インタビュー

昭和女子大学 理事長 坂東眞理子さん

輝く人 インタビュー 6月号 Vol.69

「母にしてもらったことを、娘たち、孫たちに返していきたい」
官僚として働きながら2児の子育てを両立、そして現在は昭和女子大学理事長を務めるスーパーウーマン=坂東眞理子さん。
女性の社会進出のさきがけとして、多くの困難を乗り越えてきた坂東さんに、シニア世代を豊かに生きるヒントを伺いました。

女性の就職自体が稀有子育てとの両立に四苦八苦

女性の東京大学進学、当時としては珍しいことだったと思いますが?

 私が在学していた東京大学では女子の割合がわずか3%。そもそも日本全体でみても女子の4年制大学進学者は10%にも満たなかったごく少数派ですね。私は子どものころから本を読むことが大好きで、ジャンルは問わず、時代小説、SF小説、はたまた姉たちの教科書まで、文字という文字を読みあさっていました。本を通していろいろな世界を知ることが楽しかったんですね。決して学校の勉強だけをする優等生ではありませんでしたが、知識が豊富で物知りという点では誰にも負けませんでした。その好奇心が、私を東大進学へと導いたのだと思います。ただ、その先の未来についてはまったくイメージできず、「小説家や文筆家になれたらいいな」とぼんやり考えていた程度でした。

そこから、総理府(今の内閣府)に入府。社会進出の第一歩を踏み出したわけですね?

 当時は、男女雇用機会均等法が施行される前ですから、民間企業には大卒女子の就職口は一切なく、公務員の数少ない募集をあたるしか選択肢がありませんでした。それで入ったのが総理府。ここで初の女性上級職として働かせてもらえたのは、とても恵まれていたのかもしれません。その後、24歳で結婚、26歳で出産。「女性は25歳を過ぎたら賞味期限切れ」といわれていた時代、その社会的プレッシャーからはなんとか逃れたものの、そこには別の試練が待っていました。育児休業法のような制度が整っていなかったので、産前産後各6週間で職場に復帰。仕事を手放したくないという危機感が強かったんですね。でも、仕事と慣れない子育ての両立は簡単ではなく、毎日が綱渡り。一人ですべてを抱え込んで、一番苦しい時期だったような気がします。

ハーバード留学で学んだ助け合うことの喜びと大切さ

それでも諦めることなく、コツコツとキャリアを積み上げていきました。

 婦人問題担当室専門官として、32歳の時に『婦人白書』を執筆したことが私にとって大きな自信となりました。そして、さらに可能性を広げようと、34歳の時にハーバード大学の研究員として1年間留学することを決めたのです。この時は母の協力と、「研究休職」という上司の計らいがあって渡米が実現しました。実際、この地で得たものは大きく、キャリアの面では苦手だった英語を自分の強みに変えることができました。それだけではありません。たった一人で赴いたアメリカの地。そこで私はたくさんの人々に助けられました。今でも友情が続く、かけがえのない仲間を得ました。

異国の地で温かい心に触れることができたのですね。

はい。特に、ホストマザーとして私を受け入れてくれたメアリーにはとても感謝しています。当時、彼女は70歳。子どもたちは独立し、ご主人は仕事を引退して夫婦水入らずの生活をおくっていました。そんな幸せな日々をおくれるのは平和な社会のおかげだからと、社会に恩返しをするためにボランティアで私を迎えてくださったのです。その彼女が最後に言ったのは、「眞理子は私に恩返しをしようなどと思わないで。将来、自分がそういう立場になったら、その時できることを別の誰かにしてあげればいい」という言葉。それはずっと私の心に残っています。アメリカでの生活はたった1年間でしたが、人間としても大きく成長できた貴重な時間だったと思っています。

見返りは求めずに自分を役立てる方法を見つける

その経験が、ご自身の著書『60歳からやっておくべきこと』に書かれているシニアの方々へのメッセージにつながっていくわけですね。

 この本は、今からでもできる身近な老活、終活について書いたものです。一億総活躍といわれる世の中で、小さなことでいいので自分ができる何かをみつけて社会に貢献していく、そんな生活ができれば人生はもっと豊かになると思います。そのためには、愛されたい、助けられたいという受け身ではなく、愛する、助けるという風に自発的に行動することが大切です。身近なところでいえば、両親共働きの夫婦の子育てをサポートするのはいかがでしょうか。シニアにとっては孫の成長が生きがいになる、といいますからまさに一石二鳥ですよ。晩婚化などの影響で血縁に孫がいないという方は、ぜひ社会の子どもたちに関わってほしいですね。地域として子どもたちの見守りに参加したり、保育所や学童などで子どもたちの世話をしたり、一人で育児に悩むお母さんの子育て相談にのったり、機会はいくらでもあると思います。

最後に、坂東さんの今後の目標を教えてください。

 まず、現職である大学の教育者としては、ここで学んだ学生たちがここに来て良かった成長した、と思ってもらえるような場にしていきたいと思っています。プライベートでは、ワーキングマザーとして頑張っている2人の娘たちをサポートしていきたいですね。私自身、母の支えがあったからこそ、ここまで走り続けてこられたわけです。
だから私は母にしてもらったことを、娘たち、孫たちに返していくつもりです。

★私利私欲にとらわれず与える喜び――坂東さん自らの体験から語られたメッセージには説得力があります。第二の人生を後悔なく生きるためにも、その理想を追い続けたいものです。

坂東 眞理子さん(ばんどう・まりこ) 昭和女子大学 理事長
1946 年富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府入省。内閣府広報室参事官、埼玉県副知事、豪州ブリスベン総領事、内閣府初代男女共同参画局長を歴任。
’04年昭和女子大学女性文化研究所所長、’07年同大学学長(16年3月まで)、’14年同大学理事長兼務。’16年から現職。
’78年『婦人白書』を担当したのを機に、執筆活動にも力を入れ、主に女性をテーマにした著書を多数出版。なかでも『女性の品格』(2006年PHP出版)は300万部を超えるベストセラーを記録した。

69_interview01書籍紹介「60歳からしておきたいこと」
著者: 坂東眞理子
出版社: 世界文化社 (2014/2/6) 価格:1,512円(税込)
老活、終活をテーマとした「品格」シリーズの完結編
団塊の世代に向けた「老前整理」と「旅立ち支度」の指南書。60 歳、定年後の新しい人生を豊かに生きるためのヒントとは? 80 歳、いざという時のために準備しておくべきこととは?母親の死、延命治療の末に最期を看取った叔母のことなど、著者自身の体験を通じて書き下ろした本書には、品格ある老い方のヒントがさまざま綴られている。書き込み式のエンディングノートも収録。

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