コラム

すこやかな心で介護トラブルを防ぐためのお悩み相談室 Vol.70

親孝行の神様

昨年11月、埼玉県越谷市で81歳の母の介護を続けて10年、父(74歳)は脊髄の病気でいつも「死にたい」が口癖で、娘(47歳)は介護疲れから、両親を車に乗せて親子3人が利根川へ入水。両親は死亡、娘だけが助かる、という事件が報道されました。
 新聞の見出しには大きく『孝行娘 絶望の河原』とあり、近所の人たちは「今時珍しい親孝行で、まるで親孝行の神様」と話し、「嫁にも行かず、お母さんの面倒を一生みる」と言って、認知症の母の介護を続けていた娘でした。(平成27年11月29日読売新聞) このように各地で介護疲れの末の介護殺人が相次いでいます。介護は長期にわたり、心身共に疲れ果てるので、一人で抱え込んではいけないことを教えてくれた痛ましい悲劇でした。

事例❶ 母の世話 全くしない姉扶養料負担も拒否(50代男性)

母の世話全くしない姉 長年一人で病気の母の世話をしてきました。母の世話をまったくしない60歳の姉に困っています。
 私自身、看病と自分の仕事の両立はとても厳しく、疲労も重なり、やむなく仕事を辞めました。生活苦から借金を重ね、返済のために自宅を処分し、今は賃貸住まいです。日々の生活費、母の治療費、家賃の支払いもままならない状態です。
 会社員で独身の姉は、金銭的に多少余裕がありそうなので、支援を求めましたが、拒否されました。同じ子として親の扶養は平等のはずですが、全てを私に押し付けて、扶養料の話にも応じない姉に納得がいきません。

木村先生のご意見

 子どもが複数いれば、親の扶養は子たちが平等に負担するのが原則です。もっとも、現実の負担額は子それぞれの収入や家族構成、相応の生活費等によって異なってきます。姉は会社員で扶養のための余力がありそうですね。
 もちろん、話し合いがつけば、姉に母親を引き取って扶養することを求められましょうが、これまでのいきさつから見て、それは望めそうもありませんし、母親もそんな生活を望まないでしょう。
 そこで母親が申立人となって、長女を相手に扶養料請求の調停を家庭裁判所に申し立ててみてはいかがでしょうか。
 第三者を交えた具体的な話し合いの中で、これまでのいきさつ、お互いの不平、不満などを思い切り出し合ったら、思いがけない結論が出るかもしれません。
 なお、母を看病しながらの生活苦について、一度、福祉事務所に相談されてみてはいかがでしょうか。

事例❷ 介護に11年縛られる家族(20代の女子学生)

介護に11年縛られる家族 同居する祖父母の介護で、家族が10年以上縛られています。祖父母は母の両親です。車いす生活の祖父は頑固で、母が食事を持って行っても「ありがとう」の言葉はなく、機嫌が悪いと怒鳴ります。祖母は病気の後遺症があり、「なぜ治らないのか」と私に何度も訴えてきます。
 母には妹が2人いますが、当てになりません。私もできるだけ手伝いますが、なぜ母だけが苦労するのでしょう。毎日、母のため息や舌打ちが聞こえます。すごくイライラして私に怒りをぶつけることもあります。
 祖父母に「ショートステイを利用して」と頼んでも嫌な顔で断られます。祖父母の介護で家族はたくさん涙を流してきました。私は人生で一番楽しい時を奪われている気さえします。祖父母がいなければどんなに楽だろうと、つい考えてしまう最低の孫です。

木村先生のご意見

 介護漬けで10年以上。しかも老親二人とあってはお母さんも心身共に疲れイライラなさるのは当然でしょう。それを案じるあなたは決して最低の孫ではありません。
 この際、介護保険のケアマネジャーや、かかりつけの医師に助言を求めると良いでしょう。介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはなれません。

木村重男先生から皆さんへメッセージ

 今では長期的な介護には、大変なお金と多くの人手と献身的な努力が必要です。1つ歯車が狂うと取り返しのつかない悲劇や不幸を招きます。毎日の食事の世話をしてもらっても「ありがとう」のひと言も言えない高齢者は人間失格です。
 今ごろ、好き好んで介護をしてくれる人が身内に何人いるでしょうか。自分の都合だけでなく、介護する家族がどんなに大変かをまず知ることです。どうしても在宅介護を望むなら、高齢者も家族介護者への配慮と感謝の念をもっと深めるべきではないでしょうか。でないと自分だけでなく一家の破滅、家族の悲劇を招くことになりかねませんよ。

木村重男さん木村重男(きむらしげお)
1933(昭和8)年生まれ 83歳
一般社団法人倫理研究所 参与。
文部科学大臣から社会教育功労賞を受賞。著書に『夫婦の玉手箱』『豊かな人生を拓く玉手箱』など多数。

 

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