インタビュー

俳優 三浦友和さん

輝く人 インタビュー 7月号 Vol.70

「20年後は84歳。その時、その年齢なりに必要とされる俳優であり続けたい」
かっこいいだけではない、強さ、弱さ、情けなさと幅広い役柄を巧みに演じ分ける実力派俳優-三浦友和さん。
正統派二枚目のイメージを覆し、最新映画「葛城事件で死刑囚の父親というさらなる新境地を切り開くまでの、その軌跡を伺いました。

10代のころはバンドに憧れ音楽に没頭

お子さまのころは引っ越しが多かったと聞きました。

父が警察官だったので、1ヵ所に2~3年しか勤務できないんですね。そのため幼少期は、山梨の大菩薩峠付近で3回引っ越し、小学校3年生で東京の飯田橋に移ってきました。当時の東京は、オリンピックに向けて発展を遂げている最中。光化学スモッグで景色はかすみ、近くを流れる神田川はよどんで悪臭を放っていました。どこもアスファルトで土がない。転校先の校庭は狭く、学力のレベルは高いし、遊び方も全然違う。山梨とは真逆の環境になかなか馴染めず、子どもながらに苦労しました。
中学入学と同時に立川に引っ越した時は、少し山梨に似た空気にまた触れることができ、ホッとしたのを覚えています。

そのころ夢中になっていたものは?やはり芸能界に興味があったのですか?

私が中学に上がったころは、ビートルズの影響で世間がバンドブームに沸いていました。私もその波に乗ってギターに没頭する毎日。高校に進学してからもその熱は冷めませんでした。学校では、父の影響で柔道部を立ち上げ入部しましたが、その一方で、アルバイトでお金を貯めて念願のドラムを買い、趣味としてのバンド活動にいそしんでいました。そこで、あの忌野清志郎とも出会ったわけですよ。彼は中学の時から本格的なバンド活動をしていて、演奏する曲はオリジナル。私たちのようなコピーバンドとは明らかに別次元でした。同級生ながら憧れの存在でしたね。反面、「バスで一緒に登校するアイツ」が音楽の天才だとは気が付かず、「俺にもできる!」と大きな勘違いをしたわけです。そして大学進学率95%の高校の中で、残りの5%となって、ひそかに音楽で食べていく決心をしました。表向きは「船乗りになる」と言って無線の専門学校に進学しましたが、結局はアルバイトと音楽に明け暮れ、夢を追って家を出ました。

映画『伊豆の踊子』が俳優業の魅力を教えてくれた

音楽から俳優へと舵を切ったきっかけは何だったのですか?

現実は甘くないですよ。清志郎たちのバンドでさえ低迷期に入っていき、プロの厳しさを目の当たりにしました。そんな折、彼らのマネージャーから「君はバンドマンには向いていない」と言われてね。夢を打ち砕かれたわけだけど、それが俳優を目指す大きなきっかけになりました。
それで歌手やモデルを勧められたものの、まったく興味なし。じゃあ俳優やってみよう。そんな消去法でこの道へ進むことになった。でも私は恵まれていましたね。次々とドラマの仕事が舞い込んできて、大物俳優の方々とも多々共演させていただきました。ところが、そのありがたみもわからずに、ただ「食べていくため」に仕事をこなす日々が続きました。

結果的に俳優業は、三浦さんにとって一生の仕事になりました。

転機は22歳、映画『伊豆の踊子』に出演させていただいた時です。当時は録画がまだ一般的ではなかった時代。その試写会で、初めて自分が演技している姿を客観的に観ながら、一般の観客の方々の反応をじかに感じました。「あの小さなレンズの向こうには、たくさんの人たちが見てくれている」。それで初めて、自分のやっている仕事がどんなものであるか、気付いたのです。
以来、撮影の現場ではそのことを常に意識して、一つひとつの役を大切に、真剣に取り組むようになりました。現場の後輩たちにも常々その思いを伝えています。

求められ、必要とされる存在であり続けたい

最新主演映画『葛かつらぎ城事件』では、監督からの熱い出演依頼があったとか。三浦さんのイメージとは真逆のキャラクターのように思います。

俳優という仕事は常に受け身で、相手に求められて初めて成立するものです。この映画で演じた死刑囚の父親は、難しい反面、とてもやりがいのある役柄。「三浦しかいない」と選んでもらえたのは本当にありがたいことです。この作品は、親として考えさせられる深い内容です。愛情を持って家族を支えていても、その愛情をかけ違えて歯車が狂うと、どんどんと予期せぬ方向に事態が進んでいってしまう。
それは、決して他人ごとではありません。いま、私の2人の息子たちは、それぞれ自分の夢を見つけて前に進んでくれていますが、これもあくまで偶然の結果に過ぎないのだと実感しています。この映画は、子育てをひと段落されている皆さんにとっても、いろいろなことを感じていただけるのではないでしょうか。

読者の方に向けてメッセージをお願いします。

一般に65歳以上を高齢者というようで、だとすると私も来年には高齢者の仲間入りです。先日、同窓会があったのですが、今の60代って見た目も気持ちもすごく若い。
65歳で自分を高齢者だと思っている人は、ほとんどいないんじゃないかな。そうは言っても体力の衰えには逆らえないもので、そことどう向き合っていくか。その中で、どんな小さなことでもいいので必要とされる人間でいたいものです。私自身、20年後は84歳。きっとあっという間にやってくるでしょう。その時、その年齢なりに必要とされる俳優であり続けられるよう、淡々と頑張っていきたいですね。

★「良き父、良き夫」と称されることにピンとこない、と話す三浦さんですが、仕事への想い、家族への想いを語ってくださるその姿は、まさに世間のイメージそのままでした。

三浦 友和さん(みうら・ともかず)
1952年山梨県生まれ。’71年ドラマ『シークレット部隊』で俳優デビュー。’74年初の映画『伊豆の踊子』に出演し、第18 回ブルーリボン賞新人賞を受賞する。この時の相手役・山口百恵とは、ドラマ『赤いシリーズ』他多数の映画やドラマ、CMでも共演し、’80年に結婚。その後も『M/OTHER』(’99 年)、『ALWAYS三丁目の夕日』シリーズ(’05 ~’12 年)、『沈まぬ太陽』(’09)など映画を中心に多くの作品に出演し、数々の映画賞や紫綬褒章(’12 年)などを受賞している。

70_interview-2『葛城事件』2016年6月18日(土)全国公開
「葛城事件」2016年6月18日(土)全国公開無差別殺人事件の加害者をめぐる家族模様を壮絶に描く。
念願のマイホームで美しい妻と2人の息子に囲まれ、まさに理想の家庭のはずだったが、父親の抑圧的な態度が気付かぬうちに家族の歯車を狂わせていく。そして、ある日突然、次男が無差別殺傷事件の加害者となり、一気に家族崩壊へと向かう..。
赤堀監督が’13年に作・演出で上演し話題を集めた同名舞台の映画化。崩壊をもたらすきっかけとなった父・清役に抜擢された三浦友和の鬼気迫る演技に注目。
出演:三浦友和 南果歩 新井浩文 若葉竜也 田中麗奈 他
監督・脚本:赤堀雅秋

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