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【新連載】健康長寿のカギは「フレイル」予防 ①

「フレイル」という言葉をご存じでしょうか?
体重が減ってきた、疲れて何もやる気が出ない、歩くのが遅くなった……などを感じたら、それはフレイルかもしれません。介護予防のために知っておきたいフレイルのお話です。

フレイルは要介護状態になる前の虚弱

加齢とともに誰もが経験する「無理をすると疲れが残る」「覚えているはずの言葉が出てこない」と言えば、体と脳の機能低下です。
医師である私たちは、病院内の廊下をさっそうと早足に歩いているつもりですが、若い医師にあっけなく抜かれて愕然(がくぜん)とすることがあります。
人は高齢になってくると、けがや病気が原因で、あっけなく介護が必要な状態となります。しかし、健常な状態から介護が必要となるまでの中間の段階として、人によりその期間に長短の差はありますが、「フレイル」(虚弱)とよばれる状態を過ごすことになります。
フレイルになると、健常者では問題にならないようなストレスにも弱い状態となっており、加齢と共に多くの病因が影響し合い、身体的・精神的にさまざまな負の連鎖が起こりやすくなります。転倒リスクや入院リスクも高くなり、フレイルの状態に至ると、7年間の死亡率が健常な人に比べて約3倍になるという報告があります。

フレイルを早期に発見するための指標

欧米では以前から老年医学の分野を中心に、Frailty(虚弱、脆弱(ぜいじゃく))に関するさまざまな研究が行われてきました。そして2014年、日本老年医学会はFrailty の統一した日本語訳として「フレイル」という言葉を提唱しました。
フレイルの定義として、欧米ではいくつかの指標がありますが、Fried ら(2001)の提唱した次の基準が広く知られています。
❶ 体重滅少(shrinking)
❷ 著しい疲労感の自覚(exhaustion)
❸ 筋力の低下(weakness)
❹ 歩行速度の低下(slowness)
❺ 活動度の低下(low activity)
以上5項目のうち、3つ以上が該当すると、フレイルといわれています。
近年ではフレイルの概念は、身体機能の低下に着目した「身体的フレイル」だけでなく、軽度認知障害(MCI)や抑うつなどの精神的機能が低下した「精神的フレイル」、生活全般における機能が脆弱化した「社会的フレイル」という考え方が主流となってきています。
「加齢症候群」は、摂食嚥下(えんげ) 障害、体重減少、歩行障害・転倒、頻尿・尿失禁、認知症、うつ、血管疾患、運動器疾患などの総称ですが、フレイルそのものである、と考えるのが理解しやすいと思います。

フレイルの要因の多くは予防できる

フレイルの要因の多くは予防できる
ここまで読んで「最近、筋力が低下してきた、歩くのが遅くなった、疲労感が抜けない……これはもしかしてフレイルかも?!」と不安になった方もいらっしゃるかもしれません。しかし安心してください。フレイルは、軽度~中等度(初期)の段階であれば、その進行を予防したり遅らせたりすることができます。つまり健常な状態に戻すことができるのです。
加齢は防ぎようがありません。しかし、ちょっとした生活習慣の改善で、フレイルを予防したり到来を遅らせたりすることは可能なのです。
例えば身体的フレイルの予防には、日本整形外科学会が推奨する「ロコトレ」、すなわちバランス能力を養う「①片足立ち」を左右1分間ずつ1日3回、下肢筋力をつける「②スクワット」を深呼吸するペースで5〜6回繰り返す運動を1日3回、これらを3ヵ月、半年、1年と続けてください。継続することで、これらの運動が日常の生活リズムにいつしか取り込まれていきます。さあ、さっそく始めましょう!わずかな意欲と気働きとで、あなたのこれからが明るく開けてきます。「若い者には負けない」なんて言わないで、「高齢者には高齢者の生き方がある」と、加齢を受け入れてはいかがでしょうか。ただし、現状に流されるだけでは自分が辛くなります。できることは沢山あります。できることを、自分のためにしていきましょう。それが人類が初めて遭遇する超高齢社会にあって、新しい生き方を切り開く先達たる我々の務めではないでしょうか。
次号からは、フレイルを防ぐために気を付けたいことを具体的にお伝えしていきます。
 
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森惟明(もりこれあき) 高知大学 名誉教授

森惟明(もりこれあき)
高知大学 名誉教授

 

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