMI、ヘモグロビン値、血清アルブミン値にも目を向けましょう。

 
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森惟明(もりこれあき) 高知大学 名誉教授

森惟明(もりこれあき)
高知大学 名誉教授

 

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